往年の“タイプ2”がEVで復活へ。フォルクスワーゲン、市販目前最終形態の『ID.バズ』を世界初公開

 ヨーロッパ初の電動バスおよびトランスポーターでもあり、往年の“ワーゲンバス”こと『タイプ2』の復刻とも言える電動モデル、フォルクスワーゲンの新型『ID.Buzz(ID.バズ)』が世界初公開。限りなく市販化バージョンに近づいた、電気の時代における新たなアイコンモデルが姿を現した。

 コンセプトモデル公開を経て、改めて今回のワールドプレミアを迎えたID.バズは、商用車ブランドで展開する計画の『ID.バズ・カーゴ』を含め、すべてのID.ファミリーと同様、技術的にはグループのモジュラー・エレクトリック・ドライブキット(MEB)を採用する。

 世界初となるこの電気自動車向けの大量生産プラットフォームは、あらゆる種類の異なるモデルとセグメントに基盤を提供し、将来的にソフトウェアとテクノロジーをさらに進化させることが可能に。両車とも、本拠地のドイツ・ハノーバーにあるフォルクスワーゲン商用車ブランドの工場で生産される。

 LEDヘッドライトの間にV字型のフロントパネルを備えた象徴的なフロントマスクを持ち、オプションのツートンカラーの色分けのラインにもなる姿は、1950年代のアイコンでもある『T1(初代タイプ2)』を彷彿とさせ、そのプロポーションは「オリジナルの“T1”から直接インスピレーションを得た」もの。

 フロントアクスルの上に直接ドライバーが着座する位置関係だった初代とは異なり、このID.バズでは短いオーバーハングが設定されている。

 一方、非常にクリアなレイアウトで、EVらしく考え抜かれたスペース効率を誇るインテリアは、5人の乗員と荷物(容量:1121リッター)のための充分なスペースを創出。2列目シートを折りたたむと、最大積載量は2205リッターに増加する。

 また、本国でその系譜を受け継ぐ最新の『T6』と同等の2988mmという長いホイールベースを誇りつつ、車両の全長は4712mmとされ、全長に比べてホイールベースが非常に長いため、車両の寸法を最大限に活用することも可能に。全幅は1985mmとしながら、最小回転半径を抑えて小回り性能も確保されている。

商用車ブランドで展開する計画の『ID.バズ・カーゴ』を含め、グループのモジュラー・エレクトリック・ドライブキット(MEB)を採用する
フロントアクスルの上に直接ドライバーが着座する位置関係だった初代とは異なり、この『ID.バズ』では短いオーバーハングが設定されている

■軽量な電気駆動システムにより優れた重量配分と低い重心を実現

 注目のパワートレインは、77kWhのバッテリー容量から150kWの電気モーターに電力を供給。かつての『T1』と同様に後輪を駆動する。これらシステムはサンドイッチ構造のフロアに統合され、軽量な電気駆動システムにより優れた重量配分と低い重心を実現。どちらの要素もハンドリングと俊敏性の向上に寄与する。

 リチウムイオンバッテリーは11kWの交流(AC)電流を使用し、直流(DC)急速充電ステーションのCCSプラグコネクターを使用すると、最大170kWの出力で充電することが可能に。この場合、約30分でバッテリーを5%から80%まで充電することができる。

 また、最新の“ID.ソフトウェア”を利用すれば、将来的には『プラグ&チャージ』機能も使用可能となり、互換性のあるDC急速充電ステーションの充電コネクターを接続するだけで車両が自動的に認証される(欧州参考)。

 電動モビリティとして技術的ハイライトのひとつになるそのID.ソフトウェアでは、ほかの車両や輸送インフラからの信号を利用して危険をリアルタイムで特定する『Car2X』地域警告システムが標準で搭載され、現行ラインアップで採用される最新のADAS(安全運転支援機能)も網羅。

 オプションとなる“スウォーム(群知能)データを活用したトラベル・アシスト”では、すべての速度範囲で部分的な自動運転が実現し、初めて高速道路での車線変更をアシストできるようになるとともに、以前に保存したルートで自動駐車を行うためのメモリー機能も追加された。

 このID.バズとID.バズ・カーゴは、今秋からヨーロッパの数カ国で販売が開始され、同地ではこの5月から先行予約を開始。新時代の“マイクロバス”日本導入は、追ってアナウンスされる見込みだ。

EVらしく考え抜かれたスペース効率を誇るインテリアは、5人の乗員と荷物(容量:1121リッター)のための充分なスペースを創出
2列目シートを折りたたむと、最大積載量は2205リッターに増加する

フォルクスワーゲン カスタマーセンター:0120-993-199

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