強烈な下落相場で投資家が考えるべきこと

世界的に株価の下落傾向が継続しています。日経平均は約1年4か月ぶりに2万4,000円を割りました。一方で、原油先物価格は一時1バレル=130ドルを超え、リーマンショック直前の2008年7月以来の高値を記録しました。株安、商品市況の高騰、未だ収束しないコロナ禍、そしてロシア・ウクライナ問題。多くの投資家が損失を膨らませたと思いますが、このような局面では何を考えればいいのでしょうか?


ネガティブシナリオが次々と現実へ

今年の1月に「投資家が知るべき2022年のリスク要因、世界や日本で起こりうるシナリオを想定すべし」という記事を書きました。そのなかで、まず1つ目に「世界的なインフレ」を挙げました。日本国内の消費者物価指数は昨年4月に行われた携帯電話の通信料の引き下げの影響もあり、まだそれほど高い数値は出ていませんが、みなさんの生活実感では毎日のように値上げのニュースを目にしているのではないでしょうか?海外に目を向けてみると、米国の1月の消費者物価は前年同月比+7.5%と約40年ぶりの高い水準を記録しました。

そして、もう1つのネガティブシナリオとして北京五輪後に中国が台湾へ、ロシアがウクライナへ軍事侵攻する可能性について言及しました。幸い、前者については起こっていませんが、後者については現実のものとなってしまいました。投資家として常にネガティブシナリオを考えて頭に入れておくべきなのですが、こういう予想が当たるのは嬉しくないものです。

そして、この現実化してしまった2つのネガティブシナリオは、非常に相性のいいもので、両者が負のスパイラルを作り出します。ロシアへ経済制裁をすることで、ロシアも対抗策を打ち出す。そして、戦火が広がることで物理的にパイプラインや農場が破壊され、原油価格や小麦・海産物の価格、そして貴金属の価格までもが上昇します。

なぜ、ここまで株価指数は下落するのか?

それでは、なぜ世界的にここまで株価指数が下落するのでしょうか。エネルギーから農水産物まで幅広く価格が上昇することで、企業はコスト増により利益率が低下します。しかし、コストが上昇したからと言って、ボランティア団体ではなく営利目的の株式会社である以上は利益を捻出しなくてはいけません。そうなると、削れるのは設備投資と人件費になります。

設備投資を削ると、企業の期待成長率は落ちていきます。そして、人件費が削られると、国民の購買意欲が削がれ、将来不安から貯蓄をするようになりますから、結果的に企業は売り上げが減って、こちらもまた負のスパイラルに突入することになります。

また、ロシア・ウクライナ問題の結末がどうなるか、非常に不透明であることも株式市場にはマイナスに働いています。さきほど、投資家は常にネガティブシナリオをいくつも考えて頭に入れておくべきと書きましたが、本件はどのような結末になってもネガティブシナリオにしかならないのです。アフガニスタンのように泥沼化して戦争が長期間つづくシナリオ。ウクライナが全面降伏すれば戦争は終わるかもしれませんが、それは軍事侵攻を国際社会が認めることになってしまう。

とはいえ、過度に経済制裁で追い込んだ結果、核攻撃という展開もあるわけです。さすがに、そのようなことは起こらないと思う人もいるかもしれませんが、ロシアの軍事侵攻はない、またはウクライナ東部の一部地域で軍事衝突が起こるぐらいと多くの専門家が言っていたことを思い返せば、起こりそうもないことが起こるのが現実社会だと考えるべきでしょう。

いまこそ基礎に立ち返ろう

この混迷を極める現状において、多くの投資初心者から相談を受けます。いちばん多いのが「積立投資を解約したほうがいいのか」というものです。株価が下落局面に入ると必ず受ける相談で、その都度、記事や講演で筆者の考え方を伝えていますが、実はこの連載でも新型コロナウイルスの感染拡大第一波の際に「株価下落にどう対応すればいい?投資家は焦らず基本へ立ち返ろう」という記事を書いていました。当時も株価指数が大きく下げ続けていたのです。いわゆるコロナショックと後に名付けられた期間ですね。

数ある投資法のなかで、積立投資のメリットは相場の変動を気にせずに淡々と続けられることなので、相場が下がったから売却する、という機動的な動きをしてしまうと、なぜ積立投資をしていたのか、と思ってしまいます。そういう投資家は株価指数が上昇傾向のときは安心していますが、上昇傾向ということは買い付け単価の平均は上がり続け、下落に弱い状態になるわけです。逆に下落局面でも淡々と積み立てるからこそ、買い付け単価の平均が下がり、上昇局面になると利益が出やすくなるのです。こういう局面だからこそ、値動きに一喜一憂しないことが重要なのです。

個別銘柄への投資は面白い

投資未経験者、投資初心者の人には積立投資をおすすめしていますが、今年に入ってから銘柄選択さえ上手くいけば個別銘柄への投資は面白いなと改めて感じています。たまたま昨年の終わりにファンドマネージャーや個人投資家の知人と2022年の注目する銘柄などを話し合っていた時に気になった銘柄をずっと監視しているのですが、これだけ株価指数が下落しても、ほとんど株価が下がっていないどころか、株価は上昇しているのです。

多くの銘柄がエネルギー価格の上昇がネガティブに働かない、またはポジティブな材料となるからという理由もあるのですが、それ以外のネット産業などに属する銘柄でも同様です。

インデックス投資は手軽ではありますが、インデックスを構成する銘柄全てに分散投資をしますから、そこがメリットになるときもあれば、デメリットにもなっていることは理解しておきたいものです。

せっかく投資の世界に足を踏み入れたのですから、投資に割ける時間がある人は、企業分析や業界分析にリソースを割いて、投資資金の一部を個別銘柄へ投資して機動的な取引にも挑戦してみてもいいかもしれません。

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