慶応高野球部・七條義夫さん、3月末で顧問退任 春夏6度甲子園出場、明治神宮大会優勝「20年でいい区切り」

3月で野球部の職を退く慶応の七條副部長=慶応高

 高校野球の強豪、慶応の部長として長く硬式野球部に携わってきた七條義夫さん(61)が今月末で顧問教諭を退任する。選手経験はないものの、2002年から上田誠、森林貴彦両監督を支え、春夏6度の甲子園出場、明治神宮大会の優勝を後押しした。教育の一環として部活動を重んじ、選手と接してきた七條さんは「20年でいい区切り」と後進にバトンを渡すことを決めた。

◆忘れ得ぬセンバツ

 北海道出身でサッカー少年だったという七條さんは慶大卒業後、慶応高に外国語科教員として着任。バドミントン部の顧問などを務めた。ロンドン大大学院に留学中、上田前監督から「野球部を手伝ってほしい」と頼まれ、帰国後に部長職を引き受けた。

 45年ぶりの甲子園切符をつかんだ05年の選抜大会は、今も脳裏に刻まれている。全国から集結したOBらとの応援体制の整備や報道対応などに奔走。アルプス席は大応援団で揺れ、「甲子園が同窓会場のようだった。勝利してOBの喜ぶ姿が見られてうれしかった」と述懐する。

 野球部員は毎年100人超の大所帯。自身もユーモアを交えた話術でコミュニケーションを図り、雰囲気づくりを大切にしてきた。中でも野球部OBの学生コーチには「自分の時間をチームにささげてくれている。一人一人に声を掛けてくれるから部員たちも頑張れる」と感謝する。

◆部活動は「もう一つの教室」

 授業の重要性とともに、部活動の大切さも痛感させられた。「授業では生きる力や感じる力、分かり合う力を身に付けるのは難しい。だから部活動はもう一つの教室だと思う」と説明する。

 新型コロナウイルス禍の2年間、全国的に活動が制限されている現状にもどかしさを感じている。「人生は挑戦と勉強。もう一つの教室の扉を閉めてしまうのは生徒たちのさまざまなチャンスをふさいでしまっているのではないか」との思いがある。

 日本一を目指す慶応ナインに「野球を通して学び、挑戦することを実践してほしい」とエールを送る七條さん。今後も全国の舞台で「エンジョイ・ベースボール」旋風を起こすことを願っている。

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