福島「伝承館」 長崎・広島祈念館館長と対談 震災の記録や継承「根気強く」

震災や被爆の記憶継承について、オンラインで対談する高比良館長(右)=長崎市平野町、国立長崎原爆死没者追悼平和祈念館

 福島県の「東日本大震災・原子力災害伝承館」と、被爆地の長崎・広島両市の「原爆死没者追悼平和祈念館」の館長3人が5日、記憶や教訓の「継承」をテーマにオンラインで対談した。両祈念館は原爆の実相を長年伝え続けてきた経験を踏まえ、個人が所有する資料の掘り起こしや、デジタル化の重要性を提言。伝承館の高村昇館長は「記録や継承は重要なミッション。根気強く続けたい」と述べた。
 東日本大震災と東京電力福島第1原発事故の発生から11年を前に、伝承館が主催したメモリアルイベントの一環。伝承館は2020年9月、原発事故で被災した福島県双葉町に開館した。巨大地震や津波、原子力による世界初の複合災害について、被災状況や教訓、復興の過程などを記録し発信している。
 長崎大原爆後障害医療研究所教授でもある高村館長と、長崎の祈念館の高比良則安館長、広島の久保雅之館長の3人が、1時間半にわたり意見交換した。震災から11年がたち、被災地の小中学生には当時の記憶がほぼない。高村館長は「若い世代への継承が重要なテーマ」として、20代など若い世代の語り部育成や、震災の体験を演劇で伝える活動などを紹介した。
 伝承館は今後、被災者の体験記作成を本格化させる考え。久保館長はこれまで被爆体験を収集してきた中での教訓として「データベース化や証言のデータ分析などのためにも、初めからデジタルで記録することが大事」と話した。高比良館長は「これから新たな証言を集めることも大切だが、被災直後から日記などを書いている人がいれば、それらもリアルな体験として集めた方がいい」と助言した。高村館長は「広島、長崎からの『宿題』に向き合っていきたい」と応じた。


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