スマホの「2画面表示」、ホントに生産性アップするの? 日本に投入されたマイクロソフトの高級機を使ってみた

サーフェスデュオ2=3月6日、東京都内

 日本マイクロソフト(MS)は、2画面のスマートフォン「サーフェスデュオ2」を発売した。米巨大ITの一角を占めるMSは、ソフトやサービスが収益源でデバイスの存在感は薄く、スマホ展開は過去に一度撤退に追い込まれた経緯がある。「2画面スマホ」は新機軸となり得るか。MSのスマホの歴史を振り返りつつ、「生産性アップ」をうたい日本に投入された高級機の使い勝手を紹介したい。(共同通信=吉無田修)

 ▽スマホ再参入にどよめいた会場

 アップルがiPhone(アイフォーン)を発表したのは2007年だった。MSはパソコン市場を基本ソフト(OS)「ウィンドウズ」で支配したが、スマホ展開は苦戦した。

 14年にフィンランドのノキアから携帯電話事業を買収し、巻き返しを図ったものの、アップルとグーグルの牙城を崩せず、17年に撤退に追い込まれた。大規模な人員削減を行い、業績も一時落ち込んだ。

 MSは19年10月、ニューヨークで開いた自社ブランド端末「サーフェス」シリーズの発表会で、2画面スマホ「サーフェスデュオ」を披露。スマホ再参入は、このイベントの最大のサプライズだった。発表会に出席していた筆者は会場がどよめいたのを覚えている。

初代の「サーフェスデュオ」を披露した米マイクロソフト幹部=2019年10月、ニューヨーク

 参加者が驚いたのは、ディスプレーが2画面という新しいタイプのスマホだったことに加え、OSに自社製ではなくグーグルの「アンドロイド」を採用したことだ。

 MS幹部はその理由を「多くのアプリを出しているグーグルと組んで、顧客のニーズに応えたい」と説明した。2強に匹敵するアプリストアを築くのは現実的ではないと判断したとみられる。

 サーフェスデュオは、20年9月に米国で発売された。この機種は日本で展開しなかったが、2代目に当たる「デュオ2」は日本にも投入。デュオ2は第5世代(5G)移動通信システムに対応し、カメラ性能や音質を改善した。

 端末は指紋認証でロックを解除する。文庫本サイズの折り畳み式で、5・8インチの独立したスクリーンが二つ。二つの画面を合わせて8・3インチのディスプレーのように使用できる。

 折り畳みスマホは、韓国サムスン電子の「ギャラクシーZフォールド」シリーズが知られる。こちらは開くと、切れ目のない一つのスクリーン。背面にもディスプレーを搭載している。開いた端末の形はデュオ2が横長、ギャラクシーは縦長という違いがある。

2018年11月、米サンフランシスコで開かれたイベントで初公開されたサムスンの折り畳みスマホ

 ▽2画面で別々のアプリを起動

 デュオ2の最大の売りは、それぞれの画面で別のアプリを開くことができることだ。MSは「2画面の方が1画面のスマホより生産性が高まる」とアピールしている。

 MS幹部は今年1月、オンライン説明会で、業務用ソフトのクラウドサービス「マイクロソフト365」をディープに使っている人をターゲットとしていると語った。調査したところ、複雑な作業は1画面より2画面の方がしやすいと回答した割合が4人中3人に上ったという。

 例えば、左の画面にメールソフトのアウトルックを表示しながら、右側の画面を使ってチームズでチャットできる。

 2画面表示に対応したアプリもある。チームズは、左画面でチャット機能を使いながら、右側で会議の映像を表示。写真アプリは、左画面に撮影した写真が並び、右側には選択した写真が大きく表示される。

 外部アプリでは、動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」も写真アプリと同じように、左画面に動画が並び、選んだ動画が右画面に表示される。アマゾン・コムの電子書籍アプリ「キンドル」は本のように見開きで表示される。

キンドルを使ってサーフェスデュオ2に表示した電子書籍=2月20日、東京都内

 筆者は、片側の画面で何かを表示しながら、別売りの専用ペン「サーフェススリムペン2」(1万5950円)で、右側の画面にメモするのが便利だった。ペンは反応が良く、すらすらと文字が書けた。磁石で本体に付くが、外れやすいので、持ち運ぶ際は紛失しないよう注意した方が良さそうだ。別売りの専用カバー(7920円)を装着していれば、本体に付けて充電できる。

 気になったのは、動画などを2スクリーンで表示する際、中心部の表示がカットされてしまうことだ。ネットフリックスやユーチューブといった動画アプリは、中心部が切れた映像になる。キンドルは、漫画では問題がなかったが、縦書きの本は一部の文章が表示されないことがあった。

サーフェスデュオ2と専用ペン=3月6日、東京都内

 ▽ビジネスマン向け高級路線は成功するか?

 カメラは正面に一つ、背面に三つある。背面カメラは超広角、広角、光学2倍ズームの望遠。背景がぼやける「ポートレート」や、広い範囲を撮影できる「パノラマ」といった機能も備えている。背面のカメラ部品の出っ張りは、やや大きく感じられた。

 通信会社を自由に選べる「SIMフリー」モデルで、価格は18万4580円から。ほぼiPhone2台分の値段で、一般的なノートパソコンより高い。購入できる層は限られそうだ。

サーフェスデュオ2で撮影した写真。上から超広角、広角、望遠

 MSはソフトやサービスを収益源としていて、クラウドが成長エンジンだ。デバイスは、ライバルのアップルと比べて存在感が薄い。2021年6月期のデバイスの売上高は前期比5%増の67億ドル(約7800億円)。売上高全体に占める割合は4%にとどまった。

 パソコンは、アップルの「マックブック」シリーズに対抗して価格を抑えた商品も展開し、学生向けにもアピールしている。2画面スマホは便利だが、ビジネスマン向けの高級路線では普及するのは難しいとみられる。廉価版の登場にも期待したい。

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