岸田首相の「1日100万回」 3回目接種の目標うやむや気配 政府は未達成認めず 与党内「素直に認めたほうが」

 新型コロナウイルスワクチンの3回目接種で岸田文雄首相が打ち出した「1日100万回」などの目標が、うやむやにされそうな気配が漂っている。「2月中」に実現としていたものの1日も達成していない。だが、政府は「数字は後日積み上がる分もある」(官邸関係者)として未達成を認めず、1日の参院予算委員会で目標の見直しを迫られた後藤茂之厚生労働相は説明を避けた。 

 立憲民主党の小西洋之氏から「2月中に終える」としていた高齢者への3回目接種の進捗(しんちょく)を問われた後藤厚労相は「接種を希望する対象者を把握しておらず完了の有無を答えるのは難しい」と答弁。2人に1人程度にとどまっている同月実績の数字すら明かさない一方、接種を見送っている高齢者が足かせととられかねない見解を示した。

 「目標を設けない政府はない。2月が駄目だったのならいつまでに行うのか」との小西氏の追及に対しては、「ワクチン供給など政府としての体制は整っており『1日100万回』に早く到達できればいいと思う」などと「人ごと」(野党議員)のように回答。「政府は万全」との姿勢を崩さず、地域で接種を担う自治体へ責任を転嫁した。

 「政府の記録システムへの入力で前日からの増加回数が約110万回となった」。15日の予算委では岸田首相が突然、接種実数ではなく未接種関係者も加算される報告ベースの数字を持ち出した。堀内詔子ワクチン接種推進担当相らは28日、同月中の最多接種実績が約93万回にとどまっていることを報道各社からただされたが「後日積み上がる分もある」とした上で「正しい数字の判明には数週間を要する」などと異口同音に説明。視点ずらしや結論先送りで逃げ切ろうという姿勢が諸処にのぞく。

 野党は攻勢を強める。「最初2回のワクチン接種が遅かったからと岸田総理は言うが、それは菅前総理が悪いんですか? それは失礼だ。少なくともワクチン接種を菅総理は頑張った」。25日の予算委では立民の蓮舫氏がかつて「熱がなくて伝わらない」と批判した菅義偉前首相(衆院2区)を持ち上げつつ現首相を突き放した。

 28日には官邸のコロナ対策ホームページで河野太郎氏(15区)の「大臣メッセージ」動画(今月1日までに削除)が公開され続けていることを同党の田島麻衣子氏が指摘。官邸や内閣の立ち振る舞いに与党内からは「至らざるは素直に認めたほうが良い。参院選にも影響が及びかねない」(自民党幹部)との懸念が漏れ始めている。

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