長崎日大高 23年ぶりのセンバツに一丸 アルプス1300人「素晴らしい経験」

勝利を願い応援する長崎日大のアルプス席=甲子園球場

 コロナ禍が続いてきた中、兵庫県西宮市の甲子園球場で開かれている第94回選抜高校野球大会は、2万人を上限(21日まで)に久しぶりに多くの観客が詰めかけている。20日の1回戦に登場した長崎日大のアルプス席でも学校関係者約1300人が応援。タイブレークで惜敗と残念な結果にはなったが、それぞれの思いを胸にチーム23年ぶりの春舞台を選手と一緒に戦った。
 選手と同様にコロナ禍で我慢してきた吹奏楽部の現部員は、今回がスポーツ大会での初演奏。1993年の甲子園初出場から指揮する永石靖浩教諭(52)は「こういう機会をもらえて本当に良かったね、君たちの応援で選手の力も変わるよ」と部員に伝えた。中学生を含めた約40人は練習不足や独特の緊張感に負けず、一人一人の応援歌など軽快な音色を披露。春の甲子園に生演奏が響いたのは3年ぶりだ。
 その音楽に乗って生徒やOB、保護者も一つになった。全員で練習できなかった分、野球部の控え部員や生徒会などと協力し、事前にメガホンのたたき方などを動画で共有。吹奏楽部の疋田莉菜部長(17)は「みんなで一緒に、こんなことができるんだという素晴らしい経験だった。自分たちの新しい挑戦にも生かしたい」と充実感を漂わせた。
 長男が1年生の野球部員でOBの自身は93年に春夏連続で甲子園の土を踏んだ城島慶介さん(46)は「昔も思い出しながら、ジーンと感動した。残念だったけど、選手は(好勝負が)自信になると思う。夏も行ってほしい」と感慨深げだった。
 平成時代は県勢最多の甲子園出場を誇ったチーム。その全盛期を築き、平山清一郎監督(42)と山内徹也部長(39)の恩師でもある的野和男元監督(80)は「あと1点取れれば勝っていただろうが、その1点をなかなか取れないのが野球の難しさ。でも、みんなの力で甲子園でここまでできるんだから、個の力をもっと上げれば夏も面白い」。
 長崎日大の試合の観客は約1万6千人だった。数々の苦しみを経て、少しずつスポーツ本来の姿が戻ってきている。マスク越しの応援など制限は残るものの、3時間超の熱戦に、甲子園は何度も沸いた。


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