ロシアによる“北海道侵略”に備えろ!|和田政宗 世界各国はロシアが「まさか」ウクライナに全面侵略するとは思っていなかった……。「まさかしないだろう」という性善説はもう通用しない! 予期せぬことがいつでも起こり得る「まさかの時代」と日本はどう向き合えばいいのか。また、どうすれば「プーチンの戦争」を止めることができるのか。日本が果たすべき役割を和田政宗議員が緊急提言!

ロシア軍、北方領土で軍事演習

ロシアのウクライナ侵略を受け、日本は「まさか」に備える必要性が強まっている。昨年末からロシア軍はウクライナ国境付近に軍を集結していたが、世界各国は「まさか」ウクライナに全面侵略するとは思っていなかった。ロシアは、想像を超える暴挙を実行し続けている。

今後、ロシアが化学兵器や核兵器を使用すれば、ヨーロッパのNATO諸国はポーランドが提案している平和維持部隊の派遣など、直接的な支援に乗り出す可能性がある。そうなれば、ロシアとNATOの軍事的衝突が起きることになる。さらに、ロシアによるNATO諸国への攻撃が行われれば、米国はNATOの一員であることから軍事作戦に参加することは明白だ。

米国のブリンケン国務長官は、「NATO加盟国に攻撃があった場合、我々米国は全ての同盟国や友好国とともに行動を起こし、NATO領域を隅々まで守り切る」と明言している。NATOと米国がヨーロッパにおいてロシアと戦うことになれば、日本周辺で何が起きるのか。

ロシアは我が国の米軍基地を攻撃するのみならず、北海道へ侵略する可能性すら否定できない。実際に、3月25日には北方領土においてロシアは3000人を超える規模で軍事演習を行った。ウクライナへの侵略直前、ロシアはベラルーシで軍事演習を行っていたことは皆様もご存じであろう。

日本はいかなる時も国を守るという意志を強く示すため、やはりオホーツク海や根室沖の太平洋で自衛隊の演習や訓練を行うべきである。侵略に強く立ち向かう意志が日本は弱いと捉えられれば、「まさか」のロシアによる北海道侵略すらあり得る。絶対に阻止をしなくてはならない。

安倍晋三元総理らを特使として派遣

日本の断固たる姿勢は、ロシアとウクライナの停戦、和平の仲介を日本が行う可能性につながってくる。現在、トルコなどが仲介に乗り出しているが、NATO諸国や米国が当事者となりつつあるなか、「大国」と呼ばれる国で仲介できる可能性があるのは日本と中国のみである。

ただ、中国は人権弾圧や自由主義陣営との対立構造から、中国の仲介を欧米諸国が了とするかは疑問だ。日本が対ロシアにおいて軍事的にも断固たる姿勢を示せば、ロシアの日本に対する見る目が変わり、安倍晋三元総理や森喜朗元総理などプーチン大統領をはじめロシアからの信頼が高い政治家を特使で派遣するなどしての仲介の可能性が出てくると考える。

そして仲介については、3月23日に行われたウクライナのゼレンスキー大統領の国会でのリモート演説でも、日本のリーダーシップを期待する発言があった。ゼレンスキー大統領は、日本について、「調和を作り、その調和を維持する能力が素晴らしい」と述べた。

まさに日本は「和」の国であり、その本質を指摘しながら日本の調停力に期待した発言であった。これも、安倍元総理、菅前総理で高めた、世界の外交的リーダーの「トップ3」という日本の地位を踏まえてのことだ。

さらに、ゼレンスキー大統領は日本に対して、日本が国連において一番気にしている点に触れ、その行動を訴えかけた。
「国連(安保理)が機能できないので、新しい予防的なツールを作らなければならない。本当に侵略を止められるようなツールだ。日本のリーダーシップが、そういったツールの開発のために大きな役割を果たせると思う」

すなわち、侵略を止めるため、和平のためにも日本が国連安保理改革を進めてほしいと促したのである。国連の直訳は「連合国」であり、イコール第二次世界大戦の戦勝国であるということを私は述べてきたが、戦後80年近くも固定化され、ロシアや中国といった侵略国家が安保理を牛耳る姿勢にゼレンスキー大統領も疑問を呈した。

まさに、いまだに敵国条項の対象にされている日本が国連改革、安保理改革をしていかなくては戦後は終わらないし、日本のような自由民主主義国家が世界秩序の中心となることもできない。今こそ日本は、ロシアによるウクライナ侵略を止めるための仲介に乗り出し、国連の根本的改革に乗り出すべきである。

和平の仲介ができる大国は日本しかない

ウクライナにおける事態は日々刻々と変化しており、さらなる深刻化が懸念される。首都キーウでは、ミサイル攻撃により都市を破壊し尽くす戦略をロシアは取っている。キーウ周辺のロシア軍の一部はいったん後退したが、補給を含めた態勢の立て直しをしているとみられる。

また、ウクライナ南部においてロシアは、南西部の主要港湾都市オデッサを狙う動きを見せている。南部の動きは当然キーウ周辺のロシア軍と連動しており、キーウ周辺で体勢を立て直す間に南部を全て攻略し北上するか、オデッサまで軍を進めれば戦線が伸びすぎると判断すれば、オデッサを牽制しながら北上して南からキーウを攻撃する作戦が想定される。

いずれにせよそうなれば、ポーランドルートからの兵器供給や軍事支援物資供給が寸断されることになり、ウクライナはさらに苦しくなる。

ロシアは長期戦も辞さない構えであるが、時が進めば進むほど、ウクライナを守るための方法が少なくなってくる。3月24日にはベルギーでG7の緊急首脳会談が開催されたが、首脳声明は、ロシアを非難し撤退を要求するとともに、ロシアが化学兵器や核兵器を使わないよう警告するという段階にとどまった。G7はさらに対応を強めていくと考えられるが、日本はG7を引っ張り、和平のための中心的な役割を果たすべきである。

繰り返しになるが、ロシアとウクライナの停戦、和平の仲介ができる大国は日本しかない。ウクライナのゼレンスキー大統領も期待する日本のリーダーシップを今こそ発揮することが岸田政権には求められる。何も躊躇することはない。行動あるのみだ。

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和田政宗

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