亡き父へ「今年も来たよ」 福島出身の坂本さん 息子と2人、海に手合わせ 東日本大震災11年

震災発生時刻に合わせ、亡き父を思い、手を合わせる坂本愛未さん(右)と、圭ちゃん=11日午後2時46分、長崎市手熊町

 東日本大震災の発生から11年を迎えた11日、父が津波の犠牲となった福島県いわき市出身の坂本愛未(なるみ)さん(35)が長崎市内の自宅近くの海岸で長男の圭ちゃん(5)と、「また今年も来たよ」と亡き父を思い、静かに手を合わせた。
 愛未さんの父金成(かなり)正さん=当時(60)=は震災発生時、いわき市内の海側の道路をバスで走行中、8メートルを超える津波で亡くなった。愛未さんは震災後、長崎県警から福島県警に派遣された警察官の夫、雄二さん(35)と結婚。8年前から本県で暮らしているが、3月11日は毎年、自宅近くの海を訪れ、追悼している。
 「パパ4人分の(高さの)津波が来て、じいじはバスの中にいて、ぐるぐるぐるってなって、死んじゃったんだよ」。愛未さんはこの日、自宅近くの海岸で圭ちゃんに正さんが亡くなった状況を伝えた。2人で花を手向け、震災発生時刻を伝えるサイレンが鳴ると、そっと手を合わせた。
 震災から10年を過ぎ、記憶の風化が叫ばれる。愛未さんは「もう11年ですが、まだ11年。ちゃんと思い出して、話して、忘れないでいたい」と話した。


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