<南風>サンゴ礁の環境教育

 サンゴ礁の環境教育に20年以上関わってきた。本部町で初めて頼まれた講演では、町営ホールに幼稚園児から高校生までが一堂に集まり、誰にどう話したものか戸惑ったのを覚えている。プログラムの事例報告では、瀬底の中学生が来島者のビーチパーティーで遺棄される大量のゴミを毎週行うビーチ清掃で片付けることの矛盾を告発する場面もあり、大人の保全意識そのものが未熟な時代だった。

 環境教育に限ったことではないが、体験と知識は大きな柱である。ともすると座学での知識習得で満足しがちだが、当時の名護小学校の安田和男校長がサンゴ礁の環境教育で体験を通して感性を磨くことの大切さを体系的に実践するお手伝いをした。リーフ探検と称する干潮時の礁原での観察会では児童の安全確保に訪れた保護者が初めてのサンゴ礁体験に興奮していた。

 折しも体験学習が指導要領に組み込まれ、機会は増えたが指導者不足で、インタープリターを職業としたいという若者の期待を他所に、夏の干潮時の礁池へボランティアとして赴く日々となった。子どもへの環境教育の成果は、思いの外早く地域社会に共有できることをJICA研修で海外の行政担当者へ講義を行った際は、地域の経済構造に組み込む工夫を一緒に考えたりした。

 最近では、島での人の営みは隣接する裾礁(きょしょう)と一体のものであることが、再認識されてきたと実感することもある。OISTの地域連携事業で恩納村の小学生に授業を行うと、豊富な基礎知識と課題克服のための知識を得ており、地域の自慢を聞けば海と森の美しさが観光につながると胸を張り、将来が頼もしい。一方で、平成の大合併以降、地域の生態系が社会構造と乖離(かいり)する心配もある。次世代のサンゴ礁の担い手をどう育てるかが課題である。

(中野義勝、沖縄県サンゴ礁保全推進協議会会長)

© 株式会社琉球新報社