2022年、企業が商品を調達・生産するために知っておきたい5つの消費者トレンド

Anne Preble

消費者が商品の安さや宣伝文句に左右されず自分の価値観をもとに商品を選ぶようになることは持続可能(サステナブル)な買い物をする上で重要なことだ。米調査会社グローブスキャンが隔年で発行するフェアトレードに関する消費者動向調査から2022年の消費者トレンドを読み解く。(翻訳=井上美羽)

消費者は、会計時に何らかの形で社会にポジティブな影響を与えたいと思っていることが調査により明らかになった。フェアトレードの消費者動向に関する報告書によると、回答者の半数以上が、過去1年以内に経済、社会、環境、政治問題に対して変化をもたらすために商品の選び方を変えたことがあると回答したという。調査は昨年2月から3月にかけて、欧州と北米、オセアニアの15カ国1万5418人を対象に行われた。人々は日々の買い物を社会全体に変化をもたらすための重要な手段として捉えるようになってきている。

私たちは、最近の消費者の5つの傾向をまとめた。これから紹介する5つの消費者トレンドは、2022年に各企業・ブランドがそれぞれの主張を裏付け、製品を調達し、その主張を実現するためにどのようなことを行うべきかの視座となるだろう。

①企業の本質的なサステナビリティへの取り組み

気候変動が悪化し、世界的な異常気象が頻発する中、消費者は、こうした環境問題をさらに悪化させないような商品やサービスを求めている。消費者のニーズに答えるためにも企業は、持続可能な調達や製造方法でサービスを提供する必要がある。米国の食品・飲料専門の調査会社ハートマン・グループによると、消費者の4分の1以上が、常に、または通常の買い物において、サステナビリティを基準にして商品を購入すると答えており、これは2019年から4ポイント増加している。

さらに気候変動に関する研究によると、2050年までにコーヒー、紅茶、カカオ、綿花の栽培は、深刻な気候変動の影響を受け、その被害は広がるという。これらの作物は一部の地域では生産ができなくなり、農家の収入が完全に失われるとも予測されている。今こそ、政府も企業も、気候変動に対応できるように農家を支援するための行動を起こすべき時だ。昨年、英グラスゴーで行われたCOP26(国連気候変動枠組条約第26回締約国会議)では、ベン&ジェリーズ、トニーズチョコロンリー、ネスプレッソなど28社以上がフェアトレードの「気候変動に関する行動声明(Be Fair With Your Climate Promise)」キャンペーンの一環として誓約書に署名し、気候正義を求めている180万の農家を支持する声をあげた。

②世界の労働者の人権を守るために公正な賃金を保証

世界中の多くの農家や労働者は、1日2ドル以下で生活している。2021年のグローブスキャンのアンケートによると、フェアトレード商品を積極的に選択している消費者の73%が、農家や生産者が適正な対価を受け取れるように高い金額を支払うことを望んでいるという。具体的には、フェアトレードのコーヒーでは1ポンドあたり最大35%、フェアトレードのチョコレートでは1つあたり30%多く支払うという調査結果も上がってきている。

こうした消費者の要望に応えるため、中小企業から大企業までがサプライチェーンを再検討している。例えば今年初め、独大手ディスカウントストアのアルディやユニリーバなどの企業は、2030年までに190カ国で商品やサービスを直接供給する労働者が生活賃金を受け取れるようにすることを約束した。

③食料品や日用品のオンラインショッピングの日常化

パンデミック以降、米国ではより多くの消費者がオンラインショッピングをするようになり、その傾向は2022年も続くだろう。調査・報道機関『デジタルコマース360』によると、2020年の米国のeコマース市場は32.4%成長し、総消費額は7917億ドル(約91兆円)に達した。デジタル化により、買い物客は簡単に製品を比較し、企業の調達や製造方法が自分の価値観に合っているかどうかを知ることができる。

オンライン小売業者も、アマゾンの「クライメイト・プレッジ・フレンドリー(Climate Pledge Friendly)プログラム」のように、買い物客がより簡単に商品を比較できるように認証団体と提携している。フェアトレード・インターナショナルは、アマゾンがこのプログラムを開始する際に厳選された認証の一つだ。プログラムはサステナブルな購買行動を促すという点で成功を収め続けている。

④買い物客はジェンダー平等を推進する組織や企業を求め、支援

フェアトレード商品をよく買う人は、一般的な買い物客よりも女性の問題に関心があることが、グローブスキャンの調査データで明らかになった。世界の食料の大部分は女性によって生産されているが、農業には依然として大きな「男女格差」があり、女性農家は土地、情報、資金、トレーニング、物資などの資源へのアクセスが男性農家より不利な状況にある。

女性の社会進出が後押しされ女性起業家が増えている中、買い物客は認証ラベルを確認することで、自分たちが購入する商品がジェンダー平等の促進につながるかどうかを知ることができる。例えば、フェアトレード認証団体はジェンダー平等のバランスを取り戻し、農業協同組合やコミュニティにおける女性や少女の人的、社会的、財政的、物理的資本への投資を強化するために活動している。さらに、フェアトレード基準では、協同組合の全員がプレミアム資金の使途について民主的に投票で決めることを求めており、多くの場合、コミュニティにおける女性の発言力を高めている。

⑤パーパス+ブランドの透明性=消費者ロイヤリティ

消費者は、社員や取引先を大切にするだけでなく、世界をより良くするために貢献している企業を応援したいと思っている。欧米、アジアで事業を行うコミュニケーション・エイジェンシー「ゼノ・グループ」の調査によると、消費者は、確固たるパーパスを持った企業から商品を購入する可能性が最大で6倍も高いことが分かっている。

また、IBMの動向調査によると、71%の消費者がトレーサビリティは非常に重要であり、それを提供する企業にはより多くのお金を支払ってもよいと回答している。企業は、透明性の高いサプライチェーンを真摯に展開し、人々や環境のためにどのように活動しているかを示すことが重要だ。そうすることで、新規顧客を獲得し、既存の消費者のロイヤリティを高める機会を得られるだろう。

現在、スタートアップ企業の多くがミッション型企業だが、大企業も同じように、フェアトレード・インターナショナルやその他の第三者機関と提携し、調達に信頼性とトレーサビリティを確保する必要があると感じている。こうした取り組みは、消費者ニーズに応えるためにも必要であり、消費者からの信頼獲得につながる。グローブスキャンによると、フェアトレードをよく知る消費者の 75%以上が、フェアトレード認証ラベルを見れば、その商品が倫理的かつ責任ある方法で生産されているかどうかを容易に判断できると考えているという。

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