西武が0-6からオリを大逆転できた理由 伝統の“山賊打線”復活呼んだ「新風」

西武・平石洋介打撃コーチ(左)と松井稼頭央ヘッドコーチ【写真:荒川祐史】

松井ヘッドと平石コーチ、辻監督も「笑いながらやってます」

■西武 7ー6 オリックス(26日・ベルーナドーム)

西武は27日、本拠地ベルーナドームで行われたオリックス戦で0-6の劣勢から猛追、7-6で逆転勝ちを収めた。昨季のリーグ覇者・オリックスとの開幕3連戦に2勝1敗で勝ち越しだ。かつての“山賊打線”の猛威をほうふつとさせる劇的勝利の裏に、新任の松井稼頭央ヘッドコーチと平石洋介打撃コーチの存在があった。

西武は先発の渡邉勇太朗投手がまさかの3回6失点KOを食らい、一方の打線はオリックス先発の山崎颯一郎投手に4回までパーフェクトに抑えられていた。しかし6点ビハインドの5回、栗山巧外野手の適時二塁打で反撃開始。3点差で迎えた6回1死二塁では、4番の山川穂高内野手が左翼席中段へ2号2ランを運び、1点差に迫った。

そして8回、1死一塁で山川が打ち上げた飛球はレフトフライかと思われたが、吉田正尚外野手が落球(記録は二塁打)。これで1死ニ、三塁と舞台が整い、森友哉捕手が中堅右へ逆転二塁打を放って試合を決めた。

試合後は、普段から仲がいい山川と森が並んで報道陣の取材を受け、まるで漫才コンビのような掛け合いを展開した。森は「野球って、ホームランで流れが変わるスポーツだと思います。山川さんがああやって1発打ってくれると勝ちにつながるので、これからも打ってほしいですね」と淡々と話し、すかさず山川が「俺、ここにいるんだけど?」とツッコミを入れた。

逆転を呼んだ円陣の“声”主には3球団でコーチ歴任の実績

この日の西武ナインは6点リードされた直後に円陣を組み、輪の中心の平石コーチの言葉で一斉に笑顔を浮かべるシーンがあった。森は「全体的に打撃の調子はいいから、焦らず1点ずつ取っていこう、という話だったと思います」と説明。山川が「平石さんのお陰、と書いといてください」とまとめ、森が「“書いといてください”という部分も、書いといてください」と付け加えて、爆笑を誘った。

平石コーチはこれまでに、現役時代を過ごした楽天で打撃コーチと監督、さらにソフトバンクでも打撃コーチを歴任して実績を積み、今季西武に招かれた。特に新たな1番打者に抜擢された鈴木将平外野手を試合前、試合後に関わらず、熱心にマンツーマン指導する姿が目を引く。昨季は西武の2軍監督を務めていた松井ヘッドにとっては、PL学園高(大阪)の5学年後輩に当たる間柄で、2人でベンチに明るいムードを吹き込んでいる。

森は「今日も稼頭央さんや平石さんがベンチを盛り上げてくれて、みんなで逆転できた試合だと思います」と話した。辻発彦監督も「今季はヘッドや平石が来てくれて、笑いながらやっています。野球を楽しめって。チームには、失敗したら引きずらずに次、という気持ちが浸透しつつあるので、これを続けていってほしい」と効果のほどを明かした。

2018、19年にリーグ連覇の原動力となった山賊打線は、ここ2年パワーダウン気味だった。しかしこの日は、その復活を思わせる豪快な勝ちっぷりだ。辻監督は「(かつてより)さらにいいかもしれない」とボルテージを上げた。昨季42年ぶりに最下位に突き落とされた獅子が、ベンチに新たな人材を加え、再び頂点を目指して這い上がろうとしている。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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