スチャダラANIはカニエをどう見た? Netflix『jeen-yuhs:カニエ・ウェスト 3部作』激レア映像の数々に興味津々

Netflixドキュメンタリー『jeen-yuhs:カニエ・ウェスト 3部作』独占配信中

カニエ・ウェストあらためYe(イェ)

どうもアニです。Netflixのドキュメンタリー『jeen-yuhs:カニエ・ウェスト 3部作』を観ました。ラップアーティスト、カニエ・ウェスト(2021年「Ye:イェ」に改名)を20年以上も追いかけ続けたドキュメンタリーです。

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カニエ・ウェストはシカゴ出身のラップアーティスト兼プロデューサーで、グラミー賞も何度も獲っているヒップホップ・ファンには有名な人物です。最近は米大統領選に出馬したり、カニエ自身の発言が何かと世間を騒がせたりして、ちょっとおかしな有名人みたいな扱いですが、そんな彼をキャリア初期から追いかけたドキュメンタリー作品です。

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僕はカニエの大ファンというわけではないけど、新作が出たら必ずチェックするアーティストの1人です。作る曲は好きです。日本で普通に暮らしていると、最近の奇行とかはあんまり細かく入ってこないので、そこはよく知らない。なんかおかしいらしいというのは耳にしたり目にしたりはするけど、そのことに関してはそんなに興味はないです。

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カニエを追いかけ20年!

このドキュメンタリーの監督はクーディ&チケ。クーディは90年代の中頃、地元シカゴでコメディアンをやってる時に若い映画監督に誘われて、自主制作番組『チャンネル・ゼロ』に参加します。その番組のVJというかレポーターとしてヒップホップのパーティの様子を紹介したり、有名なヒップホップ・アーティストにインタビューしたり、シカゴのヒップホップを紹介している時に、まだ新進のビートメイカーだったカニエ・ウェストに出会って、今まで会った他の奴らとは何かが違うと感じ、「こいつのドキュメンタリーを撮りたい」と、レコードデビューまでの軌跡を追いかけたドキュメンタリーを撮ることを決めます。

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そしてカニエもジェイ・Zの2001年のアルバム『THE BLUEPRINT』に収録されてる「Izzo(H.O.V.A)」をプロデュースして、売れっ子プロデューサーの仲間入りをします。それでもカニエ本人は、プロデュース業はあくまで自分のアルバムを出すためにやっていて、ラップアーティストとして自分のアルバムをリリースするために奮闘する様子を、カメラは追いかけます。

カニエがヒップホップの世界で成功するためにシカゴからニューヨークに引っ越すと、監督のクーディもカニエを追いかけて、ずっと撮影し続けます。だから映像の量もすごい。3部作で4時間半くらいあるんだけど、メインというか見所は1stアルバム『The College Dropout』(2004年)を出すまでのカニエの奮闘ぶりを追い続けてるところかな。

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カニエはジェイ・Zのレーベル<ロッカフェラ・レコード>からアルバムを出したいと思ってるんだけど、ロッカフェラはカニエのことをプロデューサーとしか思っていなくて(ヒップホップの世界でプロデューサーというのは、だいたい曲を作るトラックメーカーを意味します)、カニエは自分のデモを聴いてもらおうとロッカフェラのオフィスに乗り込んで、スタッフに自分のデモを聴かせるんだけど相手にされなかったり。とにかくずっとカメラで追ってるんですよ、1stアルバム制作過程を。

スタジオでのレコーディングの様子や、家で制作してる様子など貴重な映像がたくさん出てくるので見応えありです。

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俺は裏方じゃない! 2ndアルバムでついにグラミー受賞

当時のヒップホップ業界ではプロデューサーあがりのラッパーは成功しないと袖にされてたんだけど、なんとかロッカフェラと契約できることになります。それでもカニエの新しいスタイルは、今までのロッカフェラと契約したアーティストとは全く違ったので、レーベル側にもなかなか理解されません。なので相変わらずプロデュース業で食いつなぐ日々が続くんですが、カニエはあきらめないでラッパーとして認められようと奮闘し続けます。

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なかなか自分の思ったようにいかず、母親に会いに行って励まされる様子もカメラは収めてたりします。そんな中、他のアーティストのプロデュース中に、自身のラップ生命も危うくなりかねない交通事故で大怪我したりして、その治療の様子もカメラは追い続ける。

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そんなこんなでやっとアルバムが完成し、念願かなってカニエはスーパースターの道を歩み始めるんですが、ちょっとづつクーディとの間に距離ができはじめます。そして2ndアルバム『Late Registration』(2005年)のグラミー賞受賞パーティでのカニエの態度に、クーディは自分はもう部外者になってしまったと感じ、疎遠になってしまうのでした。

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そこから6年くらい連絡も取らず、お互いの時間が過ぎていきます。クーディが撮らなかった間もカニエはスーパースターの道を歩み続けていましたが、ふとしたきっかけから2010年代の中頃に、中断していたドキュメンタリーの制作が再開されるんです。撮っていなかった間もクーディは、やっぱりカニエのことが好きでファンだということに気づき、「この面白い男を撮りたい!」という思いが再燃してドキュメンタリー制作を再開……という、とても濃密なドキュメンタリーになっています。

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これを観ればカニエがわかる

このドキュメンタリーを観れば、カニエ・ウェストとはどういう人物なのか? がわかります。個人的には90年代中頃から現在までのカニエの制作環境が観られるのが良かった。初期のシカゴの自室やニューヨークで借りた部屋で曲を作ってるところとか。そして現在は録音機材の進化でどこでも曲を作れるようになって、ホテルの部屋でレコーディングしてたり、別荘に機材持ち込んで録音してたり、時代と共に変わっていく録音環境が見られるのも面白かったです。

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あと、デビュー前のカニエが普段は歯の矯正器具をつけていて、ラップする時は外してその辺に置いてラップするんだけど、有名なラッパーにラップを聞いてもらう時にも同じように外してラップしてたら「そこに置いてあるのはなんだ?」と聞かれて、「歯の矯正器具です」って答えたら「そんなとこに置いとくな、口の中に入れとけ」って言われるのが、なんかツボでした。

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ちなみに、このドキュメンタリーは日本語吹き替えで観るのもおすすめ。さらに、同じNetflixの『デヴィッド・レターマン:今日のゲストは大スター』(2020年)という番組にカニエがゲストの回があるんですが、それを見ると最近の(2018年頃)カニエの感じがわかると思います。と、いうわけで、またまた。

文:ANI(スチャダラパー)

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