片桐仁 芸術人生20年の集大成「創作大百科展」を松田ゆう姫がレポート

TOKYO MX(地上波9ch)のアート番組「わたしの芸術劇場」(毎週土曜日 11:30~)。この番組は多摩美術大学卒で芸術家としても活躍する俳優・片桐仁が、美術館を“アートを体験できる劇場”と捉え、独自の視点から作品の楽しみ方を紹介します。12月11日(土)の放送は、特別編。ナビゲーターに松田ゆう姫さんを迎え、「片桐仁 創作大百科展」で片桐の芸術家人生を辿りました。

◆早くから芸術に目覚めた、片桐仁の少年時代

今回の舞台は、俳優、そしてアーティストとして活躍する当番組のナビゲーター・片桐が東京都文京区にある「Gallery AaMo」で行った過去最大規模の展覧会「粘土道20周年記念 片桐仁 創作大百科展」。普段は番組ナレーションを担当する松田さんが、片桐に会うべく会場へ。

入場前、松田さんは「(片桐の展覧会は)毎回大盛況だそうで私もすごく楽しみ」と期待しつつ、「ナレーションを入れているときに思うんですが、美術館を回っているときの片桐さんがすごく無邪気で、たまに子どもが走り回っているように見えるときがある。いつも楽しそうだなと思っています」と片桐の印象を語ります。

会場に着くと、いつもは伺う立場の片桐がお出迎え。そして、まずはその半生を紐解く「『俺』年表」を鑑賞。「普通のおじさんの生い立ちが書いてあるだけ(笑)」と恐縮する片桐ですが、そこには幼少期から2021年10月までの芸術人生が事細かに記されています。

小学生時代の写生会のことも網羅され、1年生で「ニワトリ」、2年生で「農作業をするおじさん」、そして3年生で描いたのは「牛」(8歳/1982年)。松田さんはその画力に「3年生とは思えない!」とビックリ。

中学生になると「ゴッホ展」の影響で油絵を習い始め、「ゴッホといえば自画像なので」と「自画像」(12歳/1986年)を制作。「恐る恐る絵具を置くという作業ですよね。頑張って油絵っぽくやっているんですけど、わけわからない(苦笑)」と当時を振り返ります。

さらには、高校3年生のときに描かれた「自画像」(18歳/1991年)も展示。これには「なんか鼻持ちならない表情ですよね」と苦笑いする片桐でしたが、なんとその作品で身につけているのは"柔道着”。その理由を「汚れてもいい服ということで、部室に柔道着があったので」と弁解していましたが、「でも、それが着物みたいでかっこいい」と松田さんには高評価。

中高生時代の片桐は、自身が行った美術展にとかく影響を受け、油絵自画像はゴッホ、騙し絵に傾倒した時期にはマウリッツ・エッシャー、「カンディンスキー展」を見に行き抽象画を描くなど、見たものをすぐに真似していたそう。「もっとちゃんと模写しておけばよかった。なんか個性を入れようとするんですよね」と笑う片桐。

◆片桐の人生に多く影響を与える"粘土”との出会い

見たものをすぐに吸収するなど、当時からハングリーな片桐がその後に出会ったのが"粘土”。多摩美術大学入学後、コントグループ"ラーメンズ”を結成し、1999年からマンガ雑誌「ヤングマガジンアッパーズ」にて片桐の"粘土道”がスタートします。

そんな粘土道のコーナーに足を踏み入れた松田さんは「すごいんですけど……なんか想像を遥かに超えてきて、ちょっと震える感じも」と恐れ入ります。約200点もの作品が並ぶそのコーナーのなかで、まず注目したのは記念すべき粘土道第一弾作品「俺ハンテープ台」(25歳/1999年)です。

口からセロハンテープが出ているこちらの作品は、実際に使用可能。ただ、22年前の作品とあってかなりボロボロで、展示にあたって右手を再造。「左手は25歳ごろ、右手は47歳の僕で、つまりおじさんの手。ただ今のほうがうまい。ちょっと手が小さくて嫌だったので大きくしたんですけど……気持ち悪いですよね(笑)」は本作の経緯を語りつつ片桐が尋ねると、松田さんは「いや、かわいいですよ」と一度は言うも「気持ち悪いんだけど……やっぱりかわいくないか(笑)」と前言撤回。これには片桐も苦笑い。

続いては「お、俺を踏み台に…!?」(29歳/2003年)。これは片桐の顔に乗って測る体重計で「平気でこれに乗る人はどんな人だろう」と思いながら作ったとか。

しかも、平らなところがなく乗り心地も最悪。思わず「これは朝乗りたくないですね(笑)」と呟く松田さんが、気になったのはその質感。石さながらの見事な仕上がりで、それは色の塗りと表面をざらざらの質感にすることで実現したそう。

そして、片桐が20年に渡って作り続けている携帯電話ケースシリーズへ。その処女作は「俺虫」(26歳/2000年)。そもそもなぜ作り始めたかといえば、携帯をよく失くしていたからで「もう少し大きくしてくれないかなと思い、自分で粘土を盛りだした」と片桐は言います。

その後も「オウサマクワガタオレデンワ」(28歳/2001年)、「マー・ライ・オ・レ」(30歳/2003年)と携帯を機種変更するたびに作品を制作。いずれも片桐が実際に使用していたそうで、2010年になると携帯もiPhoneに。その第一作となったのが「サイフォン」(37歳/2010年)。そして「鯛Phone5」、「カレイPhone Plus」などダジャレから着想を得た作品が続きます。

一方、松田さんが「これいいですね! 最高じゃないですか」とベタ褒めしていたのが、1万円札を立てる「マンサツタテガニ」(40歳/2014年)。これは1万円札を入れると福沢諭吉の顔にヒゲとメガネが加わり、さらに中央にライトを当てると透かしがよく見えるようになるというもの。これには「こんなに素敵に一万円札を見たのは初めてかも」、「ロマンティック、ロマンがある!」と松田さんは大喜び。

さらに、太陽の塔が大好きという松田さんのお眼鏡に叶っていたのは「マヨの塔」(41歳/2015年)。これは、本家・太陽の塔をテーマにした企画展「みんなの太陽の塔展」に出品したもので、大阪といえば「マヨネーズ文化」、そこから着想を得て、太陽の塔のプックリとした感じを出すべくマヨネーズに直接粘土を盛って作ったそうです。

◆アーティスト片桐仁、その最新作はかつてない大作に

最後は大作のコーナー。そこにめしますは「公園魔」(47歳/2021年)。これは片桐の地元、埼玉県南埼玉郡宮代町にある姫宮南団地のタコ公園がモチーフとなったもので、テーマは地獄。

滑り台に発砲スチロールをベースに粘土を貼り込んだもので、一目見た松田さんは「すごい!」と感動。相当量の粘土を用い、その制作日数は19日間。当初頭を作るのに約1週間かかり、このペースでは無理だと後輩や友人、家族も総動員。たくさんの人に手伝ってもらって完成したそう。

そんな大作にあたって片桐は「粘土の楽しさを伝えたい」と言います。「泥んこ遊びじゃないけど、ぐちゃぐちゃになっているものがこういうものになる、僕にもできるんじゃないかと思ってもらいたい」とその制作理由を明かし、「(粘土は)自由なんですよ。油絵具も自由で軽快」と粘土の魅力を力説。

ちなみに、この「公園魔」は階段を登ると観光地などにある顔はめパネルのように記念写真を撮影するのに最適で、なおかつそこで上を見上げるとそこは地獄のような世界観に。

また、裏面は手伝ってくれた方々が作ったたくさんの顔が。ここで松田さんも特別に作品に参加すべく顔作りに挑戦。粘土を触ると「マシュマロみたいで気持ちいい」、「大人になるとこういう時間はアーティストじゃない限りないので、癒される……」とうっとり。

「片桐仁 創作大百科展」を満喫した松田さんは「本当に楽しかった。片桐さんの奇妙でファンタジックな世界観に引き込まれました」と満面の笑み。さらには「作品を見るごとに片桐さんの魅力が伝わってきて、とても素晴らしい展覧会。やっぱり、粘土に出会ったことで片桐さんの人生もどんどん変わっていって、より豊かなものになっていったんだろうなっていうのを感じ取れてすごく楽しかったです」と感想を述べます。

そして、「幼少期から常に変化を恐れずに挑戦している片桐さん、その行動力が素晴らしい!」と称賛しつつ、松田さんは唯一無二の片桐ワールドに拍手を贈っていました。

◆今日のアンコールは、片桐仁44歳の力作

「片桐仁 創作大百科展」のなかで、今回のストーリーに入らなかったものからどうしても見てもらいたい作品を紹介する「今日のアンコール」。松田さんが選んだのは、片桐が44歳のときの作品「JOMON(縄文)フィアット500X」(2019年)です。

これは自動車メーカーとコラボして生まれた作品で、実際に現在も片桐が乗っている愛車。「これを普通に運転されているのがすごい」と松田さんは驚きつつ、「これを見たらラッキーな日になりそう。ただ、ドクロと土偶、乗っているとこの派手さに気づかないから乗れるかもしれないけど、降りた瞬間に"えっ!”って思う」と本音も。

最後は片桐こだわりのミュージアムショップへ。たくさんのアイテムがあるなかで、松田さんの琴線に触れたのは「ラフスケッチTシャツ」(S~XL/3,500円)。「かわいいですね!」と興味を示し、さらにはパンクドランカーズというキャラクターとコラボした「Jin Katagiri×PUNK DRUNKERS靴下」(2,200円)も。その他に粘土をはじめさまざまなアイテムが販売されており、松田さんもとても楽しんでいました。

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<番組概要>
番組名:わたしの芸術劇場
放送日時:毎週土曜 11:30~11:55<TOKYO MX1>、毎週日曜 8:00~8:25<TOKYO MX2>
「エムキャス」でも同時配信
出演者:片桐仁
番組Webサイト:https://s.mxtv.jp/variety/geijutsu_gekijou/

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