<社説>ウクライナ避難民 人道支援に全力尽くせ

 ウクライナを侵略したロシア軍は、市街地への「無差別」攻撃を強め、市民を巻き添えにしている。国際移住機関(IOM)は15日、ウクライナからの避難民が300万人を超えたと発表した。 欧州連合(EU)は、ウクライナからの避難民を例外なく受け入れる政策を打ち出した。日本政府は、国際社会と足並みをそろえて積極的に難民を受け入れ、人道支援に全力を挙げてもらいたい。

 駐米ウクライナ大使は、ロシア軍が殺傷能力の高い燃料気化爆弾を使用したと非難した。国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウオッチ(HRW)はこれまでに、ロシア軍が非人道的な兵器として知られるクラスター(集束)弾を使用したと発表している。事実であれば、人道上許されない犯罪である。

 ロシア軍は住宅地を爆撃し病院や学校が被害に遭っている。9日には産科小児科病院の中庭に砲弾を撃ち込み、子どもを含む20人が死傷した。

 地上戦を経験した県民にとって「世界が見守る中、国が壊滅状態になっている」(国連事務総長)事態はまったく受け入れられない。

 EUは避難民らに対し、域内での当面2年間の滞在許可を与えるなど「一時保護措置」の実施を決定した。避難民らは域内のどの国に住むことも可能で、教育や医療を受ける権利が保障されるほか、就労の権利もある。

 日本政府は15日、避難民の受け入れについて、現行の「短期滞在」(90日)の在留資格から就労が可能な「特定活動」(1年)への変更を認める方針を明らかにした。玉城デニー知事も、県営住宅の確保や食糧など生活物資の提供などの人道支援策を発表した。

 だが、出入国在留管理庁によると、日本が13日までに受け入れた避難民は47人にすぎない。昨年12月時点で日本に住んでいるウクライナ人は約2千人。知人や家族を頼って日本に来る避難民は限られているようだ。

 受け入れが限定的になるのなら、避難民への幅広い民生支援を実施してもらいたい。

 国連の推定によると、ウクライナから周辺国へ逃れる難民は400万人、ウクライナ国内の1200万人に救済と保護が必要になる。支援を必要とする人は人口の4割に当たる1600万人に達する。

 国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は17億ドルの支援が必要になるという見通しを示している。岸田文雄首相は1億ドル(約115億円)の緊急人道支援を表明。政府は2021年度の予備費から87億5880万円の支出を閣議決定した。増額が必要になれば躊躇(ちゅうちょ)してはならない。

 「地球上、最悪の人道危機」(ウクライナ外相)をただちに止めなければならない。ロシアの侵略は、第2次世界大戦後の安全保障の根幹である国連憲章の否定である。国際社会は結束して国際秩序を回復させなければならない。

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