【大学野球】二刀流は「自分にとって当たり前」 日体大のドラ1候補・矢澤が春初戦で見せた進化

「3番・投手」で出場した日体大・矢澤宏太【写真:伊藤賢汰】

開幕戦に登板し5回無失点&4打数4安打3打点の大活躍を見せた

独り舞台だった。冬の寒さも薄れてきたバッティングパレス相石スタジアムひらつか(神奈川・平塚市)で観客の注目を集めたのは日体大・矢澤宏太投手(4年)。二刀流として今秋のドラフト1位候補に名が挙がるが、本人に“特別感”は全くない。「自分にとっては当たり前のこと」。だからこそ、準備も怠らない。

2日に開幕した首都大学春季リーグの桜美林大戦。矢澤は「3番・投手」で出場した。初回1死三塁の第1打席で右前適時打を放って自らを援護。2回にも無死二、三塁で再び右前への2点適時打を放って2打点を挙げた。4回、6回にも安打を放って、この日は4打数4安打3打点。投げても、5回を1安打無失点6奪三振という完璧な投球で、チームの7回コールド勝ちに貢献した。

大学では珍しい投打の二刀流だが、当の本人は「自分にとっては当たり前なこと。特別なことをしているという感覚はありません」と言ってのける。二刀流は藤嶺藤沢高時代から当たり前のようにやっていたこと。大学入学時に古城隆利監督から二刀流を提案された時も驚きはなかったという。

3年春に苦しんだ打撃で手ごたえ「下を叩けば長打になる」

全国各地からハイレベルな選手が集まる首都大学リーグ。体への負担も考慮して、投打二刀流を解禁したのは昨年になってから。3年春のリーグ戦では、投手として防御率0.90、2勝を挙げる一方で、打率は.182と低迷。強引にスイングしてしまったことで「次の日に疲労が残ってしまうことがあった」と難しさを感じた。

そこでテーマに挙げたのが「コンタクト率の上昇」。投手としての練習もあり、打撃練習の時間が短い中、ティー打撃を中心に「素直にバットを出すことを意識していきました」という。外角に対しては、逆方向に力強く打つことができ、秋には打者としても打率.300をマークすることに成功した。

そして、この春、矢澤はさらなる成長を見せている。「どちらもやる感覚はわかってきた」と、オープン戦では本塁打を量産。この日の4安打は全て単打だったが、「下を叩けば、打球が上がって長打になる」と手ごたえも感じている。古城監督も「考えることができる子」と評価する。目指すは最優秀投手と首位打者だ。ひたむきに取り組む姿勢が、春を迎えて少しずつ結実してきている。(川村虎大 / Kodai Kawamura)

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