驚異の奪三振率、タイトル総なめ右腕… 今季も期待高まる2021年パ各球団の「勝ち頭」

日本ハム・上沢直之、楽天・則本昂大、西武・高橋光成、ソフトバンク・千賀滉大、オリックス・山本由伸、ロッテ・小島和哉(左上から時計回り)【画像:パーソル パ・リーグTV】

先発投手の消化イニング数が減少傾向の中、6球団全てに10勝投手誕生

2022年のペナントレースが25日に開幕し、各地で熱戦が繰り広げられている。昨季のパ・リーグには、6球団全てに2桁勝利投手が誕生。直近5年間で全球団に10勝投手が誕生したのは2018年と2021年の2回だけだった。投手分業の進行により、先発投手の消化イニング数が減少傾向にあることを考えれば意義のあるものだ。今季のさらなる快投に期待し、今回は各球団の最多勝投手に焦点を当てる。

日本ハム・上沢直之の年度別成績【画像:(C)PLM】

○日本ハム・上沢直之

上沢は高卒3年目の2014年に1軍デビューを果たし、プロ初完封を含む8勝と20歳という若さで台頭した。2016年の右肘手術も乗り越え2017年に復帰すると、大黒柱だった大谷翔平投手が退団した2018年に11勝を記録。一躍エース格へと成長を遂げた。翌2019年は自身初の開幕投手を務めて順調に滑りだしたが、6月にライナーを左膝に受けて骨折し、残りのシーズンを棒に振る事態に。それでも2020年に復帰すると15試合で8勝とハイペースで勝ち星を積み上げた。

そして2021年は自己最多となる12勝を記録、防御率も自身初の2点台とキャリアハイの成績を残した。2度の大きな故障を乗り越えた不屈の精神に加えて、1軍登板のあった6シーズンのうち5年間で防御率3点台前半以下と、高い実力に裏打ちされた安定感も出色。チームの体制が大きく変化する今季も、エースとしての活躍に期待したい。

楽天・則本昂大の年度別成績【画像:(C)PLM】

則本は新人で開幕投手を担い15勝、リーグ優勝と日本一にも貢献

○楽天・則本昂大

則本はプロ1年目の2013年に開幕投手の大役を任され、いきなり15勝。文句なしの新人王に輝いただけでなく、チーム創設以来初となるリーグ優勝と日本一にも大きく貢献した。翌2014年からは田中将大の退団もあって、早くもエース格としての働きが求められる立場となった。そしてプロ入りから6年連続2桁勝利と十二分に応えてみせた。

特筆すべきは抜群の奪三振力で、キャリア通算の奪三振率は9.32。2014年から2019年まで5年連続で最多奪三振を獲得し、4年連続200奪三振という快挙も達成した。2017年には、7試合連続2桁奪三振というNPB新記録も樹立している。故障などもあったが、2021年はいずれも3年ぶりの規定投球回に到達&2桁勝利。エース復活を強く印象付けた。今季はあと4勝に迫った通算100勝、残り50イニングとなった通算1500投球回という2つの節目も達成してくれそうだ。

西武・高橋光成の年度別成績【画像:(C)PLM】

○西武・高橋光成

高橋は1年目の2015年に1軍デビューし、高卒新人ながらプロ初完封を含む5勝をマーク。同年8月には4勝1敗、防御率2.96で史上最年少で月間MVPを受賞した。続く2016年には先発ローテーションの一角に加わったが、2017年と2018年はいずれも故障に苦しんだ。

それでも2019年は自身初の2桁勝利を記録してリーグ優勝に貢献。翌2020年には初めて規定投球回に到達し、課題だった防御率も3点台まで改善した。2021年は初めて開幕投手の大役を任され、名実ともにエースとしての役割が求められる中で、自己最多の11勝。今季も昨季以上の成績を残せるか。

ロッテ・小島和哉の年度別成績【画像:(C)PLM】

○ロッテ・小島和哉

浦和学院高時代に春のセンバツで優勝投手となった小島は、早大でも主戦投手として活躍。ロッテでも1年目から開幕ローテーション入りしたが、プロ初登板は2回8失点と打ち込まれた。2020年も開幕ローテーションに加わり、年間を通じて先発として登板を重ね、規定投球回にはわずかに足りなかったものの、防御率は3点台と前年からの成長を示した。

続く2021年は好不調の波こそ激しかったものの、9月11日以降の4試合で3完投・2完封と終盤戦で覚醒。自身初の2桁勝利と規定投球回到達と飛躍のシーズンを送った。昨季チーム内で2桁勝利を記録したのは小島ただ1人。背番号を「14」に変更して臨む今季、名実ともに左のエースとして一本立ちできるか。

オリックス・山本由伸の年度別成績【画像:(C)PLM】

山本は昨季最多勝、最高勝率、最多奪三振、最優秀防御率の“投手4冠”

○オリックス・山本由伸

山本は高卒1年目の2017年に先発としてプロ初勝利を挙げると、続く2018年にはリリーフに転向してブレイク。セットアッパーとしてリーグ2位の32ホールドを記録した。翌2019年には先発に再転向し、防御率1点台と前年を上回る快投を披露。自身初タイトルとなる、最優秀防御率に輝いた。2020年にはリーグ最多タイの149三振を奪った。

そして2021年にはまさに圧倒的な投球を見せ、最多勝、最高勝率、最多奪三振、最優秀防御率の投手4冠を達成。加えてリーグMVP、沢村賞、ベストナイン、ゴールデングラブ賞も獲得し、投手タイトルを総なめにした。23歳にして名実ともに球界を代表する投手となり、チームのリーグ優勝の立役者にもなった若き大エース。リーグの勝ち頭でもある若き剛腕の投球には、今季も熱い注目が寄せられるだろう。

ソフトバンク・千賀滉大の年度別成績【画像:(C)PLM】

○ソフトバンク・千賀滉大

千賀は2010年育成ドラフト4位でプロ入りし、2年目の2012年に支配下登録を勝ち取った。3年目の2013年に中継ぎとして奪三振率13.58という圧巻の数字を残してブレーク。2016年に先発に本格転向して以降はさらなる躍進を見せていく。2016年からは6年連続2桁勝利を継続中で、同じく6年続けて投球回を上回る奪三振数を記録。2017年に最高勝率、2019年に最多奪三振、2020年には最多勝、最優秀防御率、最多奪三振の投手3冠に輝いた。

2021年は故障の影響で前半戦では2試合しか登板できなかったが、8月以降は11試合で9勝と驚異的なペースで勝ち星を積み上げ、シーズン最終登板の10月25日に2桁勝利に到達。苦しみながらもエースとしての貫禄を見せた昨季を経て、今季は開幕からフル回転での活躍が期待される。

山本由伸、高橋光成、小島和哉の3人はいずれも25歳以下とまだ若く、今後のさらなる伸びしろもありそうだ。一方で則本昂大、千賀滉大、上沢直之は20代後半から30代前半と、選手として脂が乗り切ってくる時期。今季も昨季と同等か、上回るような活躍が期待される。エースと目される投手は対戦カードの頭を任されることも多く、必然的に緊迫した投手戦を演じることも増えてくる。そんな中でチームを勝利に導き、エースとしての責務を果たすことができるか。今季も白熱の投球を見せてくれそうだ。(「パ・リーグ インサイト」望月遼太)

(記事提供:パ・リーグ インサイト)

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