ウクライナ情勢で波乱相場の今だからこそ考えておきたい「分散投資」の戦略とは?

原油や天然ガスなどのエネルギー価格や食料品価格の高騰、それに伴う爆発的なインフレへの懸念−−2022年3月現在、未だコロナショックの傷跡が癒えない経済環境の中、ロシアによる「ウクライナ侵攻」は世界経済にさらなる混乱を生じさせています。

大きな価格変動が起こる今の投資環境において、一時的でも「元金が割れた状態」は強いストレスが生じ、日常生活にも影響をしかねません。もちろんリターンを得るために「投資」をしているわけですが、世界経済に大きな混乱が生じた際には、背負っているリスクの方が目立ってきます。

このような時代だからこそ、もう一度ご自身のポートフォリオを見直すため、分散投資の本来の意味と、有事の際に有力な分散方法を解説していきます。


分散投資の意味、「相関性」を意識している?

投資の基本、「分散」にも様々な意味が含まれています。金融庁のサイトにも記載がある代表的な要件は、投資する「時間(時期)」の分散、「資産」の分散、「地域」の分散の3つです。

・時間分散:価格変動が起こる相場で、複数回に分けて投資をする。
・資産分散:株式、債券、不動産など
・地域分散:北米、欧州、アジア、オセアニアなど

また、同じ資産である「株式」に投資をするとしても、投資先の会社(銘柄)の数に対しても、分散の意味が用いられます。

投資先の会社が少なければ少ない程、その会社が急激に株価が上昇すれば、リターンは大きくなりますが、当然リスクも高くなります。ここで問題となるが「相関性」です。

例えば、2つの会社に投資をたとします。その2社が、アイスクリーム屋さん(A社)と、かき氷屋さん(B社)だったとしましょう。ひと夏の売り上げが株価に与える影響は小さくないでしょうから、コントロール不能な「夏の気温」によって、株価は下記のように変動します。

これでは、分散した効果があまりなくなってしまいます。では、例えばアイスクリーム屋さん(A社)と、おでん屋さん(C社)だったらどうでしょうか。

予測できない事象によって株価の変動が起きた時、“同じ方向”に値動きが向いてしまうことは、「リスク分散」にならないと分かります。これが、投資商品ごとの「相関性」の基本です。

では、コロナショックやウクライナ情勢のように、全世界の経済に影響を及ぼす大きな事象が起きた場合、どのような分散投資が望ましいでしょうか。それは「株式」や「債券」と連動しにくい、投資商品も組み込むことで備えることができます。代表的な2つを紹介していきます。

株式や債権と連動しにくい投資商品(1):REIT(不動産投資信託)

REITとは、「Real Estate Investment Trust」の略で、不動産投資信託を意味します。1960年にアメリカで生まれ、2000年より日本でもこの仕組みが取り入れられ、頭にJAPANの「J」をつけ「J-REIT」と呼ばれています。

投資家から集めた資金を国内外の住宅やオフィスビル、商業ビルやホテルなどの不動産に投資し、賃料収入や物件の売却益で得た収益を投資家に分配する投資信託です。

REITのメリットは、

・少額で投資が出来る
・多額の資金を使って物件を保有することなく、不動産投資が出来る
・NISAを使って投資が出来る
・インフレに強い(と言われている)

逆にデメリットは、

・自然災害などに巻き込まれた場合、不動産収入が減少したり、不動産価値が損なわれる
・コロナショックなどで人の流れが止まった時、ホテルやショッピングセンターの売上(価値)に影響する

いずれにしても、株式の価格変動と相関性が低い ため、リスクヘッジとして非常に有効な投資先の一つといえます。

株式や債権と連動しにくい投資商品(2):金(ゴールド)

古くは紀元前から装飾品や通貨として扱われてきた金(ゴールド)は、現代においても他の金属とは違い、特別なものとして扱われています。株式や債券とは違い、「現物」が「価値」を有しているため、「安全資産」としての魅力は他には代えられないものがあります。

金は、有事の際に需要が高まることで有名です。特に今回のウクライナ情勢においても、急激な価格高騰が起こり、2022年3月7日には、金の先物取引の価格が史上最高値を更新しました。

金投資のメリットは、予測不能で急激な世界情勢の悪化の際にも、価値が無くなることはなく、リスクヘッジに最適であることです。デメリットは、価格変動の予想がし難いことと、仮に「現物」の金を保有している場合、盗難などのリスクが生じることです。

それでも「純金積立」のような方法や、金関連のETF(上場投資信託)など、意外と多様な投資方法があるのも魅力です。金の価格は、株式や債券とは異なる値動きをする性質 を持っているため、ポートフォリオを組む際のリスクヘッジ資産として、有効に機能するでしょう。

不確実性の高い世の中の運用ポートフォリオ

国内株式・国内債券・海外株式・海外債券の4つの資産に分散をするのは一つのセオリーであることは間違いなく、それはきっとこれからも、大筋では変わらない運用手法と言えるでしょう。

ただ、各投資資産の「相関性」から考えた時、「コロナショック」や「ウクライナ情勢」に継ぐ、新たな危機に備えるためには、よりリスクを分散して、強固な運用ポートフォリオを考える必要があります。

以下に、各投資資産がどのような情勢に影響を受けやすいのかまとめています。

重要なのは、不確実性の高い今の時代、誰にも分からない未来を先読みして、一時に大きく買ったり売ったりすることはせず、少額でも継続的に、長期間の積み立てを継続していくことを大前提にするということです。そのために目を向けるべきは、個別の投資資産の増減ではなく、資産全体のリスク・リターンの管理です。

全て自己責任の投資の世界において、ある瞬間の相場に一喜一憂するのはストレスも大きく、非常にネガティブです。あらかじめ投資資産を「分散」しておくことは、精神的な負荷を軽減し、結果的に余計な取引(不要な損の確定)を避けることに繋がります。資産形成を行う過程において、大きなリターンを得る手段も時には必要ですが、「大きく減らさない」ことこそ、長期戦に必要な戦略だと考えられます。


プロ(専門家)ではない限り、投資運用による収益は、労働収入による資産形成を助けるための「サブエンジン」のようなものでしょう。あくまで補佐である道具のために、株価や為替の乱高下によって精神的に負荷がかかり、日常生活に支障を来たしてしまうと、「メインエンジン」であるはずの労働収入に悪影響が出てしまうかもしれません。

避けられるリスクは計画的に避けながら、少しずつでも資産が増えるように、ご自身のライフプランにあったポートフォリオを考えてみてはいかがでしょうか。

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