コンディション“激変”の走行初日「今日の経験が助けになる」とトヨタ平川亮/WEC第1戦

 WEC世界耐久選手権第1戦セブリング1000マイルレースは3月16日、アメリカ・フロリダ州のセブリング・インターナショナル・レースウェイで走行初日を迎えた。ハイパーカークラスに参戦するトヨタGAZOO Racing(TGR)の2台のGR010ハイブリッドも、走行を重ねている。

 3月12〜13日に行われた公式テスト“プロローグ”に続き、本格的な走行が再び始まったセブリング。7号車と8号車、TGRの2台のGR010ハイブリッドにとっては、新たに課されたBoP(性能調整)の影響が明確に現れた1日となった。

 午前中にスタートした60分間のFP1は、激しい暴風雨の影響で中断され、終盤には路面が乾くという、ドライバーにとっては厄介なコンディションとなった。

 セバスチャン・ブエミ/ブレンドン・ハートレー/平川亮の8号車GR010ハイブリッドは、この日のベストで総合3番手となる1分50秒267をマークした。

 シーズンのディフェンディング王者であるマイク・コンウェイ/小林可夢偉/ホセ・マリア・ロペスの7号車GR010ハイブリッドも、1分50秒633をマークし総合5番手につけた。

セブリングを走る7号車GR010ハイブリッド

 午後に60分間行われたFP2では、メカニカルと空力セットアップの最適化、そしてミシュランタイヤのコンパウンド比較を行った。加えてチームは、BoP変更により190km/h以上とこれまでより高く設定されたハイブリッドブースト作動速度に合わせるための作業もこなした。

 気温が30度に達する中、7号車とLMP2カーとの軽度の接触はあったものの、それ以外は概ね予定通りにプログラムをこなした。

 FP2では全体的にラップタイムが伸びず、TGRの2台は8号車が総合5番手、7号車が総合8番手でセッションを終えている。

 走行2日目となる17日木曜は11時55分から1時間のFP3、そして19時すぎから予選のセッションが予定されている。

 第1戦初日、水曜日の走行を終えたTGRの6名のドライバーのコメントは、以下のとおり。

■LMP2に近づけたのは「良い仕事ができたということ」

■小林可夢偉(チーム代表兼7号車ドライバー)

「セブリングに戻って来てレースへの準備が始められるのは嬉しいです。今日の公式練習セッションはいつもより短く、私は大雨だった午前中のセッションしか走りませんでした」

「今日は時間を有効に使い、データを最大限に得ることができました。なかなか難しい一日だったので、明日の最後の公式練習までにバランスを改善することが必要です。最も重要な決勝レースへ向け、さらにクルマを良くするための努力を続けます」

■マイク・コンウェイ(7号車)

「今日はあまり走れず、理想的なラップはできなかった。午後のセッションはかなりドライブするのが難しかった。原因を究明して明日はもっと良い状況にしなくてはいけない」

「プロローグテストの時よりも難しい状況になったのは、恐らく気温の変化と、他のシリーズの車両も走ったことにより路面が影響を受けてグリップレベルが変わったことによるものだと思われる」

「どうすれば改善できるか、すべてのデータを見直し作業を進める」

■ホセ・マリア・ロペス(7号車)

「今日も可能な限り学んできたが、簡単ではなかった。BoPの変更により苦戦を強いられるだろうことは分かっていた。まずすべての問題点を洗い出し、決勝レースへの準備をすることが重要だ」

「正しいバランスを見出し、ミスすることなく、トラフィックをうまくこなして完璧なレースができれば優勝争いができる自信はあり、決して悲観的ではない」

ピットで走行を見守る小林可夢偉チーム代表兼ドライバー。ブレンドン・ハートレー、平川亮、中嶋一貴TGR-E副会長の姿も

■セバスチャン・ブエミ(8号車)

「練習走行初日が終わったところで状況を判断するのはちょっと難しいが、プロローグテストの時と比べると、LMP2車両にタイムで近付いているように見えるので、僕らが良い仕事をして進歩できたということだろう」

「風向きが大きく変わったため、特に1コーナー進入時は強い追い風によりラインを外しやすい。それもあって結局FP2ではタイム更新ができなかったが、進歩はしていると思う」

「まだ明日も練習走行の機会があるので、この状況下で最大のパフォーマンスを引き出すべく作業を続ける」

■ブレンドン・ハートレー(8号車)

「午前中はウエットコンディションでの走行だった。このコースならではの異なる舗装や荒れた路面、水たまりなどの中で走るのはとてもチャレンジングだった」

「数周でもそのようなコンディションで走れたことで、ウエットレース時の準備ができたのは良かったが、ここでウエットになったら覚悟が必要だ」

「午後のセッションでは良い走行ができ、決勝レースへ向けてさまざまなタイヤコンパウンドを試すことができた。とても順調な一日だった」

■平川亮(8号車)

「今日はプロローグテストの時とは気温という点でまったくコンディションが変わっていました。先週は寒く、風向きも違いました。今日は暖かく、クルマの挙動が大きく変わってしまいましたが、それを理解できたのは本当に良かったです」

「恐らく決勝レースも同じような暖かいコンディションになると思うので、今日の経験が助けになってくれるでしょう。GR010ハイブリッドの感触は着実に良くなっているので、決勝レースへ向けた準備はほぼ整ったと思います」

セブリング・インターナショナル・レースウェイを走るトヨタGAZOO Racingの8号車GR010ハイブリッド

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