日本人の「国民食」といわれるラーメン。
外食へ出かけるとき、ラーメンが候補になりませんか?
子供がいたら、なおさらラーメンを食べたいとお願いされることもあるかもしれません。
倉敷美観地区の周辺にも、ラーメン店はいくつかあります。
そのなかでも個性的なのが「月のうつわ 鶴形店」。
月のうつわの「中華そば」は、食材にとことんこだわっています。
妥協のない中華そばは、何度食べてもおいしいと感じる味です。
そして、何か懐かしさのような感じもします。
月のうつわは、昔のラーメン店に感じられた”手づくり感”を大事にしているからです。
そんなこだわりの詰まった中華そばが食べられるラーメン店、月のうつわを紹介します。
月のうつわは食材にこだわった手づくりの味を追求するラーメン店
月のうつわは、倉敷駅前の商店街から路地に入ったところにあるラーメン店です。
食材にこだわり、手づくりならではの良さを感じられる「中華そば」を追求しています。
月のうつわのラーメンは、どれも見た目が美しいのが印象的。
さらに、食材のおいしさを感じられるラーメンなんです。
内装や装飾は「ジャパニーズ・モダン」をテーマにしているそう。
好みで中華そばに入れれば、ピリッとして味わいが変わります。
なお、月のうつわは、2013年(平成25年)に、倉敷駅北部の日ノ出町でオープンしました。
その後2018年(平成30年)に、現在地の「鶴形店」として移転しています。
月のうつわのおすすめメニュー・人気メニュー
月のうつわの店主に、お店のおすすめメニューや、お客さんから人気のあるメニューを紹介してもらいました。
2022年(令和4年)3月現在の情報。価格は消費税込
「尾道背脂そば」はプリプリの背脂が食べごたえあり!
取材時は「尾道背脂そば」(税込890円)を食べました。
尾道背脂そばは、月のうつわで三番目に人気があるメニューです。
男性客やラーメン通などから、人気が高いそう。
▼尾道背脂そばは、尾道ラーメン風の中華そばです。
ナルトが入っているのは、昔ながらの中華そばのような印象を持ちました。
▼醤油味のスープに、尾道ラーメンの象徴である豚の背脂をたくさん浮かべています。
▼最上ランクの背脂だから、大きさも味も食感も違います。
大きめで、プリプリとした弾力のある食感が最高です!
口の中でとろけるような、やわらかな背脂が多いなか、月のうつわの背脂は「肉感」があって、豚肉の甘み・うまみが感じられてとてもおいしいと思いました。
▼背脂に混じり、刻みタマネギが入っていました。
これは、かなりめずらしいと思います。
私は、タマネギ入りの尾道ラーメンは初体験です。
プリプリとした背脂に混じり、タマネギのシャキシャキとした食感がアクセントになっています。
▼スープの色は濃いめなんですが、サッパリとした印象。
甘めの味わいとコクがあって、ついゴクゴクと飲み続けてしまいます。
▼麺は中細のストレートで、適度なコシがありました。
製麺所に特注しているこだわりの麺です。
▼大きなチャーシューが2枚入っていて、見るからにおいしそう。
チャーシューもこだわっていて、特上の豚バラ肉を使った自家製です。
赤身はホロホロとし、脂身はトロトロで、食べごたえがありました。
▼純国産鶏の卵を使った味玉。
とろけるような黄身は、コクがあっておいしいです。
▼注目は、この山のような形に盛り付けられた青ネギ。
このネギ、切り方が独特なんです。
飾り切りのような、おしゃれな切り方。
シャキシャキとした食感がいい感じです。
ネギの切り方は、広島風つけ麺がヒントになっているそう。
なお、月のうつわのほかの中華そばのネギも、同じネギが盛り付けられています。
私は備後地方に長く住んでいて、尾道系のラーメンは食べ慣れていますが、尾道背脂そばはかなりおいしいと感じました!
背脂、タマネギも最高です!
「黄金そば」は鶏油の風味を生かしたラーメンで一番人気!
「黄金そば」(税込890円)は、月のうつわで一番人気のメニューです。
黄金そばのポイントは、鶏油(チーユ)。
醤油スープがベースで、醤油の味わいに鶏油が加わることにより鶏の脂のうまみが広がり、味にコクと深みが生まれます。
私は、以前に月のうつわを訪れたときに、黄金そばを食べました。
懐かしさを感じるような、やさしく深い味わいのスープだと感じ、おいしかったです
「塩そば」「洒落そば」はアッサリした味わいで人気
「塩そば」(税込850円)は、二番目に人気のあるメニュー。
塩風味のスープならではの、アッサリした味わいが楽しめます。
透明感のあるきれいなスープも印象的。
▼好みで、卓上の花椒(かしょう)を入れれば、味がキリッと引き立ちます。
また、ほかにも塩系の中華そばとして「洒落(しゃれ)そば」(税込890円)があります。
▼洒落そばは、塩そばをベースにコクとうま味を加えたもの。
塩そば・洒落そばは、女性から年配のかたまで、幅広いお客さんに支持されています。
「激辛そば」は四川風の旨辛味で女性に人気
「激辛そば」(税込980円)は、尾道背脂そばと並んで三番目に人気があります。
醤油スープをベースに、ラー油・粗挽きのトウガラシをタップリ入れて、四川(しせん)風に仕上げています。
辛さは五段階。
中辛・大辛・激辛・超激辛・超々激辛の中から選べます。
アジアをはじめとする海外からのお客さんからも人気が高く、特に香港のかたから好評だそう。
「つけ麺」は事前予約必須の裏メニュー
月のうつわには「つけ麺」もあります。
つけ麺を食べたいときは、必ず事前に電話して予約をしてください。
準備が必要なため、予約なしでは食べられません。
つけ麺は、通常のつけ麺と広島風のつけ麺の2種類があります。
予約時に好みのタイプを伝えてください。
通常のつけ麺は甘めの味わいのつけ汁。
広島風つけ麺は激辛味のつけ汁です。
月のうつわのサイドメニュー
月のうつわは、サイドメニューも強いこだわりが感じられます。
特におすすめのメニューを紹介しましょう!
2022年(令和4年)3月現在の情報。価格は消費税込
「究極たまごかけ御飯」は笠岡采女ファームの「もみじたまご」がポイント!
「究極たまごかけ御飯」(税込300円)は、店主イチオシのサイドメニューです。
たまごかけ御飯の鶏卵は、岡山県笠岡市にある采女(うねめ)ファームの「もみじ卵」のみを使用しています。
岡山県西部では、采女ファームの卵はとても評判がいいんです。
純国産のニワトリの卵で、黄身はとても濃厚な味わい。
さらに米は「あきたこまち」です。
また、たまごかけ御飯のタレはこだわりの自家製。
なお中華そばに入っている卵も、同じ采女ファームのもみじ卵です。
「賄い丼」は日ノ出町時代からの人気サイドメニュー
「賄い丼(まかないどん)」(税込390円)は、サイドメニューで一番人気です。
ごはんの上に味玉・メンマ・ナルトを乗せ、さらに細切れのチャーシューを乗せたものです。
そして、特製のタレをかけています。
中華そばだけではちょっと物足りない、というときにおすすめです。
「焼き餃子」は国産材料を使用した名物メニュー
月のうつわには、ラーメン店のサイドメニューの定番「焼き餃子(ギョウザ)」(税込300円)もあります。
焼き餃子も、日ノ出町の店の時代からの人気メニューだそう。
中華そばと並ぶ名物メニューです。
「パーフェクト黒ラベル」は特製チューニングのサーバーを使用
「パーフェクト黒ラベル」(税込500円)は、月のうつわ自慢のビールです。
なんと、サーバーが月のうつわ用に特別のチューニングをされているそう。
だからビールの味わいが全然違うんです。
一度飲んで、やみつきになるお客さんもいるそうです。
「ゴロゴロレモンサワー」はレモンたっぷりで中身のみのお替わりも可
さわやかな風味で飲みやすいのが魅力のレモンサワー。
月のうつわでは「ゴロゴロレモンサワー」(税込500円)という名前です。
ゴロゴロレモンサワーも店主イチオシのドリンク。
▼名前のとおり、グラスの中にはたくさんのレモンが入っていました。
ゴロゴロレモンサワーの酒だけのお替わりは、税込300円です。
月のうつわのメニュー一覧
月のうつわのメニューを紹介します。
貸し切りの宴会も可能で、宴会メニューもあり
月のうつわでは、通常メニューのほかに宴会メニューもあります。
新型コロナウイルス感染症対策のため、現在は休止中
宴会は8人から可能で、必ず前日までに予約をしてください。
宴会メニューの内容は、時季や仕入状況などにより変わります。
気になる場合は、予約時にお店に聞いてみましょう。
魅力的なこだわりの中華そばや、サイドメニューがそろった月のうつわ。
そんな月のうつわの店主に、話を聞いてみました。
月のうつわの店主へインタビュー
こだわりの詰まった中華そばや、おいしいサイドメニュー、印象的な店内など魅力がいっぱいの月のうつわ。
そんな月のうつわの店主にインタビューをし、開業の経緯や店名の由来、店や食品へのこだわり、今後の展望などを聞きました。
インタビューは2020年2月の初回取材時に行った内容を掲載しています。
趣味だった「理想のラーメン作り」が評判になって店を開くことに
──店を開いた経緯は?
店主──
実は、ラーメンどころか飲食店で働いた経験はいっさいないんですよ。
前は飲食店とは関係ない業界で、会社員として働いていました。
私は幼少期に福岡市に住んでいたことがあります。
福岡でラーメンを食べるとしたら、ほぼ豚骨ラーメンでした。
大きくなって岡山県に来て、醤油スープのラーメンに感動したんですよ。
気付いたら、いろいろ醤油味のラーメンを食べ歩くようになって、好みのラーメン店を探すようになりました。
しだいに自分の理想とする味を追求するようになってきて、ついには自宅で自分でラーメンをつくるようになってしまったんです!
自分の追い求める味を再現するラーメン研究ですね。
つくったラーメンは、友人を招いて食べてもらっていました。
それが好評で、みなさんにおいしいといってもらえまして…。
そのうち「ラーメン屋さんやったらいいんじゃない?」と言われるようになりました。
だんだん私もやる気になってきて、気付いたら脱サラしてラーメン屋を始めていたんです(笑)。
オープンは、2013年(平成25年)。
最初は倉敷駅の北側の住宅地のなかで、民家を利用してやっていました。
その後、知人の紹介で2018年(平成30年)に現在の鶴形に移転したんです。
昔ながらの手作り感ある「中華そば」を守っていきたい
──なぜ自宅で理想のラーメン研究をするようになった?
店主──
自分の理想のラーメンづくりに没頭するようになったのは、だんだん昔ながらのラーメン店の良さがなくなってきているように感じたから。
ラーメン店を食べ歩いてみて、昔ながらの個人店が減ってきて、ラーメン店が「企業化」していっている気がしたんです。
ラーメンの「手づくり感」が減っていって、業務用商品のような感覚がしたんですよね。
ちなみに福岡で過ごした私のなかでは、ラーメン=豚骨味なので、醤油味のラーメンは「中華そば」と呼んだほうがピンときます。
素材やつくり方に妥協せず味を一番に考えた、手づくり感のある「中華そば」を食べたいと考えるようになって、だったら自分でつくっちゃおうということが始まりでした。
素材にはとことんこだわる
──お店の「中華そば」でこだわっていることは?
店主──
自分の理想を追求した中華そばだから、素材に妥協はしたくありません。
天然の食材を使って手づくりの中華そばをつくるのがコンセプトです。
業務用商品は使っていません!
たとえば、ダシに使う鶏は岡山県産親鶏(老鶏)の丸鶏を使います。
ネギは、京都産の九条ネギです。
チャーシューは自家製で、特上の豚バラ肉を使っています。
卵は地元・岡山県(笠岡市)の采女ファームの「もみじ卵」。
純国産鶏が産んだ卵で、とても評価が高いものです。
また、豚の背脂にはランクがあるのですが、一番いいランクのものを手に入れています。
そして醤油味の中華そばで大切な醤油は、千葉県の宮醤油がつくるこだわりの醤油なんですよ。
ただ、たいへんなのはさまざまな事情で食材の価格が変わったり、入手のしやすさが変わったりすること。
自分の趣味で中華そばをつくっていたときと、お店で中華そばをつくっているときの一番大きな違いを感じました。
お客さんにおいしさを届けるために少しずつ変化を
──ほかに工夫やこだわりは?
店主──
「少しずつ変化すること」は意識しています。
お客さんにおいしさを届けるためには、ずっと同じだったらだめだなと思いますね。
新しいものを取り入れたり、工夫をして試行錯誤したりするのが大事なんですよ。
だからメニューも少しずつ変わっています。
以前は、和食も出していたこともありしました。
あと、当店の中華そばに盛り付けられているネギも変化していますね。
開店当初は、普通の輪切りにした刻みネギでした。
今、月のうつわに盛り付けているネギは、広島風つけ麺をヒントにしたネギの切り方なんです。
私は、あるとき激辛の広島風つけ麺が好きになって、広島風つけ麺ばかり食べ歩いていた時期があります。
そのとき、広島風つけ麺に盛り付けられていたネギを食べて「これを月のうつわでもやってみよう」と思い、取り入れたんですよ。
ちなみに、夏の裏メニューに広島風つけ麺があるのも、私が広島風つけ麺が好きだからですね(笑)。
月のうつわは女性でも一人で気軽に立ち寄れるラーメン店
──月のうつわの強みや特徴は?
店主──
当店は、女性でも気軽に立ち寄れることが強みだと思います。
日本人はラーメンが大好きですよね。
それは、女性だって同じ。
でも、ラーメン店って女性ひとりでフラッと入って、気軽にラーメンを食べやすい店って少ないと思っています。
当店は、こだわりを持ってラーメンをつくっています。
ですから、老若男女なるべく多くのかたに食べてもらいたいんです。
当店の雰囲気も女性に親しみやすいですし、メニューや盛り付けなどもそう。
ラーメンの味も、女性に人気の塩味や激辛のものもそろっているのも、ポイントですね。
ラーメン好きな女性は、ぜひ一度来店してみてほしいと思います。
店名の由来は思い出の喫茶店の名
──店名がユニークだが、由来は?
店主──
「月のうつわ」という店名は、福岡にあった喫茶店の名前からいただいています。
幼少期に福岡に住んでいたと話しましたが、家の近くにあった喫茶店でした。
そこのマスターがすごく個性的で、とても印象に残っています。
ルックスもインパクトある風貌で、キャラクターもおもしろかったですね。
和製サミー・デイビス・ジュニア(米国の歌手)みたいな感じで(笑)。
それでいて、つくる料理がおしかったんですよ。
店内もおしゃれで、ジャズのレコードがたくさん並んでいて、ジャズがずっと流れている店でした。
喫茶「月のうつわ」は、私が食に興味を持ち始めたきっかけの店なんです。
だから、お店を始めるときにそこの喫茶店の名前をいただいたんです。
もちろん、マスターの許可は得ていますよ(笑)。
私が小さいころ、マスターに「自分も将来飲食店をやりたい」と話したことがあって、マスターも、そのときに「月のうつわの名前を使ってもいいよ」と会話をしたこともありましたね。
ただ残念ながら、もうお店は閉めてしまいました。
廃業の話を聞いて、私も福岡まで駆けつけたんです。
そしたら、ジャズのレコードの一部を譲っていただきました。
今、うちの店で流れるジャズは、そのとき譲っていただいたものがほとんどですよ。
店内の雰囲気は「ジャパニーズ・モダン」がテーマ
──店内の雰囲気は独特だが、きっかけは?
店主──
実は、最初は家にあるものばかりだったんです。
日ノ出町の店は民家を店としていました。
だから、少しでも個性を出そうと考えたんです。
そこで家に眠っていたものをいろいろ飾ってみました。
評判がいいものを残していった結果が、今のような店内。
甲冑のインパクトがあるといわれますが、これは「普通は飲食店にこんなもの置かないだろう」と思うでしょうが、あえて裏をかいて置いてみました。
音楽は、さきほどの喫茶店のジャズを流していました。
その結果、店内のテーマを「ジャパニーズ・モダン」とすることを思いついたんです。
これは鶴形に移っても継承しています。
海外からの観光客も多い土地なんで、結果としてジャパニーズ・モダンの店内は、海外のかたでも興味が持ちやすくて良かったんじゃないかな。
地元のラーメン店同士で助け合いたい
──今後の目標ややってみたいことは?
店主──
お店を始めてから、同じラーメン店を中心に、お店の店主さんと知り合うことが多くなりました。
そこで、いろいろな相談を受けてアドバイスをしたり、逆に私が相談してもらったりすることもあります。
個人でもお店をやっていると、たいへんなことや困ったことがたくさんあるんです。
そんなときに、お店同士が互いに助け合えるような繋がりがあればいいなと思うようになりました。
もともと、個人店の良さを残していきたいと思ったことが、月のうつわを始めたきっかけ。
だから困ったことがあれば、お店同士で協力し合えればいいなぁと思います。
おわりに
月のうつわは個性的な店内も印象的ですが、中華そばへのこだわりと情熱も印象的です。
店主の中華そばにかけるこだわりは、まるで研究者のよう。
そして、手づくり感を大事にした中華そばを食べると、どこか懐かしいような味わいを感じました。
月のうつわの中華そばは、何度も食べたくなるような中華そばだと思います。
ぜひ、一度月のうつわの中華そばを味わってみてください。