オーナー満場一致で承認 5年間有効の新労使協定の主な内容は?

日本時間3月11日、メジャーリーグ機構とメジャーリーグ選手会による労使交渉が合意に達し、30球団のオーナーが満場一致でこれを承認したことにより、2022年から2026年まで5年間有効の新しい労使協定が正式に締結された。各球団の選手は日本時間3月14日にキャンプ地へ集合し、同18日からオープン戦がスタート。そして、日本時間4月8日にレギュラーシーズン開幕(162試合制)を迎える。なお、延期されていたルール5ドラフトのメジャー部門は中止されることが決定したようだ(マイナー部門は昨年12月に開催)。

当初の予定から1週間遅れでスタートすることになった2022年のレギュラーシーズン。日本時間10月3日に閉幕予定だったが、これを3日間延長し、ダブルヘッダーも活用しながら各球団が162試合を消化していく。なお、ダブルヘッダーの7イニング制は廃止されて9イニング制が復活し、延長戦を無死二塁からスタートするタイブレーク制も廃止される。ポストシーズン出場枠は12球団に拡大され、ユニバーサルDH(両リーグ指名打者制)が導入されることも決まった。

現地メディアの報道によると、ワクチン未接種の選手はカナダ(要するにブルージェイズの本拠地ロジャース・センター)でプレーできず、ワクチン未接種が原因でカナダでの試合を欠場した場合、その試合分のサラリーとサービスタイムは与えられないという。また、2023年シーズンからはレギュラーシーズンの対戦カードにバランス調整が加えられ、同地区内での対戦を減らし、別リーグを含む全球団(要するに他の29球団)との対戦が組まれることが決まったようだ。

メジャーリーグ公式サイトのマーク・フェインサンド記者によると、今回の労使協定の主な内容は以下の通り。

◆最低保証年俸
2022年:70万ドル
2023年:72万ドル
2024年:74万ドル
2025年:76万ドル
2026年:78万ドル

◆ぜいたく税の上限ライン
2022年:2億3000万ドル
2023年:2億3300万ドル
2024年:2億3700万ドル
2025年:2億4100万ドル
2026年:2億4400万ドル

※ペナルティを科すラインとして上記の基準額、2番目の基準額(上記+2000万ドル)、3番目の基準額(上記+4000万ドル)に次ぐ4番目の基準額(上記+6000万ドル)が新たに設定された。基準額を超えるたびにペナルティが重くなっていくが、一部ではメッツのスティーブ・コーエン・オーナーの暴走を抑制するために4番目の基準額が新設されたと言われている。

◆調停前ボーナスプール(新設)

総額5000万ドルをアウォード投票の結果や個人成績に基づいて上位100名の選手に分配する。分配基準についてはメジャーリーグ機構とメジャーリーグ選手会が協力して決定。この制度を昨季に当てはめると、たとえばサイ・ヤング賞を受賞したコービン・バーンズ(ブリュワーズ)のサラリーは60万8000ドルから420万ドルに大幅アップし、新人王のランディ・アロザレーナ(レイズ)とジョナサン・インディア(レッズ)のサラリーも3倍以上に跳ね上がるはずだった。

◆ドラフト上位指名権の抽選制度

全体1位から6位までの指名権を抽選で決定。ポストシーズンに出場しなかった18球団が対象となり、抽選オッズは勝率の逆順に設定される(勝率ワースト3球団の当選確率は16.5%)。ただし、収益分配金を受け取る側の球団(簡潔に言えばスモールマーケット球団)は3年連続で抽選に参加することはできず、収益分配金を支払う側の球団(簡潔に言えばビッグマーケット球団)は2年連続で抽選に参加することはできない。

◆国際ドラフト

今年7月25日(現地時間)までにメジャーリーグ選手会が国際ドラフトの導入に賛成した場合、それと引き換えにクオリファイング・オファー制度を撤廃する。国際ドラフトは20巡目まで指名が行われ、毎年600人以上が指名される。指名を受けた選手には契約金が保証され、契約金の総額は年間2000万ドル以上増加する見込み。野球発展途上国(過去3年の指名割合が0.5%未満の国)から選手を指名した球団は追加の指名権を与えられる。

◆ルール変更

2023年から現役選手4名、メジャーリーグ機構によって任命される6名、審判員1名による委員会が設立され、ピッチクロック導入、ベースサイズ拡大、守備シフト制限、ストライク判定の自動化といったルール変更の採択を担う。この委員会はメジャーリーグ選手会にルール変更を通達してから45日以内に実施する権限を持つ。

◆その他

新人王投票で1位または2位にランクインした新人選手には1年分のサービスタイムが与えられる。また、トップ・プロスペクトを開幕ロースターに登録した球団は、その選手が新人王投票のトップ3、もしくはMVP投票かサイ・ヤング賞投票のトップ5にランクインすれば、ドラフト指名権を獲得できる。

ポストシーズンは12球団で行われ、地区優勝した球団のうち、各リーグの勝率上位2球団はポストシーズンの第1ラウンドを免除され、第2ラウンド(地区シリーズ)からの出場となる。さらに、ユニバーサルDHが導入され、1人の選手を1シーズンにマイナーへオプション(降格)できる回数は最大5回までに制限されることが決まった。

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