コミッショナーからのメッセージ「94年のようなリスクは冒さない」

日本時間3月2日、メジャーリーグ選手会との労使交渉が決裂し、レギュラーシーズンの開幕延期と短縮が正式決定したことを受け、メジャーリーグ機構のロブ・マンフレッド・コミッショナーは野球ファンへのメッセージを公開した。そのなかで選手会のストライキによってワールドシリーズが中止された1994年シーズンに言及し、「1994年、我々は(労使協定の)合意なしにプレーし、ストライキによってワールドシリーズが中止となった。再びこのような結果を招くリスクを冒すことはできない」と記している。

マンフレッド・コミッショナーによると、メジャーリーグ機構は「労使交渉のプロセスを通じて選手会の意見に耳を傾けてきた」という。選手会の主な目標は若手選手のサラリーを上げることであり、機構側は最低保証年俸の引き上げ(昨季から13万ドル増の70万ドル)や一部の優秀な若手選手のためのボーナスプール(年間3000万ドル)を提案。これにより、メジャー全体の約3分の2の選手に33%の昇給を提供し、若手選手のサラリーは総額で年間1億ドル以上増加するはずだった。

また、サービスタイム操作やタンキングへの対策として、プロスペクトを開幕ロースター入りさせるインセンティブ制度を設けたり、ドラフト上位指名権に抽選制度を導入したり、新人王投票1位と2位の選手に1年分のサービスタイムを与えたりすることを提案していたという。他にもFA移籍に伴うドラフト指名権の補償制度の廃止やぜいたく税の上限ラインの引き上げなど、選手会の希望に応えようと最大限努力したようだ。

これらに加え、国際ドラフトの導入、ピッチクロックや守備シフト制限などの新ルールの採用なども提案したという。しかし、合意できたのはポストシーズン出場枠拡大(10球団から12球団へ)やユニバーサルDHの導入など、片手で数えられるくらいの項目だけだった。

マンフレッド・コミッショナーは機構側が最大限に譲歩し、選手会の希望に歩み寄ったことを強調しているが、それでも合意に至らなかったのは事実。機構側はキャンセルされた公式戦のサラリーを支払わない方針を明言しているが、選手会は試合の振替開催やサラリーの支払いを希望するなど、新たな火種も生まれつつある。日本時間4月8日に延期されたシーズン開幕日を無事に迎えられるかどうか、現時点では不透明な状況だ。

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