<社説>東北地方で震度6強 防災、減災の備え万全に

 真夜中の激しい揺れや鳴り響く緊急地震速報に、11年が過ぎたばかりの東日本大震災の記憶が呼び起こされた。多くの人が不安な夜を過ごしたことだろう。 16日午後11時36分ごろ、福島県沖を震源とするマグニチュード7.4の地震が発生した。17日までに、宮城、福島両県で3人の死亡が確認され、けが人は12県で180人超に上る。

 首都圏を含め最大約220万戸の大規模停電が発生し、一部地域で断水が続くなどインフラも大きな被害を受けている。原子力発電所で使用済み核燃料プールの冷却が一時停止する事態も生じた。

 県民も遠い場所での被害と考えてはいけない。自然災害はいつ何時、どこで起きるか分からない。防災・減災の意識を改めて徹底したい。

 宮城県の登米市と蔵王町、福島県の相馬市、南相馬市、国見町で最大震度6強を観測した。沿岸部に津波注意報が発令され、宮城県の石巻港で30センチなどが観測された。気象庁は「今後1週間程度は最大震度6強程度の地震に注意を」と呼び掛けている。

 宮城、福島両県では昨年2月にも震度6強の地震が起きた。今回も深夜・未明の揺れや避難で十分な睡眠がとれないなど、精神的なきつさは察するに余りある。お年寄りなどが孤立しないよう、安全な場所への誘導など互いに声を掛け合ってほしい。

 原発にも緊張が走った。東電によると福島第1原発の2、5号機、第2原発の1、3号機で燃料プールの冷却が地震の影響で一時停止した。第1原発2号機は再開まで約7時間半を要した。汚染水や処理水を保管するタンクのずれも見つかった。東北電力女川原発1号機でもプールの冷却が一時停止した。

 東電や政府は発電所内外のデータに異常はないとして、原発の安全性は保たれているとする。だが、昨年2月の地震では、福島第1原発3号機に設置した地震計の故障を放置していたことで、地震の際のデータが取れていない事態が起きていた。東電は故障の事実を地震直後には発表せず、危機管理の在り方が批判されてきた。

 原発はひとたび制御を失えば取り返しのつかない事態となる。震災の影響で過酷事故を招いた原発の廃炉は見通せず、今も帰還困難区域の指定が続く。政府は各地で原発の再稼働を進めようとしているが、地震大国と言われる日本で原発は全て廃止すべきだ。

 沖縄でも大きな地震は起こりうる。1月にはトンガ沖の海底火山噴火で潮位変化が起きるなど、島嶼(とうしょ)県にとって津波の脅威は隣り合わせだ。

 就寝中の災害も想定し、家具が倒れてこないような配置の見直し、寝床そばへの靴の用意など、家庭でできる備えに万全を期す必要がある。水や保存食の備蓄、避難場所と経路の確認、災害時の連絡方法などを再点検したい。

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