携帯で知った優勝「自分自身が不甲斐なかった」 戦力外のドラ1右腕が再び目指すNPB

新潟アルビレックスに入団した元オリックス・吉田一将【写真提供:NIIGATA ALBIREX BC】

元オリックス・吉田一将、優勝争い真っ只中で訪れた戦力外通告

前オリックスの吉田一将投手が、NPB復帰を目指し独立リーグ・ルートインBCリーグの新潟アルビレックスBCに入団した。昨季は1軍登板がないままチームは25年ぶりのリーグ優勝。マウンドに立てなかった自身の不甲斐なさ、葛藤を抱えながらも気持ちは現役続行一本に絞った。

非情通告は突然訪れた。2021年10月上旬、普段と変わらず舞洲のグラウンドに足を踏み入れようとした瞬間に球団関係者に呼び止められた。「福良GMから話があるので部屋に来てくれ」。練習着のまま向かうと「来季の契約は結ばない」。2013年のドラフト1位右腕に待っていたのは戦力外通告だった。

不調や首の寝違えなどもあり本来の投球ができない日々が続く中でも、なんとか戦力になるために必死だった。思った以上に時間がかかり、勢いのある若手が次々に1軍に上がっていく。その状況を間近で感じ取っていただけに「覚悟している部分もあった。(戦力外を)言われて来たかという感じ。でも、前見てやるしかない。その気持ちが強かった」。

チームは優勝争い真っ只中。そして10月27日に2位のロッテが楽天に敗れオリックスの優勝が決まった。京セラドームで試合の行方を見守っていたナインがマウンドに飛び出し、中嶋監督が胴上げされる。トライアウトに向け練習を続けていた吉田は携帯で、その歓喜の瞬間を知った。

「悔しいというか、何ともいえない感じで……。やっぱり自分自身が不甲斐なかった」

新潟アルビレックスに入団した元オリックス・吉田一将【写真提供:NIIGATA ALBIREX BC】

社会人野球からの誘いも「40歳、50歳になって後悔はしたくない」

強い決意で挑んだ12月のトライアウトでは打者3人を無安打1四球に抑えたがNPBから声はかからず。今年1月は大学、社会人の先輩でもある西武・十亀から誘いを受け若手らと一緒に自主トレを行った。「モチベーションも上がった。一緒にトレーニング、ピッチングして刺激になった」と、NPB復帰への思いはさらに強くなった。

戦力外となってからは社会人野球などから誘いもあった。将来的なことを考えると職が確約された企業に務めるのが“得策”ともいえるが「一度、社会人にいくともう(NPBに)戻れない。40歳、50歳になって後悔はしたくない。体も気持ちも元気ですし、幸い燃え尽きたことはなかった。モヤっとしたまま、社会人野球にいっても会社に迷惑がかかる」と、NPB復帰を最優先に考えた決断だった。

もちろん、独立リーグからNPBに復帰することが簡単ではないことも分かっている。トレード期限は7月末。シーズンが始まってからの3か月で圧倒的な結果が求められる。

「一つの区切りとして、NPBを目指すというのはこの1年。ストレートが戻れば、しっかりとしたパフォーマンスは見せられる。そこだけですね」

通算226試合に登板し18勝20敗55ホールド2セーブ、防御率3.74と実績は十分。不完全燃焼に終わった去年の悔しさを独立リーグの舞台で見せつけ、再びNPBのマウンドに戻ってくる。(橋本健吾 / Kengo Hashimoto)

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