W杯へ

 「そういえば、よく小嶺先生が言ってましたよ。『サッカーは勝つか負けるか分からないから面白いんだ』って」-昨日の夕方、運動部の同僚が懐かしそうに教えてくれた。『最初から勝てると分かっていたらつまんないだろ』…「小嶺先生」に余分な説明は要るまい▲手が使えず、1点が重く、だから、戦前の予想が簡単に裏切られてしまう球技だ。それはこの競技で期待に応える結果を出し続けることの難しさを意味している。見ているこちらは期待を寄せるばかりだが、それを背負う側の重圧は想像もできない▲サッカー日本代表が一昨日、7大会連続のワールドカップ(W杯)本大会出場を決めた。森保一監督と主将の吉田麻也選手は長崎市の出身。県内のファンも沸いた▲最終予選の序盤3試合でいきなり2敗。監督更迭論がくすぶり続ける中、指揮官も選手も戦い抜いた。チームはそこから6連勝。終わってみれば1試合を残して悠々と本大会行きのチケットを手に▲森保監督は、日本のW杯初出場が最後の最後にするりと逃げていった1993年の「ドーハの悲劇」をフィールドで経験している。ドーハは次の開催国カタールの首都▲日本のサッカー史における「ドーハ」の意味を上書きする…そんな決意を胸に臨むW杯だ。11月の開幕が待ち遠しい。(智)


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