【2022年スーパー耐久見どころ紹介】S耐新時代到来。第1戦鈴鹿からトピックス満載

 いよいよ3月19〜20日、三重県の鈴鹿サーキットを舞台に、ENEOS スーパー耐久シリーズ2022 Powered by Hankookが開幕する。プライベーターたちが争ってきたシリーズは、2021年から新設されたST-Qクラスを中心に、新たな時代に突入することになりそうだ。

■ST-Qでカーボンニュートラルへの挑戦が本格化

 1990年に、市販車小改造の『N1耐久シリーズ』として始まったこのシリーズは、その後レギュレーションの変化とともにその姿を変えてきたが、プライベーターが参加し、さまざまなレーシングカーを受け容れるスタイルを続けてきた。GT3やGT4、TCRといったカスタマーレーシングカーが世界的に流行してからも、Aドライバーにジェントルマンドライバーを据えることで、エントラントが楽しめるスタイルを守っている。

 そんなシリーズに2021年に新設されたのがST-Qクラス。あくまでスーパー耐久らしさを保ちながら、自動車業界が直面するカーボンニュートラルに向けた取り組みとして、2021年富士から水素エンジンを積んだORC ROOKIE Corolla H2 Conceptが登場。最終戦にはバイオディーゼル燃料のデミオも登場した。

 さらに今季からは、新たな燃料を使用するORC ROOKIE GR86 CNF Concept、Team SDA Engineering BRZ CNF Conceptが参戦。まだ詳細は明らかにされていないが、いわゆるカーボンニュートラルフューエルを使用しているよう。詳細はレースウイーク中に明らかにされそうだ。また、MAZDA SPIRIT RACING MAZDA2 Bio conceptは名前どおりデミオからマツダ2に変更。今季はMAZDA SPIRIT RACINGとしてフル参戦する。

 自らドライバー“モリゾウ”としてステアリングを握るトヨタの豊田章男社長は、「各社とも、未完成の技術を今後モータースポーツ、スーパー耐久の現場で実証するようになってまいりました。こうした『意思ある情熱と行動』により、10年後、20年後の未来の姿が変わってくると思います」とスーパー耐久という舞台を捉えている。いずれも、メーカーが積極的に関わる取り組みで、今までスーパー耐久のパドックでは見かけなかったメーカー関係者が大いに増えた。

 その取り組みとメーカーの積極的な関与は、ひとつのクラスだけの話とは言え、これまでのスーパー耐久の牧歌的な雰囲気からの変革を感じさせつつある。

モリゾウがドライブするORC ROOKIE Corolla H2 Concept
Team SDA Engineering BRZ CNF ConceptとORC ROOKIE Corolla H2 Concept
ピットレーンに並ぶORC ROOKIE GR86 CNF Concept、ORC ROOKIE Corolla H2 Concept、Team SDA Engineering BRZ CNF Concept

■カスタマーレーシングカーの各クラスとも激戦必至

 一方で、他のクラスでは今季もプライベーターたちによる魅力的な攻防が展開されそうだ。まずGT3カーを使うST-Xクラスは、2021年はD’station Racingのアストンマーティン・バンテージAMR GT3がチャンピオンを獲得したが、今季は並行して参戦するWEC世界耐久選手権との重複から、第1戦は欠場する。

 また今季、ST-Zから移行したTKRI、そしてGrid Motorsportと2台のメルセデスAMG GT3が参戦する。aprのレクサスRC F GT3、ポルシェセンター岡崎のポルシェ911 GT3 R、さらに今季HELM MOTORSPORTSの1台を加え、強豪DAISHIN、第2戦から参戦するMP Racingと3台がそろうニッサンGT-RニスモGT3勢と、強豪ぞろいだ。誰が勝ってもおかしくない陣容が争う。

 GT4を使用するST-Zは、前年チャンピオンのENDLESS SPORTSがST-Qへ、ランキング2位のD’stationがST-1へ、先述どおり昨年1勝のTKRIがST-Xへと移行。悲願の王座を目指すTEAM 5ZIGENか、新型のポルシェ718ケイマン・クラブスポーツRSを投入したPorsche Team EBI WAIMARAMAか、はたまた成熟が進むGRスープラGT4勢か……。こちらも誰が優位に立つかは分からない。

 ST-TCRは今季も2台のホンダ・シビック・タイプR TCR同士の争いだが、毎戦激しいレースが展開されてきた。今季も接戦になるだろう。

ピットレーンに並ぶST-X車両たち

【スーパー耐久シリーズ クラス一覧(ST-X/Z/TCR/Q)】

ST-X:FIA-GT3公認車両、およびGT3規格に準ずる車両
2022年主要参戦車種:アストンマーティン・バンテージAMR GT3/ニッサンGT-RニスモGT3/ポルシェ911 GT3 R/レクサスRC F GT3/メルセデスAMG GT3

ST-Z:GT4規格車両、およびGT4規格に準ずる車両
2022年主要参戦車種:ポルシェ718ケイマンGT4・クラブスポーツMR/ポルシェ718ケイマンGT4 RS・クラブスポーツ/ジネッタG55 GT4/トヨタGRスープラGT4/メルセデスAMG GT4

ST-TCR:TCR規格車両、及びTCR規格に準ずる車両
2022年主要参戦車種:ホンダ・シビック・タイプR TCR

ST-Q:STOが参加を認めたメーカー開発車両、または各クラスに該当しない車両
2022年主要参戦車種:トヨタ・カローラスポーツH2コンセプト/トヨタGR86 CNFコンセプト/スバルBRZ CNFコンセプト/マツダ2・バイオディーゼルコンセプト

■ST-1〜5も話題多数。車両の見た目も変わる

 ST-1は、ニュルブルクリンク向けに開発されたバンテージGT8Rを投入するD’station Racing、前年王者のKTM、TRACY SPORTSのGRスープラの争い。KTMが優勢にも感じられるが果たして。そしてST-2はGRヤリスの台数も増え、前年王者で歴戦の雄であるシンリョウレーシングチームのランサー勢との争いにも注目が集まる。

 またST-3は、今季強力な体制を敷く2台のフェアレディZが登場することになり、混戦が加速しそう。ST-5は最多の台数が集まり、トヨタ・ヤリスの登場で車種バラエティも増えた。今回はST-4の参加はないレースだが、第2戦からはGR86のデビューも予定されており、こちらも見どころが多そうだ。

 ちなみに、今季は車両の見た目も少し変わっている。既報のとおり、シリーズ冠スポンサーにENEOSが決まり、フロントウインドウには全車オレンジの帯が入る。また、サイドのカーナンバーの上には、シリーズの『フューチャーソリューションパートナー』を務めるTOYOTA GAZOO Racing、マツダ、東京海上日動、三井住友海上のロゴが入った。ぜひサーキットでチェックしてみよう。

2022年からENEOSがシリーズ冠スポンサーとなり、フロントウインドウはオレンジの帯となった。
2022年からシリーズの『フューチャーソリューションパートナー』のロゴがカーナンバー上部に入る。
2022年からシリーズの『フューチャーソリューションパートナー』のロゴがカーナンバー上部に入る。

【スーパー耐久シリーズ クラス一覧(ST-1/2/3/4/5)】

ST-2:2001cc〜3500ccまでの四輪駆動車両、および前輪駆動車両
2022年主要参戦車種:トヨタGRヤリス/ミツビシ・ランサー・エボリューションX/スバルWRX STI/ホンダ・シビック・タイプR

ST-3:2001cc〜3500ccまでの後輪駆動車両
2022年主要参戦車種:ニッサン・フェアレディZ(Z34)/レクサスRC350/トヨタ・クラウンRS

ST-4:1501cc〜2000cc迄の車両
2022年主要参戦車種:トヨタ86/トヨタGR86

ST-5:1500cc以下の車両
2022年主要参戦車種:マツダ・ロードスター/マツダ・デミオ/マツダ2/ホンダ・フィット/トヨタ・ヤリス/トヨタ・ヴィッツ

ST-1:ST-2〜ST-5以外の車両
2022年主要参戦車種:KTMクロスボウGT-X/トヨタGRスープラ/アストンマーティン・バンテージAMR GT8R

※STOの判断により、参加クラスが変更される場合がある。

2022年スーパー耐久シリーズ スケジュール

Round Circuit Date Distance

TEST 富士スピードウェイ 2月23日 ※夜間走行あり

1 鈴鹿サーキット 3月19〜20日 5時間

TEST 富士スピードウェイ 5月平日にて調整中 ※夜間走行あり

2 富士スピードウェイ 6月3〜5日 24時間

3 スポーツランドSUGO 7月9〜10日 3時間×2レース

4 オートポリス 7月30〜31日 5時間

5 モビリティリゾートもてぎ 9月3〜4日 5時間

6 岡山国際サーキット 10月15〜16日 3時間×2レース

7 鈴鹿サーキット 11月26〜27日 5時間

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