【おんなの目】 茸

 スーパーマーケットで茸の大袋を見つけた。透明の袋に茸が一杯詰まっている。その前に立ってじっと見ていたら、ふふふ、と笑いがこみ上げてきた。なんと言ったらいいのでしょうか。それぞれが好き勝手な姿態でいるのです。

気持ち良く寝転がっている“エリンギ”。白い太い胴体を投げ出してぐうぐう寝ている。噛んだら歯応えがありそう。“まいたけ”は、ダンスを踊っているのかしら。沢山の手足や指をひらひらさせている。私も思わず手を振って応えた。薄い繊細な傘をかばうように静かに寡黙にうずくまっている“ひらたけ”。哲学しているのですか? 早く袋から出してあげたい。大家族でわいわい賑やかなのが“えのき”。背の低い小さいのが子供ね。中学生くらいなのが大人に負けじと首を伸ばしている。“しいたけ”は肉厚の傘の下、短い足を踏ん張って威厳を保っている。陽気な茸たちをひと睨み。「あなた、私を食べてごらん。後悔はさせないよ」と言っている。私には一番のなじみの茸。

 もちろん、買って帰った。袋を開けると幼い頃遊んだ裏山の木々や落ち葉の匂いがした。ミッチャンやトキチャンの声も聞こえる。

 味噌汁の具に煮しめに、炒め物に、和え物に。茸の大袋は、料理下手の私の食卓を賑わせてくれた。

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