第37回「ショスタコーヴィチ 交響曲第7番ハ長調作品60《レニングラード 改め キーウ》③」

先の世界大戦、ドイツが独ソ不可侵条約を破棄、ソ連に侵攻を開始したバルバロッサ作戦において真っ先に狙われたのが、共産主義ソ連のシンボルともいうべきレーニンの名を冠したレニングラードであった。 その独ソ戦におけるレニングラード包囲戦において100万人強が死亡、そのほとんどが餓死だったという。プーチンの出身地でもある現サンクトペテルブルグ、レニングラードの900日に及ぶ包囲戦。

その包囲戦のさなかに市内の真っ只中で作曲された「交響曲7」番。ショスタコーヴィチにより「わたしは自分の第7交響曲をわれわれのファシズムに対する戦いと我々の宿命的勝利、そしてわが故郷レニングラードに捧げる」と表明されたことから通称「レニングラード」と呼ばれるショスタコービチの交響曲で一番演奏時間の長い楽曲である。 そして一時期、西側からはソ連共産主義のプロパガンダな楽曲と言われたりもしたが、この場合のファシズムとは単にナチを指すだけではなくソヴィエトの全体主義への批判も含まれているとのこと。 「この作品はスターリンによって破壊され、ヒトラーによってとどめを刺されたレニングラードを意味する」(ショスタコーヴィチの証言)。

終楽章の希望を呼び覚ますようなコーダからこれ以上ないくらいに壮大なエンディング。 現実の戦争と向き合ったショスタコーヴィチの戦争交響曲、包囲を耐え抜いたレニングラード、そしていま21世紀となり、ロシアにおけるウクライナはキエフ包囲戦が繰り広げられる。

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