【MLB】鈴木誠也が“初球を強振”で得た収穫 打席で取り戻していく心技のバランス感覚

オープン戦デビューを果たしたカブス・鈴木誠也【写真:AP】

2打席連続の見逃し三振も「久しぶりにゲームに出て楽しかった」

■ロッキーズ 17ー1 カブス(オープン戦・日本時間26日・メサ)

真新しいピンストライプのユニホームがよく似合っていた。

今季からカブスに加入した鈴木誠也外野手は25日(日本時間26日)、米アリゾナ州メサの本拠地スローンパークでのロッキーズ戦でオープン戦デビューを果たした。結果は、2打席連続の見逃し三振。出番を終え室内練習場で約30分の打ち込みを行った後、取材対応をした鈴木の表情は明るかった。

「久しぶりにゲームに出て楽しかった。いよいよ始まるな、ここに来たなという感じがしたので、より頑張ろうと思いました」

待望の実戦デビューの率直な感想を述べた鈴木には、試合前から決めていたことが一つあった――。「初球の真っすぐ狙い」である。1回裏、第1打席の初球96マイル(約154キロ)の直球を強振しファウルとなったが、これがこの日一番の収穫になった。

「変にちょこんと当てて打つよりも、しっかり振ってそこから合わせていけたら自分の何が悪いのかっていうのが分かっていくので。あまり今の段階で当てにいこうとかっていうのはあんまり考えていないので。そこは一つ良かったのかなと思いますね」

求めたのは結果ではない。デビット・ロス監督がオープン戦初出場日を発表した23日(同24日)、練習を終えた鈴木は「打てようが打てなかろうが、それも自分の中ではいいと思っている。そしたら自分の課題も出てくるので」と抱負を語っている。

大きな反省材料も「甘い球を一発で仕留められないとなかなか難しい」

ただ、「甘い球」と振り返ったその1球を仕留められたかったのは大きな反省材料になった。

「甘い球を一発で仕留められないとなかなか難しい。それは日本でも一緒だったんですけど、(メジャーの投手は)より球威も上がってきますし。そこを一発でなるべく前に飛ばせられないとより難しいかなと思ったので」

鈴木の発言で思い出すのは、2年前に他界した野村克也氏の言葉だ。自著「野球論集成」の中で、野村氏は“狙い球”の極意について触れているが、その中で「欲から入って、欲から離れよ」という自戒の訓を添えている。つまり、力みがバットの操作を微妙に狂わせるという、技術の巧拙を超えた側面を説いている。「しっかりとスイングはできました」と言う鈴木だが、広島時代の昨秋以来となる実戦で、技術と心理面でのバランスを取りきれなかったのは無理もない。

「自分が甘い球を仕留められる、そういう練習を今からしっかりやっていきたいなと思っています」

メジャー初実戦で喫した連続見逃し三振。心技のバランス感覚の蘇生に向けて鈴木誠也は大きな一歩を踏み出した。(木崎英夫 / Hideo Kizaki)

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