今季もマイナーで新ルール実験 守備シフト制限、ロボット審判など

さらなる試合時間短縮と選手の安全性向上を目指し、今季もマイナーリーグで新ルールの実験が行われることになった。ピッチクロック、ベースサイズ拡大、守備シフト制限、ロボット審判といった試みについて、過去数年間の実験のなかで有望な結果が得られたため、メジャーリーグ機構は試験運用の範囲を拡大することを決定。ピッチクロックとベースサイズ拡大はフルシーズンのマイナー全リーグ、守備シフト制限はAA級、A+級、A級、ロボット審判はAAA級とA級サウスイーストで採用される。

ピッチクロックは2015年から様々な形式でマイナーリーグでの実験が行われていたが、今季はフルシーズンの全リーグで採用される。投手は無走者の場合は14秒以内、走者がいる場合は18秒以内(AAA級のみ19秒以内)に投球することを求められる。また、打者1人につき、牽制球を投げる、もしくはプレートから足を外す回数は2回までに制限され、超過した場合はボークとなる。2021年にはA級ウエストでピッチクロックが採用され、平均試合時間が20分以上短縮されたという。

一塁・二塁・三塁のベースサイズ拡大は昨季AAA級とアリゾナ秋季リーグで採用され、「ベース付近での故障の程度が軽減された」との報告が出ている。今季はフルシーズンの全リーグで従来の15インチ四方から18インチ四方に拡大したベースが使用される(ホームベースのサイズは変わらない)。ベースサイズ拡大で塁間が狭くなるため、盗塁やセーフティバントの増加といった効果も期待される。また、滑りにくい素材が採用されるため、安全性の向上も期待できる。

守備シフト制限は昨季AA級で試験運用され、内野手は「内野」と定義された範囲内で守ることを求められた。今季はAA級、A+級、A級で守備シフト制限が採用されるが、「投球時に少なくとも4人が内野を守り、二塁ベースの両側に最低2人ずつ配置する」という制限が設けられる。違反時の投球は自動的にボール判定となるが、打者が打って好結果が出た場合は、攻撃側のチームはそちらを選ぶこともできる。守備シフト制限は「インプレー時の打率を上げること」と「打球の伝統的な美学と結果を回復すること」を目的としている。

ロボット審判は昨季A級サウスイーストのみで採用されたが、今季は改良を加えてAAA級でも採用される。これはホークアイの追跡技術を使用してロボットが判定したストライク/ボールを球審がコールするというもので、今季AAA級ではこの形式が採用される。一方、A級サウスイーストでは「チャレンジ制度」を採用。試合では通常通りに球審がストライク/ボールを判定するが、両チームにチャレンジ権が3つ与えられ、投手・捕手・打者がチャレンジ権を行使できる。チャレンジ権が行使された場合に機械判定を使用するというやり方だ。過度な自動化への懸念を緩和するためのやり方として考案され、チャレンジ成功の場合、そのチャレンジ権は消費されない。

メジャーリーグ機構のコンサルタントを務めるセオ・エプスタインは「今季採用されるルールは、選手やスタッフ、審判、ファンからのフィードバックと、昨季の実験結果の分析をもとに改良されたものであると考えている。これらのルールによって、より多くのアクションが生み出されることを期待する」とコメント。先日締結された新しい労使協定では、2023年から現役選手4名、メジャーリーグ機構が指名する6名、審判員1名から成る委員会が新ルール導入の権限を持つことになっており、今季マイナーリーグで望ましい結果が得られれば、早ければ2023年シーズンからメジャーでも新ルールが導入されることになりそうだ。

© MLB Advanced Media, LP.