レッドブル&フェルスタッペンとの戦いに備え、ハミルトンの後任に悩むメルセデスF1。ライバルたちは次々と人材引き止め

 レッドブル・レーシングがマックス・フェルスタッペンと2028年末までの契約を結んだことを3月3日に発表した。『De Telegraaf』など、いくつかのメディアによると、この契約によってフェルスタッペンが受け取る年額はF1史上最大級のものになるということだ。2021年に激しくタイトルを争うなかで、フェルスタッペンとルイス・ハミルトンの間にクラッシュが起きたこともあり、メルセデスのチーム代表トト・ウォルフとフェルスタッペン家との関係は決定的に悪化した。そして今回の契約発表により、フェルスタッペンが将来メルセデスに移籍する可能性が、限りなく低いことが明確になった。

2022年F1バルセロナテスト1日目 マックス・フェルスタッペン(レッドブル)

 7度のワールドチャンピオンであるハミルトンは、現在メルセデスと結んでいる2023年末までの契約を終えた時点でF1から引退する可能性が高く、その後、メルセデスはジョージ・ラッセルがハミルトンの後を継いで、レッドブルとフェルスタッペンを相手にタイトル争いをしてくれることを期待している。だがラッセルのチームメイトとして誰を起用するかが問題になってくる。メルセデスが優秀なドライバーを確保したがっていることを知っているライバルチームは、現在擁しているドライバーたちの囲い込みを急いでいる。

 レッドブルがフェルスタッペンとの長期契約を結ぶ前、2月9日にはマクラーレンはランド・ノリスとの契約を2025年末まで延長したことを発表。フェラーリは、シャルル・ルクレールと2024年末までの契約を結んでおり、カルロス・サインツとの現契約を2、3年延長することは間違いない。

2022年F1バルセロナテスト1日目 ランド・ノリス(マクラーレン)
2022年F1バルセロナテスト1日目 シャルル・ルクレールとカルロス・サインツ(フェラーリ)

 ハミルトンが抜けた後の後任候補の選択肢は非常に少ない。過去数年間、メルセデスは若手ドライバーの育成でいい結果を出せておらず、現時点でF1参戦を検討できる存在は、ニック・デ・フリースぐらいだ。デ・フリースは、2019年にFIA-F2選手権でタイトルを獲得したものの、F1シートをつかめず、2020-21年シーズンのフォーミュラEに参戦、チャンピオンとなり、翌シーズンもメルセデスから参戦している。20歳のフレデリック・ベスティは2021年にFIA-F3でランキング4位、今年、F2に昇格する段階で、F1ドライバーにふさわしいポテンシャルを持っているのかどうか、まだ定かでない。

2021年F1アブダビテスト ニック・デ・フリース(メルセデス)

 メルセデスとしては、状況によっては将来、ダニエル・リカルドに目を向けるかもしれない。マクラーレンとダニエル・リカルドとの契約は今シーズン末に切れる。リカルドは2021年にノリスほどのパフォーマンスを見せることができず、チームが残留させるかどうかは今年の活躍にかかってくる。メルセデスにとっては、ラッセルが絶対的なナンバーワンドライバーとしての力を持っていることを証明した場合には、将来、信頼できるナンバー2として、リカルドを選択肢に入れる可能性がある。

2022年F1バルセロナテスト2日目 ダニエル・リカルド(マクラーレン)

 ウォルフがピエール・ガスリーやアレクサンダー・アルボンの獲得には踏み切るとは考えにくい。ふたりはレッドブル時代にフェルスタッペンに全くかなわなかったからだ。一方では意外なところで、フェルナンド・アロンソがウォルフ代表の視野に入ってくるかもしれない。もしもアロンソが42歳を超えてもF1で走る気力とパフォーマンスを維持しているなら、彼をラッセルのチームメイトとして迎えるのは悪くないアイデアだ。しかしメルセデスがアロンソ獲得を真剣に検討するとすれば、それはドライバーマーケットにおいてウォルフ代表の手持ちのカードがいかに弱いかの証明となる。

2022年F1バルセロナテスト3日目 フェルナンド・アロンソ(アルピーヌ)

 ジュニアドライバーに関して今最も優れたラインアップを持つのはアルピーヌだろう。アルピーヌF1のリザーブドライバーを務めるオスカー・ピアストリは、2019年にフォーミュラ・ルノー・ユーロカップ、2020年にF3、2021年にF2でタイトルを獲得した逸材だ。アルピーヌの傘下には、ピアストリに加えて、元レッドブル・ジュニアのジャック・ドゥーハン、一貫性は欠けるもののポテンシャルが高いと思われるビクター・マーティンズもいる。

2022年F1バルセロナテスト2日目 オスカー・ピアストリ(アルピーヌ)

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