172cm、90kgの小6スラッガー 巨人Jr.の4番を育てた「自主性伸ばす」指導法

ジャイアンツジュニアにも選出された入江諒太くん【写真:編集部】

ジャイアンツジュニアの入江諒太くんの父・伸孝さんは学童野球監督で全国大会出場

昨年末に行われた「NPB12球団ジュニアトーナメント」で巨人が結成した読売ジャイアンツジュニアの4番、入江諒太くんは3試合連続で本塁打を放ち、強烈なインパクトを残した。将来が期待される主砲はいかにして育ったのか。前編では紹介した諒太くんの素顔に続き、今回は監督として昨夏に、チームを少年野球の全国大会「マクドナルド・トーナメント」出場までのし上げた父・伸孝さんの指導と考え方について。

【動画】巨人Jr.で3戦連発! 驚愕の打球速度…入江くんの実際の映像

諒太くんは所属する久本ブルーエンジェルス(川崎市)でも本塁打を量産し、両翼90メートル以上ある一般の球場でも本塁打を放ったことがある。強打の仕組みは、トップ(構えた手)の位置にあると伸孝さんは説明する。「後ろを大きくしています」。手の位置を捕手側に大きく持っていくことにより、ボールとの距離が生まれ、見る時間と、パワーが生まれるという。

土日はチームの監督を務めているため、親子での練習は主に平日だ。トスバッティングは4種類やるのが日課。最初に、左で打ち、次に背中側からトス、歩きながらトスが続き、最後に通常のスイングをする。これらのメニューは諒太くんとともに考え生み出したものだ。「自分で考えてやっていることが多いですね」と振り返る。これこそが自主性を伸ばす伸孝さんの指導だ。

「無理やりやらせるのは嫌なので」。自ら強制するわけではなく、選択肢を増やすことが、指導者の役目だと考える。本人の意思を尊重しつつ、時には「こういうやり方もある」と提示する。

自身も社会人チーム・昭和コンクリートでプレー、学生時代に世田谷西シニアでコーチを務める

自身も大阪・北野高で1年夏から遊撃のレギュラーを掴み、強豪そろう大阪大会でベスト8まで進出した。慶大に進学し、一度野球から離れるものの、在学中に中学野球の強豪、東京・世田谷西シニアでコーチを務めた。同チームの蓬莱昭彦総監督に現役復帰を勧められ、卒業後、2年間社会人野球チーム・昭和コンクリートで現役を続けた。

独自の打撃理論や、“結果”と“自主性”を求めた世田谷西シニアでの指導経験は「今に生きている」と感じている。兄の翔太さんが6年生、諒太くんが4年生の時に、久本ブルーエンジェルスの監督に就任した。監督として、成功体験がやる気につながると、全選手の成績や、指導マニュアルを書いた資料を作成し、保護者や選手に配布した。チームは、見る見るうちに強くなり、昨年夏、チーム創部20年にして、初めて全日本学童軟式野球大会「マクドナルド・トーナメント」に出場を果たした。

伸孝さんが諒太くんに求めるのは“影響力のある人”だ。「例えば守備のときに、状況に応じて次のプレーを予測して、『こういう打球があるよ』とか『こんな作戦がくるかも』とか、率先してチーム内に会話を生み出し、全員が次のプレーに備える。そんなキッカケを作ることができる選手になってほしい」。チームに影響力を与えるためには、“ある程度の実力”も不可欠だと話す。

実際に父の思いは本人に引き継がれている。ジャイアンツジュニアの西村健太朗監督は「彼のところにみんなが質問しに行く」と明かすように影響を与えていた。それだけでなく、試合でも4番として3試合連発本塁打で、チームの3位入賞に貢献した。

4月からは兄が在籍し、父が過去にコーチを務めた世田谷西シニアに入団予定だ。父もスタッフとして支える。「さらに厳しい野球になっていくが、乗り越えて、周りに影響力ある人間になってほしいなと思います」。監督と選手という関係はなくなるが、それでも自らの夢につき進む諒太くんを支え続ける。(川村虎大 / Kodai Kawamura)

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巨人の「55」を背負った172cmの小学6年生 衝撃の3本塁打だけではない凄さ

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