強豪ボーイズの厳しい“保護者のルール” 見学や写真撮影禁止でなぜ選手が集まる?

茨城・江戸崎ボーイズ【写真提供:江戸崎ボーイズ】

「試合や練習に来られない保護者が肩身の狭い思いをしてしまう」

茨城県の中学硬式野球チーム「江戸崎ボーイズ」は2015年に創部し、5年目の2019年に全国4強など、メキメキ力をつけ、部員も70人を超す。お茶当番なしなど、保護者の負担を無くすチーム方針を掲げる一方、試合中の声出し応援、写真撮影、平日練習の見学を禁止するなど、驚きの“保護者ルール”も設けている。なぜ保護者にも“厳しい”チームに人が集まるのか。そこには渋谷泰弘監督の徹底した平等主義と子どもたちへの愛情がある。

週4日行われるある日の平日練習のこと。江戸崎ボーイズの保護者が子どもを送ると、そのまま帰宅していく様子を目にした。そこによくある少年野球の光景はない。親が練習を見ることを禁止しているからだった。

「平日練習は来ることができる保護者が限られる。保護者によって差が出ないようにしたいと考えています。一方で、土日の練習や大会は見に来ることを許可しています。土日や大会に限定することで、子どもの成長を実感してほしいからです」

家庭の都合により、全ての選手の保護者が練習や試合に足を運べるわけではない。「試合や練習に来られない保護者が肩身の狭い思いをしてしまうんです」。練習に来る親が、必要以上に影響力を持ってしまったり、子どもに必要以上に声をかけたりすることがあるという。

あえて、練習見学を禁止することで、家族間のコミュニケーションが増えることもあるという。会話の中身についても子供たちに伝えていることがある。「うちでは『別に』も禁止しています」。親に「練習どうだった?」と聞かれた時に、内容や自分の成長を伝えるように指導しているからだ。

厳しいルールは保護者を守ることに繋がる「無理したらそれが負担になる」

写真撮影や声出し応援禁止の理由も同様だ。「子どもの写真の数や指導の差が出てしまうので」。もちろん、純粋な応援は嬉しい。一方で、保護者が言いすぎることにより、親を見てプレーする子どもが出てくる懸念がある。実際に保護者の過干渉が問題になっているチームも多い。そのため、江戸崎ボーイズではチーム広報が全員分の写真を撮影し、ホームページに公開。保護者は自由に使用することができる。

一見、厳しく感じるこれらのルールは過干渉を防ぐだけでなく、保護者自身を守ることにもなると渋谷監督は考える。親の格差や溝が生まれるほか、「せっかく休みなのに、無理して参加したらそれが負担になってしまうじゃないですか」と保護者の気持ちを汲み取る。

保護者に必要以上の干渉を求めない代わりに、責任も大きいことは理解している。「ルールを設けているので、野球も進学も成績を求めなくてはいけない」。練習以外にも地元の学習塾と連携し、雨天で練習ができない日はバスで学習塾に行く“勉強日”も設けている。

厳しい“保護者ルール”の江戸崎ボーイズに子どもを任せるのは、渋谷監督の責任と覚悟があるからだ。「自分で判断、決断出来る人間になってほしいですからね」と子どもたちの成長を柔らかな表情で見守る。(川村虎大 / Kodai Kawamura)

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