神戸弘陵に宿る“女子野球の命運握る”自覚 東京ドームでの決勝に懸ける思い

神戸弘陵が履正社を下し決勝進出を決めた【写真:川村虎大】

甲子園で開催した昨夏の選手権に続き、選抜大会で決勝に進出した神戸弘陵

4月3日に史上初めて東京ドームで開催される第23回全国高校女子硬式野球選抜大会決勝。2019年以来3年ぶり3度目の優勝を目指す神戸弘陵(兵庫)は、初の決勝進出を決めた福井工大福井と対戦する。昨夏、甲子園で行われた選手権大会に続き、プロの本拠地での開催を控え、選手たちから出た言葉は「優勝」の2文字。「目指しているのは東京ドームではない」と言い切る。

昨夏、男子の選手権大会開催中の休養日に行われた“女子の甲子園”。エース・島野愛友利投手(現・巨人女子野球チーム)を擁し、神戸弘陵は日本一に輝いた。歴史的一戦に世間も注目し、今では、女子野球を引っ張る存在に。小中学生の野球女子もこぞって「神戸弘陵に行きたい」と口をそろえる。

現在のメンバ―の中には、昨夏に出場していた選手も多い。エースの日高結衣投手(3年)は先発として大舞台のマウンドを経験し、島田羽菜内野手は3年生がいる中で6番に座った。4番を務めていた正代絢子内野手(3年)は今年、主将としてチームをまとめる。

チームを率いる石原康司監督は、選手たちの成長を実感。「当時は3年におんぶにだっこ状態だったが、『自分たちが引っ張っていくんだ』と言う雰囲気ができてきた」と評価。新型コロナウイルスの影響で2月途中まで練習ができず、再開後の練習試合は7戦7敗。それでも、ミーティングを重ね、選手自ら大会に向け調整してきた。

東京ドームより大事な女子野球を広める使命

3月31日に行われた準決勝でも、桜が咲き誇る中で“甲子園経験組”が活躍。同点の3回2死一、二塁では、島田が決勝打となる右越えの適時二塁打を放ち、投げては5回から登板した日高が3回を無失点で締めた。3-1で競り勝って東京ドームへの切符を手にしたが、「目標はあくまで優勝なので」と日高。そしてこう話した。

「東京ドームという大舞台で試合ができ、注目してくれるのは嬉しいです。ただ、女子野球を見てもらえるから、いいプレーをしなくてはいけないなって感じています」

昨夏の甲子園以降、女子野球の熱が上がっているのは選手たちも感じている。だからこそ、自分たちのプレーが今後の女子野球の命運を分ける。決勝打の島田も「東京ドームでやることが目的ではなく、そこで勝つことが目的。有観客という機会をいただいたので、思う存分プレーしたいです」と話す。

昨夏から多くの高校が“打倒・神戸弘陵”を掲げる中、順当に結果を残し、決勝まで上り詰めた。4月3日、巨人対阪神の試合終了後に行われる一戦。選手たちの思いは、勝って女子野球を広めること。最高の舞台で、最高のパフォーマンスを見せる。(川村虎大 / Kodai Kawamura)

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