女性ドライバー3名で3シリーズ計17戦を戦うアイアン・デイムス。重要なのは“結束力”

 ラヘル・フレイ、ミシェル・ガッティン、サラ・ボビー、今年3つのシリーズで都合17のレースに出場する彼女たちは、この挑戦に向けてアイアン・デイムズのドライバーラインナップの“結束”を維持することが重要だと考えている。

 モータースポーツの世界で女性の活躍を促進するためにアイアン・リンクスがイニシアチブをとるアイアン・デイムスは、2022年にWEC世界耐久選手権をはじめ、ELMSヨーロピアン・ル・マン・シリーズ、ファナテック・GTワールドチャレンジ・ヨーロッパ・エンデュランスカップという3つのチャンピオンシップに同じクルーを起用して参戦する。

 同チームは昨年フェラーリ488 GTE EvoでWECとELMSにフル参戦したが、今季はそれらに加え、GTWCヨーロッパのエンデュランスカップに新たにゴールドカップクラスが設けられことから、出場資格を持つフレイ、ガッティン、ボビーの3名を出場させることを決定した。

 彼女たちのプログラムは、ル・マン24時間レースとトタルエナジーズ・スパ24時間を含む年間17レース、合計121時間にも及ぶレースプログラムとなっている。レースのためにスパ・フランコルシャンに3回、その他にイモラとモンツァ、ポール・リカール、バルセロナにも2回訪れる忙しい1年となる予定だ。

「2021年のル・マンに向けて準備を進めている途中に、このラインアップで行こうと決めたのが始まりだった」とフレイはSportscar365に語った。

「いい戦いができたの。その後、GTワールドチャレンジで2レースを行い、ル・カステレ(ポール・リカール)では難しいスタートになったけど、バルセロナでは良い進歩を見ることができた」

「私たちはステファン・ラテル(SROの創設者兼CEO)によってチャンピオンシップに温かく迎えられた。非常に印象的なフィールドで、とてもいい交流と競争ができたわ。私はこれがアイアン・デイムスの競争力を示すための重要なステップになると考えた」

「ELMSとWECの目標は過去3年間行ってきた良い仕事を継続すること。WECもつねに温かく迎えてくれたわ。レベルはとても高いけれど、自分たちの実力をアピールしてアイアン・デイムスの名前を示す場所でもあるの」

 フレイのチームメイトであるガッティンは、同じラインアップで年間17レースを戦うことについて、アイアン・デイムスという組織にとって「非常に重要」であると付け加えた。

「ラヘル(・フレイ)と私はアイアン・デイムスが誕生したときからこのプロジェクトに参加している」とガッティン。

「お互いのことをよりよく知るようになってきたおかげで、長年にわたってチームメイトと仲良くすることの重要性が証明された。お互いを知ることは、良いクルマと良いパフォーマンスを作るための全体的な進歩を助けるの」

「私個人としてはWEC、ELMS、GTWCヨーロッパ・エンデュランスカップを一緒に分かち合えるという事実をとても喜ばしく感じている」

「私たちはとてもいいグループよ。サーキットの外でも一緒に楽しんでいるし、3つのチャンピオンシップを一緒に戦えることをとてもうれしく思っているの」

■一生のお土産を一緒に作っている感じ

WECのLMGTEアマクラスにエントリーしているアイアン・デイムスの85号車フェラーリ488 GTE Evo

 アイアン・デイムスのもっとも新メンバーであるボビーは、2021年のポール・リカール1000kmでチームにデビューした。彼女は、最初から3つのシリーズのプログラムを確認されていることで、今年に向けて自信を深めることができると信じている。

「今シーズン私たちがやろうとしていることは、私がモータースポーツをやってきた過去10年間をカバーしてしまうことなの!」とボビーは述べた。

「そのようなプログラムがあることは、私にとって非常に印象的ね。昨年はすべてがあっという間に終わってしまった。正直に言って、私にとって1レース1レースが勝負だったの。対称的に今年は良い準備をする時間があった」

「グループ内の結束は非常に良い。そして、それはとても重要なことね。私たちはトラック上で行うことだけでなく、トラックの外で行うこともベースにしているため効率的に作業を行うことができるの」

「私にとって、このようなグループに参加するのは初めてなので本当に素晴らしく、とても楽しんでいる。一生続くたくさんのお土産を一緒に作っている感じね」

■選手権の切り替えは課題のひとつ

 アイアン・デイムスにとって、3つのタイヤメーカーの製品を絶え間なく切り替えていくことは大きな課題のひとつだ。

 WECのLMGTEアマクラスはミシュラン、ELMSのGTEはグッドイヤー、GTWCヨーロッパではピレリというように、それぞれのクラス/シリーズにタイヤメーカー各社が独占供給している。

 フレイ、ガッティン、ボビーの3名は先週、ポール・リカールで2日間を過ごし新しいピレリP Zero DHFに適応したのち、バルセロナでグッドイヤーのタイヤテストに参加した。先週末にはWECのプロローグテストのためにセブリングへ渡り、開幕戦の1000マイルレースに向けて準備を整えている。

「もう少し時間と走行距離が必要だけど、ドライバーの立場からすると非常に興味深いこと」と語ったフレイ。

「重要なのは、別のタイヤを履いたときに何が起きるかを知ること。そうすれば心の準備ができるから。私たちは多くの情報を収集している。これは全員の将来に役立つはずよ」

 ボビーはさらに、3つの選手権を戦っていくことの重みがシーズンの初めにいくつかの困難をもたらすかもしれないが、このキャンペーンはグループ全体にとって「大きな財産」になるはずだと付け加えた。

「あるクルマから別のクルマへ、そしてまた別のクルマへとジャンプしていくことは間違いなく難しい」ことだと彼女は言う。

「最初はそれに適応するのが難しく少し苦労する。しかし最終的には、私たちがより良いバックグラウンドを構築するのに役立つはずだと思う」

「それができれば、まるで自転車に乗るようにもので一生のものになる。シーズンの初めのうちはチャレンジだとしても、終わりには大きな財産になると信じているの」

セブリング・インターナショナル・レースウェイでコースの下見をするアイアン・デイムスのドライバーたち。右からラヘル・フレイ、サラ・ボビー、ミシェル・ガッティン

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