第38回「亜無亜危異」

亜無亜危異(アナーキー)がデビューし、新宿ロフトで大暴れしていた時代を経たある日、ベースの寺岡信芳が腕を骨折したという話が飛び込んできた。 先の「毛ぼうし」ではないが、相手の迷惑も顧みず、すぐに行動に移してしまうこの性格。何とかしたいものだと分かっているのだが、そのときもベーシスト出身の血が騒ぎ、よし、オレが寺岡の代わりにベースを弾くと親切の押し売りのような勢い。 もはやアナーキーも断れず、自分はといえば、パンクのベースを弾くのならと、ブライアン・セッツァーばりにロカビリーにハマっていた息子のバリバリにトゲの生えたリストバンドを身につけ、意気揚々と「ノット・サティスファイド」などをこなしてステージ袖へ戻ると、仲野茂から、「PANTA、そのトゲの生えたリストバンドはメタルのスタイルで、パンクは丸い鋲なんだけど…」と苦言を呈された。 サイコビリーやスラッシュメタル、いやいやなかなかにジャンルの壁は難しい(笑)。

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