【高校野球】満身創痍の近江エースが挑む猛烈打線 大阪桐蔭の“決勝不敗神話”は続くか

大阪桐蔭・前田悠伍(左)と近江・山田陽翔【写真:荒川祐史、上野明洸】

大阪桐蔭は1試合6本塁打の大会タイ記録を含む7本塁打と強打健在

第94回選抜高校野球大会の決勝戦は31日に、大阪桐蔭が4年ぶり4度目、近江が初の優勝をかけて戦う。投打共に充実し春夏通じて決勝戦で負けなしの大阪桐蔭に対し、4戦連続完投も左足に死球を受け満身創痍のエース・山田陽翔(3年)が、どう立ち向かうのか注目が集まる。

1試合6本塁打の大会タイ記録を含む7本塁打と強打を誇る大阪桐蔭。初戦は好左腕・冨田遼弥(3年)を擁する鳴門に3-1の接戦を演じたが、続く2回戦は広島商が辞退(部員の新型コロナウイルス感染により)で不戦勝、そして準々決勝の市和歌山戦は17-0、準決勝の国学院久我山を13-4と2戦連続で2桁安打2桁得点と相手を圧倒した。

投手陣をみても背番号「10」の川原嗣貴(3年)、背番号「1」の別所孝亮(3年)の両右腕に、背番号「11」の左腕・前田悠伍(2年)が控えている。準決勝で登板のなかった前田は万全の状態で決勝の舞台に挑めるのも大きいだろう。

近江の4番エース兼主将・山田は準決勝で左足に死球を受け「左足関節外果部の打撲症」

対する近江はまさに満身創痍だ。エースで4番、主将を務める山田は初戦から4戦連続で完投。準決勝の浦和学院戦では左足に死球を受けながらも、延長11回を170球の熱投を見せた。マウンド、打席でも足を引きずりながら痛々しい姿が印象だった。

試合後の診察では「左足関節外果部の打撲症」と診断され、決勝戦に投げられるかは当日の様子を見て判断される。だが「1週間500球以内」の球数制限があり、25日の2回戦から1週間となり、この間に384球を投げており、仮に投げた場合は116球までとなる。

近江は昨秋の公式戦では山田が右肘を負傷し、控え投手が登板しているが今大会では1度もマウンドに上がっていない。初登板がいきなり決勝、しかも大阪桐蔭を相手と大きなプレッシャーに打ち勝つことができるかポイントになりそうだ。

大阪桐蔭は春夏を通じ決勝戦は8度戦い負け知らずの8連勝中

今大会の戦いぶり、両チームの疲労度をみても大阪桐蔭が有利なのは言うまでもない。だが、甲子園ではこれまで2007年夏の佐賀北-広陵、2009年夏の中京大中京-日本文理などで球場全体が一方を応援する雰囲気になることがあった。強者に向かうチームに心を奪われる心情は分からなくもないが、戦っている選手たちを“ヒール扱い”するのは間違っている。

満身創痍の近江が絶対王者の大阪桐蔭に挑む構図は出来上がっているが、両チームが心置きなく戦える決勝戦になることを祈るばかりだ。

ちなみに、大阪桐蔭はこれまで春夏を通じ決勝戦は8度戦い負け知らずの8連勝中。昨秋の明治神宮大会を制した“秋の王者”が前評判通りの実力を見せ勝ち抜くのか、それとも悲願の滋賀県勢初優勝か――。歴史に残る好勝負を期待したい。(橋本健吾 / Kengo Hashimoto)

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