<社説>巨大地震「長期評価」 全ての事態を想定しよう

 政府の地震調査委員会は南西諸島周辺、与那国島周辺でマグニチュード(M)8程度の巨大地震が発生する可能性があるとの「長期評価」を25日に公表した。 M8程度の地震が発生する確率等は不明としたが、M7~7.5の大地震が30年以内に発生する確率は90%以上~60%程度と示された。

 「長期評価」が示しているのは、大地震が起きる可能性は遠い未来でなく、もしかしたらあすにもあるということだ。行政の避難計画、私たち1人1人の対策など、全ての事態を想定して十分な対応ができているか。改めて検証する機会としたい。

 「長期評価」は2011年の東日本大震災を受けて、04年版を見直した。04年評価で考慮されていなかった南西諸島周辺と与那国島周辺での巨大地震の可能性が加わったのは、17世紀以降にM8の喜界島地震(1911年)が起きたことを考慮したという。

 沖縄でも大きな地震が起きることはデータが示している。気象庁によると、2021年に沖縄地方とその周辺で観測された震度1以上の地震は75回あった。特に同年11月11日に宮古島近海で発生した地震はM6.5で宮古島市で震度3を観測している。

 これ以外にも8月5日に台湾付近で発生した地震(M6.3)により与那国島で震度3、12月26日に宮古島近海で発生したM6.1の地震で、宮古島市で震度4を観測した。

 21年は先島地方で比較的大きな地震が観測されたが、M0.5以上(1万6938回)を含めれば地震は県全域を覆うように起きている。

 これに対し県内の備えはどうなっているだろう。県の地域防災計画(21年6月修正)は、大規模地震や津波を想定して、広報・通信網確保などの対応を決めている。ただ実際の避難誘導に当たるのは市町村だ。小規模、離島などの自治体に対して、県による支援が必要だろう。

 例えば21年に成立した改正災害対策基本法では、高齢者や障がい者といった支援の必要な人に対する個別避難計画の策定を市町村の努力義務と位置付けた。

 那覇市が内閣府の作成モデル事業に参加しているが、欠かせないのは社会福祉協議会や自治会など住民団体の協力だ。全県的な機運の醸成には県が先頭に立つ必要がある。

 一方で日本防災士機構によると、県内での防災士登録者は22年2月末現在、1246人にとどまる。

 人口類似県と比較すると、防災士1人に対応する人口は総人口139万2818人の沖縄が1117人、140万728人の奈良県(防災士登録3611人)が387人、140万777人の滋賀県(同2782人)が507人と沖縄は防災士が少ない。

 災害時には「誰一人取り残すことのない」対策が求められる。官民とも備えを万全にするため足元から見直そう。

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