黒羽刑務所、51年の歴史に幕 かつて「東洋一」 跡地利用を模索

役目を終え、がらんとした収容棟=31日午後4時55分、大田原市寒井

 栃木県大田原市寒井の黒羽刑務所が31日、閉庁し、51年の歴史に幕を閉じた。1971年の開設当時は、規模や近代的設備から「東洋一の刑務所」と呼ばれたが、受刑者数の減少や施設の老朽化に伴い、閉庁が決まった。最後の訓示で林克士(はやしかつし)所長(58)は「明日からは別の施設に勤務するが、『矯正は黒羽から』の誇りを胸に成長と活躍を期待したい」と、職員約100人を送り出した。

 同刑務所の収容定員は約1800人。受刑者数は2006年末には2200人を超え過剰収容となっていたが、徐々に減少し、閉庁が決まった17年末には1300人を下回っていた。

 敷地内では施設の解体が進み、6棟あった収容棟は4棟に減った。最後の日を迎え、受刑者のいなくなった収容棟は静まりかえり、役目を終えた給食工場もがらんとしていた。受刑者の移送作業に関わった首席矯正処遇官の小川貴史(おがわたかふみ)さん(40)は「新型コロナ禍で県をまたぐ移送作業は大変だった。無事に終わってほっとしている」と話した。

 受刑者らが作った家具や靴などを販売する「矯正展」は、地域との交流を図る最大のイベントだった。1984年から2019年まで毎年11月23日の「勤労感謝の日」に開催され、毎回1万人以上の来場があった。日光彫のタンスやチェストが人気だった。

 林所長は「ここ2年はコロナ禍で矯正展が開けず、非常に残念だった。震災などで困難や苦労があったが、団結して乗り越えてきた。良好に運営できたと評価できる」と振り返った。

 約20ヘクタールという広大な跡地の利活用については、法務省と同市が3月に提案を募った。林所長は「跡地が再犯防止や地域の活性化に役立ってほしい」と話した。

 同刑務所前に店を構える「ステーキ万味(まるみ)」の石川典子(いしかわのりこ)さん(67)は「車の出入りがなくなり、市営バス路線が変わるなど寂しくなるが、跡地利用によって活性化につながってほしい」と望んだ。

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