これぞ王者の貫禄。レッドブルのSVGが決勝3ヒート完全制覇の“クリーンスイープ”達成/RSC第2戦

 3月25~27日にタスマニアのシモンズプレイン・レースウェイで開催されたRSCレプコ・スーパーカー・チャンピオンシップ第2戦『NED Whisky Tasmania SuperSprint』は、2021年に自身2度目の戴冠を果たしたレッドブル・アンポル・レーシングのディフェンディングチャンピオン“SVG”ことシェーン-ヴァン・ギズバーゲン(トリプルエイト・レースエンジニアリング/ホールデン・コモドアZB)が、日曜予選のポールポジションを含め土曜レース1、日曜レース2、レース3の全ヒートを制覇する、圧巻の“クリーンスイープ”を達成。ライバルを寄せ付けない“頭脳戦“も披露し、早くも今季4勝目を手にしている。

 来季2023年からの新車両規定Gen3導入に併せて、タスマニア島には新たにステルスカラーをまとった『シボレー・カマロZL1』と『Gen3フォード・マスタング』が持ち込まれ、イベント会期を前後してのオフィシャルテストが実施された。

 そうして精力的に車両開発が続けられる一方、ホールデン最後の1年となる2022年シーズンはSVGが開幕オープニングを制し、レース2はTCRオーストラリア2代目王者チャズ・モスタート(ウォーキンショー・アンドレッティ・ユナイテッド(WAU)/ホールデン・コモドアZB)が勝利を飾るなど、ラストランのコモドアZBが快勝発進を決めていた。

 そんななか迎えたシモンズプレインの公式練習では、彼らの有終の美を阻止するべくフォード勢が奮起。プラクティス1ではシェルVパワー・レーシングのウィル・デイビソン(ディック・ジョンソン・レーシング(DJR)/フォード・マスタング)が、続く予選ではキャメロン・ウォーターズ(ティックフォード・レーシング/フォード・マスタング)がSVGの前に立ちはだかり、トップ10シュートアウトで2番手につけたDJRのデイビソンと並び、マスタングがフロントロウを独占する結果となった。

「このタイムは少し奇妙な感じだ、ポール獲得には正直驚いたよ。プラクティス2では平凡なクルマだったけど、クルーのみんなが懸命に働いてくれたおかげだ。昨季のここではタイヤのライフが足りずに悔しい思いをしたが、今日のレース1では、そこから学んでいることを証明したい」と語ったウォーターズ。

 しかし最初のスプリント戦で主役を演じたのは3列目発進となった王者SVGで、序盤から前を行くライバル勢に対し、マシンを擦り付けるようにアグレッシブなオーバーテイクを連発すると、チームメイトの新鋭ブロック・フィーニー(トリプルエイト・レースエンジニアリング/ホールデン・コモドアZB)や、開幕ポールシッターのブロディ・コステッキ(エレバス・モータースポーツ/ホールデン・コモドアZB)、そしてデイビソンのマスタングらを仕留めて、レース序盤で早くも2番手に進出していく。

来季2023年からの新車両規定Gen3導入に併せて、タスマニア島には新たにステルスカラーをまとった『シボレー・カマロZL1』と『Gen3フォード・マスタング』が持ち込まれた
土曜予選ではキャメロン・ウォーターズ(ティックフォード・レーシング/フォード・マスタング)がポールポジションを獲得した
コース上の直接対決で肉弾戦を演じ、ライバルを蹴散らしての週末ファーストウインを飾った王者SVG
ライバルをして「かなり強引ではあったが、彼の速さを抑える術がなかった」と言わしめた

■「狙いどおり、彼らはピットに吸い込まれた」と巧者SVG

 さらに4番手コステッキが先頭集団のなかでいち早くピットへ向かった15周目には、SVGが首位ウォーターズの“モンスターエナジー”マスタングに狙いを定め、ヘアピンのインにダイブ。立ち上がりでサイド・バイ・サイドのままボディをぶつけ合った2台は、ターン5まで並走するロングバトルを演じるも、ここでチャンピオンに軍配が上がり、SVG、デイビソン、ウォーターズの順で44周のチェッカー。王者SVGが今季最初の複数勝利を手にした。

 明けた日曜午前の予選でも、そのSVGとデイビソンがそれぞれレース2、レース3に向けた予選ポールポジションを分け合うと、週末セカンドヒートではフロントロウ2番手発進だったフィーニーが先輩を出し抜く抜群のスタートで首位に躍り出る。

 しかし直後にジャック・ルブローク(マットストーン・レーシング/ホールデン・コモドアZB)とアンドレ・ハイムガートナー(ブラッドジョーンズ・レーシング/ホールデン・コモドアZB)が絡み、バリア修復のためオープニングラップから赤旗が出ると、リスタートでは大先輩がきっちりとやり返し、盤石のトリプルエイトが1-2フィニッシュ。フィーニーはトップカテゴリー昇格4戦目で初のポディウム獲得となり、3位にデビッド・レイノルズ(グローブ・レーシング/フォード・マスタング)が入る結果となった。

 フロント部分大破から奇跡の車両修復を果たしたルブロークがフロントロウ2番手に並び、ポールシッターのデイビソンとともに無事スタートを切ったレース3は、そのルブロークがヘアピンでロックアップした間隙を突き、王者SVGがするすると首位浮上に成功。背後にはDJRのエース、アントン・デ・パスカーレ(DJR/フォード・マスタング)が迫るものの、ここからチャンピオンは無線を駆使した“頭脳戦”を展開する。

「僕は終始、リヤ(のタイヤライフ)がないフリをしてラジオで叫び続けたんだ。それで彼らを早くピットインさせて、僕自身はコース上でスパートできるようにね。狙いどおり、彼らは(アンダーカットを狙って)ピットに吸い込まれたよ」と、レース後に振り返った巧者SVG。

「僕らはこうして厳しいコンペティションを続けている。彼らのようなとても速い連中とね。だから、決して悪い方法ではないさ。彼らを打ち負かすのは非常に難しく、もう一度言うがとても速いヤツばかりだからね」

 最終的にデイビソン、パスカーレのDJR艦隊を退けたSVGは、4月7~10日にアルバートパークで開催されるF1併催の第3戦『Beaurepaires Melbourne 400』を前に、ランキング2位パスカーレに対し67点ものマージンを築いた。

「これはかなり素晴らしいこと。レッドブル・アンポル・レーシングのメンバーに感謝してもし切れないぐらいだ。週末を通してクルマは本当に良かったし、それだけに、各レースはポテンシャルを最大限に活用して懸命に働かなければならなかった。それができてホッとしているよ」

新鋭ブロック・フィーニー(トリプルエイト・レースエンジニアリング/ホールデン・コモドアZB)がレース2スタートで首位を奪取
しかし直後にジャック・ルブローク(マットストーン・レーシング/ホールデン・コモドアZB)とアンドレ・ハイムガートナー(ブラッドジョーンズ・レーシング/ホールデン・コモドアZB)が絡み赤旗に
大先輩と並んでの初ポディウム獲得となったフィーニー(左)も「こんなにうれしくて光栄な瞬間はない」
無線を有効活用してライバル陣営を欺く”頭脳戦”を展開したレース3も、チャンピオンが勝利をさらった

© 株式会社三栄