プーチン大統領なら「核」を使う可能性はある!|和田政宗 ロシア軍は首都キエフから15km地点まで進軍した。キエフ制圧をはじめとする総攻撃において、戦術核兵器を使用する危険性が指摘されている。「ロシアもさすがに核使用まではしないだろう」というのは、甘い見通しだ。必要であれば躊躇なく戦術核を使用するという考えをプーチン大統領は持っている――。

「人道回廊」の罠と首都キエフ総攻撃

ロシアによるウクライナ侵略が激しさを増してきている。ロシアは、都市の全面的制圧の前に市民を避難させる「人道回廊」を設置したが、ウクライナのゼレンスキー大統領は、「南東部のマリウポリに設置された人道回廊をロシア軍が攻撃した」と非難した。

過去、シリア内戦においてはアサド政権軍やロシア軍により、反体制派が拠点としていたシリア北部の都市アレッポで「人道回廊」が設置されたが、ルートの先は政権側であるため逃げられなかった人も多く、その後アレッポは総攻撃され、5万人を超える犠牲者が出て都市は滅茶苦茶に破壊された。

結局、「人道回廊」の設置は、都市総攻撃の前に「民間人を逃がす努力はした」というロシアの言い訳のために設置されているに過ぎない。首都キエフ総攻撃が迫っていると危惧される。

ロシア軍は首都キエフから15km地点まで進軍した。ロシア軍は頑強なウクライナ軍の戦いに焦りが出ており、キエフ制圧をはじめとする総攻撃において、戦術核兵器を使用する危険性が指摘されている。

ロシアのプーチン大統領は侵略を始めた2月24日に、戦術核の使用を示唆する発言を行った。また、過去のクリミア侵略の際に「核兵器の使用も準備した」と語っており、必要であれば躊躇なく戦術核を使用するという考えをプーチン大統領は持っている。

しかし、このような核攻撃は全く許容できないのは世界にとって当たり前のことだ。

第三次世界大戦と自由主義陣営の戦略

もしロシアがウクライナに核攻撃を行なえば、第三次世界大戦の危機となり、米国、NATOをはじめとする諸国は岐路に立たされる。核攻撃に対し、米国やNATOが行動しなければロシアは核兵器を再使用する可能性があり、状況はさらに悪化する。

一方、ロシアの核攻撃に対し、「一線を越え許容できない」と、米国やNATOがウクライナへ部隊を派遣しての軍事支援を行なえば、ロシアとの全面戦争に発展する恐れがある。いずれにせよロシアが核攻撃を行なえば、第三次世界大戦となる危険性が極めて高いのである。

危機はすぐそこに迫っており、「ロシアもさすがに核使用まではしないだろう」というのは、私は甘い見通しだと考える。なぜなら、ザポリージャ原発では原子炉から470mの地点が攻撃された。

史上初の原発への攻撃であり、その距離を見れば原子炉に当たっても構わないという攻撃だった。ウクライナ制圧のためであればどんな手段も辞さないというのがこれまでのロシアの行動である。

これに対し各国は、ロシアに対する制裁を強めてきた。ロシアを国際的な金融システムである「SWIFT」から排除するとともに、プーチン大統領など関係者の資産凍結などを行っている。日本も同様の制裁措置を取ってきた。

経済においてロシアを締め上げ、侵略をやめさせようというのが、自由主義陣営の戦略である。

これによってロシア経済は大打撃を受けている。ロシア株式市場は2月25日から現在まで取引停止となっており、ロシア・ルーブルは暴落している。また、主たる欧米系企業がロシアへの輸出停止を行い、現地での事業縮小、一時停止等を決定した。5日には、マスターカード、ビザカードがロシア国内での決済事業の停止について発表した。

ロシアの情報統制と北欧諸国のNATO加盟

これに対しロシアでは、政府による完全な情報統制が行われ、国民の動揺を封じ込めようとしている。国内メディアに対しては、政府の公式情報に基づいて軍事作戦関連の報道を行うよう義務付けられた。

独立系テレビ局「ドーシチ」はウェブサイトへのアクセス制限が導入され、編集長が出国し、業務を一時停止した。また、政府に批判的な見解も報じるラジオ局「モスクワのこだま」は放送が遮断され、解散が決定された。

さらに、ロシア国民へ公式情報の提供を行うためのポータルサイトの立ち上げが行われ、軍事行動に対し政府の公式発表と異なる情報を「フェイク情報」とし、最大15年までの自由剝奪刑が課すことができるよう刑法典の改正も行われるなど、言論統制に関する法律も発効した。

ロシア国内における主な海外メディアやSNSについては、BBCロシア、CNN等がロシア国内での活動を休止し、NHKのテレビ国際放送はロシアにおいて放送できなくなった。FacebookやTwitterに対するアクセス制限措置も導入された。

このようにロシアが完全な戦時体制となり、ウクライナ侵略を続けるなか、諸国は自国の安全保障を根本的に見直す動きを速めている。北欧諸国においてはNATO加盟の機運が高まっており、フィンランド、スウェーデンではNATO加盟支持が最近の世論調査で初の過半数超えとなった。

フィンランドにおいては、大統領、首相、外務大臣がNATO加盟への可能性について言及し、スウェーデンの首相は、「安全保障情勢が劇的に変化しており、NATO加盟について各政党との話し合いを繰り返し行っている」と発言した。

先の大戦以後、我が国最大の危機

一方、日本はどうか。

2日に根室沖でロシア機が領空侵犯するなど緊張は高まっている。しっかりと我が国を守り抜くという姿勢をロシアに見せなくてはならない。オホーツク海など北方における自衛隊の活動を強化し、訓練や演習などを行って、攻めてくるのであれば断固として国を守るため戦い抜くという姿勢を見せることがロシアの侵略の抑止になる。

第三次世界大戦という最悪の事態を想定して、我が国は行動していかなくてはならない。先の大戦以後、最大の危機が我が国に訪れようとしている。

最悪の事態を抑止するための決断がいま、求められているところである。政治家が後手後手の判断を行ったり、判断を誤ったりすれば、国土と国民の命が失われる危険性がある。

憲法改正、防衛力の向上、外交力の駆使など、すぐに着手しなければならないことを即決し実行すべきだ。危機はすぐそこに迫っている。政府与党は一丸となり政治家として身を賭して国と国民を守らなければならない。

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和田政宗

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