<社説>メッシュ活動休止 体制整備へ議論喚起を

 離島医療を支援するNPO法人メッシュ・サポートの小型飛行機が伊江島空港で墜落した。事故を受けてメッシュは搬送事業を自粛している。 メッシュは本島北部地域などの医療搬送事業の一翼を担ってきた。活動休止で住民生活に影響が出ないよう、行政の連携で対応する必要がある。多様なニーズに民間や北部圏域が応じてきた側面もある。体制整備に向けた議論の喚起を求めたい。

 パイロット訓練生と監督官の2人が亡くなった。乗員不足の中、4月からの勤務に向け訓練中だった。離島医療に貢献したいという2人の使命感と志に敬意を表するとともに、お悔やみを申し上げたい。

 県のドクターヘリが沖縄本島と周辺離島を活動範囲としているのに対して、メッシュは奄美諸島から与那国島までとより広域な範囲をカバーしてきた。北部広域市町村圏事務組合の北部地域救急・救助ヘリ(やんばるレスキューヘリ)事業も受託し、本島北部地域を中心に運用している。

 急患搬送だけでなく、専門医や代診のための医師の移動も担うなど、離島医療を下支えしてきた。

 メッシュの活動休止で、医療機関側からは早くも影響の大きさを懸念する声が上がっている。県のドクターヘリ事業の対象ではない、手術後の患者の島への搬送なども受け持ってきたからだ。点滴が外せなかったり、ベッドから起き上がれなかったりすると、民間機は利用できないこともあり、こうしたケースに対応してきた。

 いわば、離島やへき地の患者らの細かいニーズに応じてきた。こうした対応がなくなれば、離島などの住民にとっては切実な問題だ。

 県は県ドクターヘリや自衛隊、海上保安庁の急患搬送によって直ちに大きな影響が出ることはないとみている。実際に、事故後に発生した伊江島での急患2件については県ドクターヘリと急患搬送船「みらい」で対応した。今後も細かな連携が必要となる。

 ただ、緊急度の高いケースが重なった場合、これまでメッシュが担ってきたサービスを離島住民らが受けられなくなることはないだろうか。急患が同時多発した場合はどうか。想定を怠らずに対策してもらいたい。

 玉城デニー知事は県政運営方針の冒頭で、米軍基地問題に加えて離島の条件不利性について重要性を増す課題として挙げた。「離島・過疎地域における安全・安心の確保」の施策展開にも言及した。離島やへき地に安心して住み続けられるために医療搬送の問題は避けては通れない。

 海洋島しょ県特有の問題だ。今後の県からの予算措置を含め、急患搬送の在り方をどのようなものにするのか検討すべきだ。知事は「離島の振興なくして沖縄の振興なし」とも述べた。民間や圏域任せではなく、県の主体的な対応が必要だ。

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