<社説>新年度本格スタート 変化を好機に変えよう

 2022年度が本格的にきょうから始まる。職場では異動や新採用で新たな仕事に向き合う人がいる。学校では今週、始業式、入学式がある。新たな出会い、新たな挑戦に心躍らせる人もいるだろう。 一方で物価上昇や成人を18歳に引き下げる民法改正など生活も大きく変わる。

 1人1人が社会をつくる一員として、世界で起きていること、身近で起きていることに目を向け、改めて考える機会ともいえる。新年度は社会の変化を好機に変えるスタートとしたい。

 例えば成人年齢引き下げに伴う課題だ。成人によって得られる権利は多く、若者の社会参画が期待できる。だがローンやクレジットカードが親権者の同意なく利用できるなど懸念もある。簡単にいえば、借金しやすくなる。

 これまでローンを含む消費者教育は十分だったか。学校教育を含め、手だてが必要だ。

 成人年齢引き下げに合わせ18、19歳を「特定少年」とする改正少年法も1日に施行された。検察官送致される対象事件が拡大し、起訴段階での実名報道も解禁する。

 事件の重大性や被害者遺族の感情など論点は多いが、少年法の理念が変わったわけではない。少年事件の背景にある貧困や養育放棄などの問題を解決する手段なくして、制限なく厳罰化や実名報道にかじを切る必要はない。事件を起こした少年の更生と社会復帰の在り方が問われている。

 暮らしに目を向けると、本紙が2021年1~3月に報じた「値上げ」に関する記事は21件あったが、今年1~3月は50件あった。

 電気、ガスなどのライフラインをはじめ、多くの食品が対象だ。背景に原油や小麦など原材料費の高騰がある。

 原油や小麦の価格が上昇するのは世界の変化と連動している。21年から続く原油高騰は、コロナからの回復途上で需要が増大したことによる。追い打ちをかけたのが、ロシアのウクライナ侵攻だ。

 経済制裁の一環として米国がロシアからの原油輸入を止めた。米国は原油や石油製品の7.9%をロシアから輸入していた。米国が年間に消費する石油は約7億4千万トンに上る。日本の約5倍だ。米国はロシアに代わる調達先確保を目指すが、それだけの量を確保しようとすれば、世界的な原油高騰は避けられない。

 ウクライナでは小麦の今期の収穫、来期の種まきができない状態に陥っている。輸出量で世界1位のロシア、同5位のウクライナからの供給が滞り、小麦製品はさらに値上がりする見込みだ。

 経済を軸に世界がつながる今、ウクライナの出来事は対岸の火事ではない。大げさにいえば、世界の安定は生活の安定にもつながるのだ。

 年金支給額引き下げも受給者だけの問題でなく、年金を負担する若い世代に関わる。将来をどう描くのか1人1人の問題として考えるべきだ。

© 株式会社琉球新報社