ふるさとの匠 ガラス工芸・竹田礼人さん(49) 唯一無二の作品に命を 長崎市

息を吹き込みながらガラスの形を整えていく竹田さん=長崎市松が枝町、瑠璃庵

 光に照らされ反射し、また色鮮やかに輝く長崎ガラス。工房とショップが一体となった「瑠璃庵」は、その伝統と魅力を伝え続けている。屋号は古語で「小さなガラス屋」を意味する。
 「父に『継げ』と言われたことはないし、継ぐ気はなかった。今は楽しくて仕方がない。再び灯した“火”を消したらいけないという責任感がある」。2代目の竹田礼人さん(49)は、そんな思いで1100度に達する炎の溶解炉と向き合う。酒器や長崎くんちの龍踊りの龍の眼など多彩な工芸作品を生み出している。
 小学5年生の時、父・克人さん(74)がガラス職人になり、発祥の地で途絶えていた、瑠璃色の冷酒用急須「長崎チロリ」を復活させた。ガラスはずっと身近にあったが、予備校時代にバイトで作業を手伝ったことが、“匠”としての人生を導くことになった。
 ドロドロに溶けたガラスに息を吹き込み、自在に作品を形作っていく工程に、心を奪われた。「面白い。世界に誇れる技術だと思った」という。
 「ガラスは不思議で奥深い。もっと知ってほしい」。そう思いながら、今日も温もりのある唯一無二の作品に命を吹き込んでいく。

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