SDGsの今

 20年ほど前の一首という。〈服あふれ靴あふれ籠(かご)にパンあふれ足るを知らざる国となり果つ〉富小路(とみのこうじ)禎子(よしこ)。物があふれ返り、何でも、いくらでも食べられる「飽食の時代」と日本で言われ始めて、ずいぶんたつ▲物にあふれて飽くことがなく、満足を求めれば切りがない。そういう〈足るを知らざる〉だが、言葉は同じでも別の意味になる場合がある。生活苦で満たされることがない、という〈足るを知らざる〉。今の世の中、その意味合いも強い▲「貧困をなくそう」「働きがいも経済成長も」…。2030年の達成を目指して、国連が17のゴールを設けた「持続可能な開発目標(SDGs)」は、ごつごつとした険しい道に思える▲長崎新聞社は、県内外の皆さんに長崎の「SDGsの今」を採点してもらった。ひとり親の家庭の苦しさや低賃金などの不満が点数を辛(から)くしている。かたや、飽食の先の「食品ロス」が絶えないという声もある▲長崎、日本、世界のことを「自分ごと」と捉えて行動しよう、という意見もあった。きょうの「みんなで考えるSDGsの日」に合わせ、紙面では県内企業の前向きな努力を紹介している。微力ながら、小社もその輪の中にいる▲一人一人が一歩一歩。「わがこと、自分ごと」を掛け声に、SDGsの坂道をみんなして上りたい。(徹)

© 株式会社長崎新聞社