「都道府県版ジェンダー・ギャップ指数」で見えてきたこと(2)政治 女性増には選挙制度改革も、「複数区」で多く当選

 3月8日の国際女性デーに合わせ、上智大の三浦まり教授らでつくる「地域からジェンダー平等研究会」が試算し、公表した「都道府県版ジェンダー・ギャップ指数」。世界各国の男女間格差を測る“本家”のジェンダー・ギャップ指数と同様の手法で統計処理したもので、「政治」「行政」「教育」「経済」という四つの分野ごとに、各都道府県での格差の現状を可視化した。政治分野の分析から詳しく見えてきたものとは。(共同通信=中西彩由美、木下リラ)

(都道府県版ジェンダー・ギャップ指数のサイトはこちら)

 https://digital.kyodonews.jp/gender2022/

 ▽都市圏の複数区は女性議員の比率が高い

 

 政治分野は、1位の東京でも0・292と低く、平等を示す「1」からは程遠い結果となった。国会議員や地方議員の男女比などに基づく六つの指標を比べると、上位の大半を首都圏と関西圏が占めている。都道府県議に女性が多い地域では、定数2以上の選挙区で女性が当選した比率が高い。有権者の意識に加え、選挙制度の在り方も課題と言えそうだ。

 昨年8月時点で女性の都道府県議の割合が高かった上位5都府県(東京、京都、神奈川、滋賀、兵庫)の計93人のうち、88人が複数区からの当選だ。61人が東京23区や県庁所在地、政令指定都市から選出されていた。

 女性が5%以下だった香川、広島、大分、熊本、山梨の5県でも、計10人中7人は県庁所在地の複数区選出だった。一方、大都市圏でも大阪府は6・9%で36位と低い。人口が集中する大阪市内の多くが1人区となっているのが一因とみられる。

 ▽地方議員に女性が多い滋賀は元知事の政治塾からも輩出

 駒沢大の大山礼子教授(政治制度論)は「統計上、1人区では女性は立候補しにくく、当選率も低くなる傾向が明らかだ」と指摘。女性議員を増やすには、候補者の一定比率を女性にする「クオータ制」の導入のほか、選挙制度の抜本改革も必要だと訴える。「選挙制度は民主政治の基盤だ。国民が関心を持ち、女性や若者の参加を推進するにはどうしたら良いかを議論すべきだ」と話す。

 女性の政治進出を支える鍵は、地域の取り組みにもある。都道府県議で4位の滋賀では、2006~14年に知事を務めた嘉田由紀子氏(現参院議員)が政治塾を開催。女性や若者らが政治に関心を持てるようにする狙いだった。県議会には塾出身の女性議員を輩出している。滋賀は女性の市区町村議の割合でも全国10位に入った。

 全国2位の京都府議会は、議会規則で欠席を認める理由に出産と育児、介護を明記。傍聴者向けだった託児サービスを、議員も利用できるようにした。

 女性議員の全国平均は都道府県議会が11・6%。市区議会は16・8%、町村議会は11・3%で、都市部の方が比較的高い傾向がうかがえる。

 ▽休憩時間が短い市議会、初の女性議員は走った

 19年の統一地方選では、鹿児島県垂水市議選で1958年の市制施行以来、初の女性議員が誕生したことが話題になった。

 

取材に応じる鹿児島県垂水市議の池田みすずさん=2月、鹿児島県垂水市

 鹿児島県の中でも、垂水市を含む大隅地方は特に男尊女卑の色が濃いと言われてきた地域だ。当選した池田みすずさん(48)は「女性を強調して取り上げられることに、最初は抵抗があった」と振り返った。多様な意見を政治に反映させるためには「女性を男性と対等な立場に引き上げるサポートが必要だ」と語る。

 垂水市議会は、長らく男性市議だけで運営してきたためか休憩時間が短く、女子トイレまで毎度、議場から走った。生理中は議事再開に合うか、ぎりぎりだったこともある。「せめて10分間の休憩を」と要望し、改善された。

 池田さんの当選直後、市議会は全市議を対象に、男女共同参画と女性活躍をテーマにした研修を1度だけ行った。「何か劇的な変化があったわけではないが、啓発しなければ何も変わらない。他の市町村と合同でもいいので、研修を増やす価値はある」と提唱する。

 ▽育児・介護「周りと一緒に」の感覚を

 

 政治分野の男女共同参画推進法は、セクハラやマタニティーハラスメント(妊娠・出産を巡る嫌がらせ)の防止策を国や自治体に求める条文を21年6月の改正で新設。ただ、政党に女性候補者数の目標を公表させる規定は見送られ、同年10月の衆院選で女性候補者は17・7%と低迷した。

 池田さんは、女性の立候補の足かせとなるのは育児・介護の負担や、育休・産休を取ることへの「後ろめたさ」だと考える。「周りが一緒に子育てをしている感覚を持てるかどうかが本当に大切だ」。最近は女性から立候補の相談を受けることもあり「私の存在で敷居が下がったならうれしい」と歓迎している。

 世界経済フォーラムが昨年公表したジェンダー・ギャップ指数で、日本は政治分野で156カ国中147位と最低クラスだった。今夏には参院選が行われる。女性候補を増やすと公言する政党は多いが、実際にどこまで実現できるかが問われている。

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