中学時代は「めちゃくちゃ怠け者だった」 鉄人・鳥谷敬氏をプロに導いた思考法とは

母校の羽村第一中を訪問した元阪神、ロッテの鳥谷敬氏【写真:上野明洸】

中学時代は素振りが“苦手”「ひたすら振るのは飽きてしまう」

阪神とロッテでプレーし、昨季限りで現役を引退した鳥谷敬氏が16日、日本財団が企画する次世代応援企画「HEROs LAB」のイベントで、母校の羽村第一中学校(東京・羽村市)を訪問。生徒へ向けた講演会の中で、自身の中学時代について語る場面があった。

「めちゃくちゃ怠け者で、めちゃくちゃ適当な生徒でした。毎日学校が終わると野球に行って……ずっと野球をしていたので、勉強はあまりできる方でもなかったですね」と当時を振り返った。シニアチームに所属して野球漬けの生活を送っていたといい、学校行事などの記憶もほぼないという。

NPBでは2099本もの安打を積み重ねた鳥谷氏が最も嫌いだったという練習は、意外にも“素振り”。「ボールを打つのはできるんですけど、ただひたすら振るというのは飽きてしまうんです」。野球をプレーしている人であれば、誰もがこなすであろう練習を“サボっていた”というのだ。

「バットを振っているかどうか、(手にできる)マメのチェックがあったんです。週に1回されるんですけど、週に7回素振りをするより、バットを振らず週に1発殴られたほうがいいと思っていたので素振りはしなかったです(笑)。毎日しんどい思いをするよりも、1発叩かれる方を選択するような中学生でした」。プロでは人一倍練習して背中で若手を引っ張る姿を見せてきたが、高校時代までは家で自主練したこともなかったという。

重要なのは短期的な目標設定「今日やるべきことが見えてくる」

講演では、“目標設定”の大切さも語った。中学時代の鳥谷氏は、まだプロになりたいという思いは薄かった。「プロ野球選手というのがどういうものか、見たこともないし会えたこともなかったので、どれぐらいの能力、練習でプロになれるかという明確な目標がなかった」。本格的にプロを目指し出したのは早大進学後。身近にプロ入りするようなハイレベルな選手が多く、プロへの階段をイメージできるようになったという。

「大学生になって、これぐらいできたらプロに行けるんだな、その人がプロで活躍したら、これくらいのレベルまでいったらプロで活躍できるんだなというのを身近で見ることができて、明確な目標ができた」。そこから、自分がやるべきことを逆算して練習する日々が始まった。

大事だと語るのは、短期的な目標設定。「目標とか夢というのは実現するには時間がかかる。遠いところを見過ぎると、今日はいいや、明日やればいいかという考えになってしまう。それを1週間後とかに目標設定して細かく分けて考えていくと、今日やらないといけないことが見えてきます」。

NPB歴代2位の1939試合連続出場を果たし、「鉄人」と称されるようになったのも、毎日小さなことを積み重ねてきたからこそ。「1日24時間は、みんなに平等にある。その時間をどう使うか。上手く使った人が成功すると思っています」。継続は力なり――。誰よりも多く野球というスポーツに時間を注いできた鳥谷氏の“イズム”を後輩たちへ授けた。(上野明洸 / Akihiro Ueno)

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