「平壌冷麺は玉流館、ノンマクッスは新興館」 〈平壌で楽しむ朝鮮のご当地グルメ〉① 平壌新興館(咸鏡南道)

平壌にいながら朝鮮全国津々浦々のご当地グルメを楽しむ―」、そんな各道の特産物食堂が平壌市内には複数ある。多くの市民に親しまれている特産物食堂を紹介する。

ピリ辛の「ノンマクッス」が妙味

「平壌冷麺は玉流館へ、ノンマクッスは新興館へ」

平壌市民なら誰もが認める新興館の名物料理が、ノンマクッスと呼ばれるでんぷんの麺料理だ。

1975年12月、平壌市平川区域にオープンした平壌新興館は、咸鏡南道の郷土料理を専門に扱う食堂。本店の新興館は咸鏡南道咸興市に位置し、地元の人たちは矜持を込めて「咸鏡南道の玉流館」と呼んでいる。

名物のノンマフェクッス (c) 朝鮮新報

ノンマクッスを提供している店は市内に数店舗あるが、本場の味を楽しめるのは同店と両江道の特産物食堂である平壌鴨緑閣だけ。ノンマクッスの中でも一番人気は魚の刺身を乗せたノンマフェクッスだ。同店ではスケトウダラの刺身を使用する。

スタッフのチョン・ヨンスクさん(53)は、「当店を訪れるお客さんのほとんどは、ノンマフェクッスを目当てにやってきます。麵料理だけで1日に数百食を提供しています。近所に住む人の中には、毎日一食は当店でノンマフェクッスを食べるという人もいるくらいです」と話す。

ノンマクッスの麺は白く糸のように細い。一見すると素麺や冷や麦に似ていなくもないが、歯ごたえは真逆でコシはしっかり、かなりの弾力だ。麺にピリリと辛いヤンニョムで和えた刺身をからめていただく。スープはさっぱり、だけど尾を引く旨さだ。

多くの市民で賑わう店内 (c) 朝鮮新報

同店を訪れていたリ・ヨンミョンさん(47)に話を聞くと、「平壌市民は元来スケトウダラのフェクッスが大好き。それで多くの市民が新興館を頻繁に訪れるのだと思う。辛味の刺身は、そば粉やトウモロコシの麺料理よりも、ノンマクッスと混ぜた方が相性が良い。コシのある麺をひと口すすれば、口の中に辛さが充満する。それがまた乙だ」と話してくれた。

ワタリガニの酢漬け(c) 朝鮮新報

ほかにも、ノンマピビムクッス(辛いヤンニョムで和えたでんぷんの麺料理)、タンコギ(犬肉)のスープごはん、スケトウダラのスープご飯、スケトウダラをはじめとする海産物のシッケ(魚を米や大根その他の薬味で発酵させた食物)、毛ガニのボイル、アヒルの焼肉など、多彩な料理を提供する。近年は、新メニューとしてハタハタの燻製やタコのコチュジャン和え、ワタリガニの酢漬けなど咸鏡南道の名物料理を次々と追加するなど、いっそう意欲的だ。

咸鏡南道出身の料理人が振る舞う料理の数々は地元固有の濃い目の味付けが多く、でんぷんやスケトウダラなどの原材料は咸鏡南道から直接取り寄せている。

平壌新興館 (c) 朝鮮新報

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