保険金を受け取れないリスクを回避する、生命保険の加入有無を調べる手順とは

もし家族に万が一や、認知症などで意思疎通ができなくなったら……考えたくはないことですが、そんな時のために「残された家族に少しでも」と、生命保険に加入されている人は少なくありません。

生前から自身の加入保険を家族に共有していれば問題になることはないでしょう。しかし近年、一人暮らしのまま亡くなってしまうケースや、人によっては家族に加入を隠したいというケースもあり、その保険の存在を家族が知らないことがあります。

そんな状況で万が一などが起きてしまった場合、どのように対応すればよいのかを解説します。


どれくらいの人が生命保険に加入している?

「公益財団法人 生命保険文化センター」が公表をしている「生活保障に関する調査」(令和元年度)によると、「疾病入院給付金の支払われる生命保険の加入率は73.1%」とあり、10人中、約7人がなにかしらの保険に加入していることになります。

10年以上前であれば、満期保険金などを受け取るタイミングで、元本よりもかなり増えて戻ってくる「お宝保険」といわれるような商品が数多く存在していました。

私自身、「保障の中身を見てほしい」と相談されることがあるのですが、たまにこの「お宝保険」を持っている人に会うことがあります。そんな時は「これだけは絶対に解約しないで最後まで持っていてください!」とお伝えするくらい、利率が良いのです。今では到底考えられないくらいの利率が保険証券に記載されています。

そんなこともあり、60代以上の世代であれば「保険に入っていないことの方が稀」と考えるのが自然だったのでしょう。

実際、どのようにすれば加入有無を調べることができるのか

生命保険は「請求」をしてはじめて保険金や給付金を受け取れる商品です。しかし、どの保険会社に加入しているのかがわからなければ請求すらできません。そこで知っておいてほしいのが、「生命保険契約照会制度」です。

今までは災害時に保険証書を紛失した場合等に限って照会が可能な制度でした。しかし、2021年7月からは親族等が申し出れば、一般社団法人生命保険協会を通じて、生命保険協会に加盟しているすべての生命保険会社に対し、保険契約の有無を一括で照会できるようになりました。

保険契約者、または被保険者が次のような状態になった際に利用できます。

・死亡した場合
・認知判断能力が低下した場合
・災害で死亡、または行方不明になった場合

照会の費用は1件につき3,000円(税込)で、申請方法はオンラインまたは郵送です。なお、災害時は無料で、電話で申請を行うことができます。

利用する際の注意点は?

申請後、利用料金の支払いが確認できてから2週間程度で、生命保険会社ごとに契約の有無が開示されます。ただし、あくまで「契約の有無」が開示されるだけなので、詳細な保険契約の内容は、各保険会社へ個別に確認する必要があります。

また、仮に契約があったとしても全ての契約が開示されるわけではなく、すでに給付金の支払いが開始している年金保険や、保険金が据え置かれているものについては照会の対象にならない点も注意が必要です。

なお照会ができ、保険会社に保険金や給付金を請求するにあたっても、公的書類や医師による所定の診断書等の取得、またその費用を負担する必要があります。そのため、「生命保険証券を探す」「生命保険会社から定期的に送付される通知物がないかどうか」「預金通帳の保険料の口座振替履歴等を確認する」など、まずはご自身でできることがないかを確認し、それでも難しい場合に利用を検討するのが無難かもしれません。

一般社団法人生命保険協会の「生命保険契約照会制度のご案内」

本来の気持ちを汲み取るために

「万が一」の時のため、残された家族の負担が少しでも軽くなるようにと加入している生命保険。それが、残された家族の手を、意図せず煩わせてしまうこともあるかもしれません。対応方法を知っていれば、本来の気持ちを汲み取ることができるかもしれませんね。

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