“キーマン”森敬斗が開幕絶望… DeNA「機動力アップ」の大目標はどうなる?

DeNA・森敬斗【写真:小谷真弥】

昨年のチーム盗塁数は圧倒的リーグ“ワースト”の「31」

■DeNA 9ー1 広島(オープン戦・2日・横浜)

昨季最下位からの巻き返しを期して「機動力アップ」を目指しているDeNAに、衝撃が走った。高卒3年目・20歳にしてチーム改革のキーマンと見られていた森敬斗内野手が、右ハムストリングの肉離れと左足首の捻挫を同時に起こし、2日からリハビリ組に合流。開幕戦出場が絶望的となったのだ。

昨年のDeNAは、チーム盗塁数がリーグワーストの31。最多の阪神の114はもちろん、同5位の中日の60と比べても、あまりにも少なかった。オースティン、佐野、牧、宮崎、ソトら強打者をズラリと並べた迫力満点の打線は、一方で機動力に欠け、今ひとつ有機的に得点につながりにくいことは否めなかった。

そこで今季は、OBで現役時代に盗塁王に4度輝いた石井琢朗氏を野手総合コーチに迎え、機動力アップとともに、送りバントや進塁打を絡めた“つなぐ野球”への変革を進めている。昨年2軍のイースタン・リーグで16盗塁を量産し、7月に1軍昇格した後も4盗塁をマークした森は、成功の鍵を握る期待株だった。

実際、森はこれまでの練習試合・オープン戦で1番もしくは2番を務め、6試合23打数8安打、打率.348と絶好調。遊撃のレギュラー獲得が有力視されていた。ところが、好事魔多し。2月27日の巨人とのオープン戦で、走塁中に両足を痛めたのだ。三浦大輔監督は「チームにとっても痛いケガであることは事実」と落胆を隠せない。

1試合限定で1軍に呼ばれ、二盗を決めた育成選手のDeNA・村川凪【写真:宮脇広久】

「意識が変わってきた」キーマン離脱でチャンス掴む選手も

森という大きな存在を当面失うことにはなるが、キャンプ中から徹底的に練習してきた“つなぐ野球”への移行を、反故にするわけにはいかない。2日に本拠地・横浜スタジアムで行われた広島とのオープン戦では、1番に昨年122試合で役割を果たした桑原、2番には日本ハムから移籍した大田をスタメンで起用した。

1回には1死から大田が中前打で出塁し、続く神里の右前打で一気に三塁を奪った。4番・牧の四球で満塁とした後、宮崎の先制2点タイムリー、ソトの中犠飛とたたみかけ、この回効率よく3点を先行した。三浦監督は「選手の意識が変わってきた。継続は力なり、と言われるが、キャンプから継続してきたことが、力になりつつあるのかな」と手応えを口にした。

“走れる人材”の発掘も続けている。この日は2軍から1試合限定で、育成ドラフト1位の新人で背番号103の村川を呼び寄せていた。村川の韋駄天ぶりが、仁志2軍監督を通して耳に入っていたからだ。

村川は4回、先頭の伊藤光が四球で出塁すると、代走で登場。次打者・桑原の3球目に二盗に成功した。続く大田の打席中には、三盗を狙う素振りを見せ、相手に気づかれて帰塁するシーンがあった。三浦監督は「自分が何を求められているかを理解している」と評し、「(二盗は)スタートは良くなかったが、結果的に育成のルーキーが1軍のオープン戦でスチールを記録したのは間違いない。本人の自信になると思う」と口元をほころばせた。また、途中出場したドラフト6位ルーキーの梶原も、走攻守の三拍子揃った選手で、走力を期待されているところが大きい。

この日、今年初の横浜スタジアムでの試合で、開幕カードの相手でもある広島に9-1と大勝したDeNA。三浦監督は「去年とは違うということを印象づけられたと思う」とうなずいた。故障者が出たとしても、チーム改革の歩みを止めることはない。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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